1992年のテレビ (日本)

1992年のテレビ

1992年（平成4年）の日本のテレビジョン放送は、多くの新たな動きと長きにわたる歴史の終焉が交錯した一年でした。話題となったドラマやアニメのヒット、そして業界全体の基盤に関わる変化が、この年のテレビ界の様相を特徴づけています。

年明けには、NHKの大河ドラマ第30作として『信長 KING OF ZIPANGU』がスタート。また、NHK教育の子供向け料理番組『ひとりでできるもん!』が、同チャンネルとしては異例の高視聴率を記録するなど、特定の番組が大きな注目を集めました。

3月には、テレビ朝日系で『美少女戦士セーラームーン』の放送が始まり、「美少女バトルアニメ」という新たなジャンルのブームを巻き起こしました。このシリーズはその後も続き、1997年2月8日まで計5シリーズが制作される人気作となりました。また、4月には、臼井儀人原作のギャグアニメ『クレヨンしんちゃん』もテレビ朝日系でスタートし、現在に至るまで長く続く人気シリーズとなっています。

一方で、長寿番組が相次いで最終回を迎え、歴史に幕を下ろしたのもこの年の特徴です。読売テレビ制作・日本テレビ系列の『スター爆笑Q&A』（10年）、TBS系の動物クイズ番組『わくわく動物ランド』（9年）、フジテレビ系の山田邦子の冠番組『邦ちゃんのやまだかつてないテレビ』（3年）が3月に終了。民放女性アナウンサーによる単独司会情報番組の先駆けだった日本テレビの『ルンルンあさ6生情報』（約8年11ヶ月）もこの月に終了しました。さらに、毎日放送制作・TBS系列の『クイズ!!ひらめきパスワード』（6年半）や、中部日本放送制作・TBS系列の『すばらしき仲間』シリーズ（16年3ヶ月）も同じく3月に終了。秋には、TBS系の『わいわいスポーツ塾』（5年）、フジテレビ系の『お昼の独占!女の60分』（帯番組化は半年、前番組含め17年）、TBS系の料理バラエティ『料理天国』（17年、881回）、TBS系の『クイズ100人に聞きました』（13年半）、そして年末にはTBS系の『クイズダービー』（約17年、862回）といった、昭和から続く人気番組が次々とその歴史に終止符を打ちました。特にTBSは、この年だけで5本ものクイズ番組が終了するという、大きな変革期を迎えていました。

春と秋の番組改編期には、多くの情報・報道番組やバラエティ番組がリニューアルや新規開始となりました。日本テレビ系では『ジパングあさ6』『ごくらく生テレビ』、フジテレビ系では『モーニングLIVE』『ジョーダンじゃない!?』といった帯番組が新設され、朝や午後の情報番組の顔ぶれが大きく変わりました。TBS系では、毎日放送と中部日本放送が制作していた昼の帯ドラマ枠が統合され、『ドラマ30』という30分枠が誕生し、第1作として『いのちの現場から』が放送開始。後の人気シリーズ『キッズ・ウォー』などに繋がる枠となりました。また、TBS系では月曜日から木曜日まで日替わりのバラエティ枠『ムーブ』が新設され、『関口宏の東京フレンドパーク』『三宅裕司のぎゃっぷウォーズ』などがスタートしました。フジテレビ系では水曜21時枠にドラマ枠が移動・新設され、第1作『誰かが彼女を愛してる』とその主題歌が大ヒットし、以後この枠は人気ドラマを多数生み出すこととなります。木曜20時枠にも10代向けドラマ枠『ボクたちのドラマシリーズ』が新設され、若手俳優の登竜門となりました。

夏のオリンピック開催もテレビ界にとって大きなイベントでした。2月のアルベールビルオリンピック、7月下旬から8月上旬にかけてのバルセロナオリンピックがNHKや民放各局で連日中継され、多くの視聴者が熱狂しました。

バラエティ番組では、日本テレビ系で『笑撃的電影箱』の一コーナーとして始まった『進め!電波少年』が、「アポなし取材」や「ヒッチハイク」といった斬新な企画で注目を集め、シリーズ化されていくことになります。また、日本テレビ系のチャリティ番組『24時間テレビ』では、この年から「24時間チャリティマラソン」がスタートし、恒例企画となりました。同時に番組テーマ曲『サライ』も誕生しています。フジテレビ系の夏の恒例特番『FNSの日』も、『たけし・逸見の平成教育委員会』をベースにした『平成教育テレビ』としてリニューアルされました。

業界全体の動きとしては、不祥事も発生しました。朝日放送制作・テレビ朝日系のドキュメンタリー番組『素敵にドキュメント』でやらせが発覚し、番組が打ち切りに。司会の逸見政孝が降板する事態となりました。また、読売テレビ制作のバラエティ番組『超近未来遭遇!! どーなるスコープ』でもやらせが発覚し、放送が打ち切られています。

技術面では、4月1日に朝日新聞夕刊の番組表に、テレビ番組の録画予約を簡単にするためのGコードが日本の新聞で初めて掲載が開始されました。これはアナログ放送終了まで多くの新聞に広がる画期的な出来事でした。設備面では、東京都世田谷区にTBSや関西テレビなどが出資する複合型テレビスタジオ『東京メディアシティ』（TMC）が完成しました。

ネットワーク再編の動きもありました。毎日放送が3月31日をもって民間放送教育協会（民教協）を脱退し、テレビ朝日の番組がMBSから姿を消しました。翌年4月からの山形テレビのフジテレビ系列からテレビ朝日系列へのネットチェンジも、この年に系列ネット解消の申請と通告が行われています。そして、10月1日には秋田朝日放送（テレビ朝日系）と伊予テレビ（現・あいテレビ、TBS系）の新たな放送局が開局しました。あいテレビは、現時点ではTBS系の最後に開局したテレビ局となっています。

視聴率では、フジテレビが1982年から数えて11年連続で年間視聴率の三冠王を達成しました。個別の番組では、NHKの連続テレビ小説『おんなは度胸』が最高視聴率45.4%を記録したほか、秋の『ひらり』も40.1%と高い視聴率でした。ドラマではTBSの『ずっとあなたが好きだった』最終回が34.1%、フジテレビの『愛という名のもとに』最終回が32.6%など、話題作が高い視聴率を獲得しました。スポーツ中継では、大相撲中継が40%を超えるほか、プロ野球日本シリーズや箱根駅伝なども高視聴率でした。年末の『NHK紅白歌合戦』第2部は55.2%を記録しています。

この年は多くのテレビ局や番組が節目を迎えました。開局や放送開始から節目の周年を迎えた局や番組、音声多重放送を開始した局も多数ありました。

1992年に放送された主な番組（一部）:

テレビドラマ

• - NHK: 大河ドラマ『信長 KING OF ZIPANGU』、連続テレビ小説『おんなは度胸』『ひらり』
• - 日本テレビ系: 『悪女（わる）』、『いとこ同志』、スペシャルドラマ『池中玄太83キロさよならスペシャル』
• - TBS系: 『ずっとあなたが好きだった』、『十年愛』、『ホームワーク』、『HOTEL』第2シリーズ、『水戸黄門』第21部、『ドラマ30 いのちの現場から』
• - フジテレビ系: 『素顔のままで』、『愛という名のもとに』、『君のためにできること』、『二十歳の約束』、『誰かが彼女を愛してる』、スペシャルドラマ『北の国から'92巣立ち』
• - テレビ朝日系: 『美少女戦士セーラームーン』（アニメ）、『クレヨンしんちゃん』（アニメ）、『月曜ドラマ・イン 柴門ふみセレクション』
• - テレビ東京系: 『徳川無頼帳』、『宇宙の騎士テッカマンブレード』（アニメ）

バラエティ・情報・その他

• - 日本テレビ系: 『ジパングあさ6』、『進め!電波少年』、『ぶらり途中下車の旅』、『さんまのからくりTV』、『マジカル頭脳パワー!!』、『アメリカ横断ウルトラクイズ』（最終回）
• - TBS系: 『ムーブ』（『東京フレンドパーク』『ぎゃっぷウォーズ』他）、『さんまのからくりTV』、『クイズダービー』（最終回）
• - フジテレビ系: 『笑っていいとも!』、『ウゴウゴルーガ』、『タモリのボキャブラ天国』、『夢がMORI MORI』、『報道2001』、『週刊フジテレビ批評』
• - テレビ朝日系: 『象印クイズ ヒントでピント』、『TVチャンピオン』
• - NHK: 『生きもの地球紀行』、『音楽ファンタジー・ゆめ』

開局

• - 秋田朝日放送 (AAB)
• - 伊予テレビ (ITV、現・あいテレビ)

音声多重放送開始

• - サンテレビ、山陰放送テレビ、高知放送テレビ、テレビ高知、群馬テレビ、日本海テレビ

この年は、従来のテレビの形が変化し始め、新たな時代の流れを予感させる出来事が数多く見られた年と言えるでしょう。

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