1990年のイギリスツーリングカー選手権

1990年のエッソ・RACイギリスツーリングカー選手権は、このシリーズの歴史において重要な転換期となるシーズンでした。33年目を迎えたこの年は、グループA車両が新たな2リッターのツーリングカーと混走する、グループA時代の最終シーズンであり、複数クラス混走の最終年でもありました。

このシーズンのレギュレーション変更は、大きな特徴です。従来の4クラスから2クラスに減少し、翌1991年シーズンからの単一クラス化に向けた布石となりました。グループA車両と2リッターのツーリングカーの混走は、より公平な競争条件を作り、ランニングコストの削減を通じて新規メーカーの参入を促進する狙いがありました。実際、BMWとボクスホールはワークスチームとして参戦し、他のメーカーも将来の参戦に関心を示していました。また、1時間耐久レースも1回から2回に増加し、レースの盛り上がりをさらに高めました。

シーズンは、オウルトン・パークでの開幕戦からシルバーストン・サーキットでの最終戦まで、全13戦にわたって繰り広げられました。開幕戦を制したのはアンディ・ロウズ（フォード・シエラRS500）でした。ロウズは、ドニントン・パークで開催された最初の1時間耐久レースでもデヴィッド・シアーズとのペアで優勝を飾りました。続くスラクストンでの第3戦はロブ・グラヴェットが勝利しました。

グラヴェットの勢いはとどまるところを知らず、その後6戦連続優勝を果たします。この間には、ブランズ・ハッチで開催された2回目の1時間耐久レースも含まれており、ここではマイク・スミスと組んで優勝しました。第10戦のバーミンガム・スーパープリではロウズが優勝しましたが、このレースは最終ラップでのフランク・シトナーとジョン・クレランドの事故でも記憶されることになりました。これは、バーミンガム・スーパープリで行われた最後のBTCCレースとなりました。第11戦のドニントンでは再びグラヴェットが勝利し、最終2戦のスラクストンとシルバーストンではロウズとグラヴェットがそれぞれ勝利を分け合いました。

最終的に、シリーズチャンピオンの栄冠を手にしたのは、メインスポンサーを持たず、資金難の中でシーズンを戦ったロブ・グラヴェットでした。彼の粘り強い戦いぶりと実力は、多くのファンを魅了しました。このシーズンは、多くのドラマと興奮、そしてシリーズの未来を示唆する重要なシーズンとなりました。チャンピオンシップ争い、そして各レースでの激しいバトルは、多くの観客を惹きつけ、イギリスツーリングカー選手権の歴史に新たな1ページを刻みました。BMWやボクスホールといったワークスチームの参戦、そして新たなレギュレーションによる混走は、レースの多様性を生み出し、シリーズ全体のレベル向上に貢献したと言えるでしょう。

1990年のエッソ・RACイギリスツーリングカー選手権は、グループA時代の終焉と新たな時代の幕開けを象徴する、記憶に残るシーズンとなりました。グラヴェットの栄光、そして他のドライバーやチームの活躍は、長く語り継がれることでしょう。

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