2007年の日本競馬

2007年（平成19年）の日本競馬界は、国際的な地位向上と国内制度の変更が目立った一年でした。年明けの1月1日には、日本が国際セリ名簿基準委員会（ICSC）によりパート2国からパート1国へと昇格。これにより、日本国内の主要レース結果が国際的に認められやすくなり、海外からの注目度も高まる契機となりました。

また、中央競馬（JRA）およびダート競走格付け委員会は、国際格付けを持たない重賞競走の格付け呼称を、従来のGI, GII, GIIIからJpnI, JpnII, JpnIIIへと変更しました（1月1日に遡及適用）。これに続き、南関東地方競馬でも格付けをG1, G2, G3からS1, S2, S3へ改め、ダートグレード競走については南関東独自の格付けを行わない方針が示されました（4月1日適用）。これらの変更は、国内のレース体系をより明確にし、ファンに分かりやすくするための取り組みと言えます。

注目のレースと記録

春の海外戦線では、中央競馬所属馬が輝きを見せました。3月31日にはアドマイヤムーンがドバイデューティーフリーで、5月20日にはシャドウゲイトがシンガポール航空インターナショナルカップでそれぞれ優勝し、世界の舞台で日本の実力を示しました。

国内では、記録的な出来事が相次ぎました。5月6日のNHKマイルカップでは、17番人気ピンクカメオ、18番人気ムラマサノヨートーが上位に食い込み、3連単はJRA重賞史上最高配当となる973万9870円を記録するなど、大波乱の一戦となりました。

そして、競馬史に刻まれる快挙が5月27日に達成されます。第74回東京優駿（日本ダービー）において、紅一点のウオッカが牡馬を相手に堂々と勝利を収めました。牝馬によるダービー制覇は史上3頭目で、1943年のクリフジ以来64年ぶりという、まさに歴史的な勝利でした。

夏の新潟開催では、武豊騎手が7月21日に中央競馬通算2944勝を挙げ、岡部幸雄元騎手の持つ記録を更新して中央競馬史上最多勝騎手となりました。この記録はその後も更新され続け、彼の偉大さを改めて印象付けました。

年末の第52回有馬記念では、9番人気のマツリダゴッホが優勝。このレースの馬番連勝単式および三連勝単式馬券は、有馬記念における史上最高配当額を更新しました。

競馬界を揺るがした事態

2007年の夏、日本競馬界は予期せぬ事態に見舞われます。8月16日、JRAのトレーニングセンターで馬インフルエンザの発生が判明。当初は小規模と思われましたが感染が拡大し、18日・19日の競馬開催は急遽中止となりました。この影響は地方競馬にも及び、各地でレースの中止や出走予定馬の取り消しが発生。予定されていた重賞レースの代替開催や、外国馬の出走に必須となる輸入検疫施設の再指定手続きなど、業界全体が対応に追われる事態となりました。

馬インフルエンザの影響は海外遠征にも及び、ダービー馬ウオッカや天皇賞馬メイショウサムソンといった有力馬が、秋の凱旋門賞挑戦を断念せざるを得なくなりました。

その他の出来事

この年、JRA東京競馬場では新スタンド「フジビュースタンド」が完成し、4月21日にグランドオープンを迎えました。世界最大級の規模を誇るこの施設は、競馬ファンに快適な観戦環境を提供することになりました。

また、外国資本の動向として、7月3日に「ダーレー・ジャパン・ファーム」のJRA馬主登録が認められましたが、わずか4か月後の11月には登録抹消手続きに入ったことが明らかになり、注目を集めました。

年末には、大井競馬場で行われた第53回東京大賞典の1レース売得金が25億円を超え、地方競馬における1レース売得金の史上最高記録を更新しました。これは地方競馬のダートグレード競走への関心の高まりを示す出来事と言えるでしょう。

人と馬の動き

2007年は多くの名馬や関係者が競馬界を去りました。アドマイヤムーン、ダイワメジャー、スイープトウショウといったGIホースが現役を退き、アンバーシャダイ、ミルジョージ、スティルインラブなどの名馬や種牡馬がこの世を去りました。また、田原源一郎氏、星川薫氏、瀬戸口勉氏といった著名な馬主や調教師、広瀬伸一氏のような競馬実況アナウンサーも逝去されました。

一方で、森田誠也騎手など新たな人材がデビューし、多くの期待馬が誕生しました。この年に生まれた世代（2010年クラシック世代）からは、後にGI馬となるヴィクトワールピサ、エイシンフラッシュ、アパパネ、ローズキングダム、ルーラーシップなどが誕生しています。

年間を通じての活躍が認められた馬や関係者には、JRA賞やNARグランプリが授与されました。JRA賞年度代表馬にはアドマイヤムーンが、NARグランプリ年度代表馬にはフリオーソが選ばれるなど、それぞれのカテゴリーで活躍した人馬が表彰されました。

制度改革、歴史的快挙、そして未曽有の事態に見舞われながらも、2007年の日本競馬は熱く、そして様々な記憶に残る一年となりました。

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