1995年ウィンブルドン選手権

1995年 ウィンブルドン選手権

1995年のウィンブルドン選手権は、テニス界の聖地であるロンドン郊外のオールイングランド・ローンテニス・アンド・クローケークラブを舞台に、6月26日から7月9日までの期間で開催されました。この年の大会は、世界のトッププレイヤーたちが集結し、歴史的な記録や日本人選手の活躍、そして予期せぬ出来事など、多くの話題を提供しました。

シングルス部門の頂点

男子シングルス決勝では、ディフェンディングチャンピオンであり第2シードのピート・サンプラスと、復活を遂げた元王者ボリス・ベッカー（第4シード）が激突しました。両者ともに準決勝で強敵を破っての勝ち上がり。サンプラスはクロアチアのゴラン・イワニセビッチ（第6シード）をフルセットの末に退け、ベッカーは宿敵アンドレ・アガシ（第1シード）を破る見事な戦いぶりを見せました。決勝はベッカーが第1セットを先取する白熱した展開となりましたが、サンプラスがその後立て直し、セットカウント3対1（6-7, 6-2, 6-4, 6-2）で勝利。これにより、サンプラスはウィンブルドン3連覇、そして自身3度目の栄冠を手にしました。

女子シングルス決勝は、前哨戦である全仏オープンと同じ顔合わせとなりました。第1シードのシュテフィ・グラフと第2シードのアランチャ・サンチェスという、当時の女子テニス界を代表するライバル同士の対決です。グラフは準決勝でヤナ・ノボトナ（第4シード）を、サンチェスはコンチタ・マルチネス（第3シード）をそれぞれ退けて決勝に進出しました。この決勝は、テニス史に残る激戦として記憶されています。特に最終セットの第11ゲームは、延々とデュースが繰り返され、その時間は実に20分にも及びました。この1ゲームにおける最長時間記録は、プレイヤーたちの並外れた集中力とタフネスを示すものでした。最終的にこの歴史的なゲームを制したグラフが勢いに乗り、セットカウント2対1（4-6, 6-1, 7-5）でサンチェスを下し、ウィンブルドンでの6度目の優勝を果たしました。

日本人選手の躍進

この大会では、日本人選手の活躍が大きな注目を集めました。

男子シングルスでは、松岡修造が見事なパフォーマンスを披露しました。彼は快進撃を続け、日本人男子選手としては1933年の佐藤次郎以来、実に62年ぶりとなるベスト8進出という歴史的な快挙を成し遂げました。準々決勝では、そのサンプラスと対戦。第1セットではタイブレークを奪う健闘を見せましたが、経験豊富なチャンピオンの壁は厚く、惜しくも敗退となりました。

女子シングルス本戦には、伊達公子、沢松奈生子、神尾米、長塚京子、遠藤愛、杉山愛、宮城ナナの7名が出場しました。中でも第6シードの伊達公子は、日本人女子選手として初めてウィンブルドンのベスト8に進出するという金字塔を打ち立てました。準々決勝ではヤナ・ノボトナと対戦しましたが、ノボトナの正確なプレーの前に敗れ、初のベスト4進出はなりませんでした。沢松奈生子もシード選手として本戦に出場するなど、日本人女子テニスの層の厚さを示す大会となりました。

ダブルス部門とベテランの輝き

ダブルス部門でも興味深い結果が見られました。

男子ダブルスでは、マーク・ウッドフォードとトッド・ウッドブリッジのオーストラリアペア（ウッディーズ）がリック・リーチとスコット・メルビルのアメリカペアを決勝で破り、優勝しました。

女子ダブルス決勝では、ヤナ・ノボトナとアランチャ・サンチェスが、ナターシャ・ズベレワとジジ・フェルナンデスの強豪ペアをフルセットで破り、タイトルを獲得しました。

そして、混合ダブルスでは、テニスの女王マルチナ・ナブラチロワがジョナサン・スタークとペアを組み、優勝を果たしました。前年に女子シングルスの第一線から退いていたナブラチロワにとって、この勝利はウィンブルドンでの新たな栄光となりました。この混合ダブルスでの優勝により、彼女のウィンブルドンにおける総優勝回数は、女子シングルス9回、女子ダブルス7回、混合ダブルス3回を合わせて19回となり、エリザベス・ライアンが持っていた大会歴代2位タイの記録に並ぶ偉業達成となりました。

大会を揺るがした異例の事態

この大会では、コート上で異例の事態も発生しました。男子シングルス3回戦、アメリカのジェフ・タランゴとドイツのアレクサンダー・ムロンツの対戦中、タランゴが主審に対して繰り返した暴言により、第2セット途中で失格を言い渡されたのです。ウィンブルドンという伝統ある大会において、このような形で選手が失格となるのは前例のない出来事であり、コート内外に大きな波紋を広げました。

1995年のウィンブルドン選手権は、トッププレイヤーによるハイレベルな戦いはもちろんのこと、日本人選手の歴史的な活躍、記録に残る決勝戦、そして予期せぬ失格劇など、様々な出来事が凝縮された、記憶に残る大会となりました。

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