2016 DV1

概要

小惑星「2016 DV1」は、太陽系の内側、特に地球軌道に近い領域を公転する天体である地球近傍小惑星（NEA: Near Earth Asteroid）の一つです。アポロ群に分類される小惑星であり、その最大の特徴の一つとして非常に高速で自転することが知られています。大きさに関しては、直径が概ね29メートルから65メートルの範囲にあると推定されています。

この小惑星は、2016年2月28日にアリゾナ大学が運営するレモン山サーベイによる観測で初めて捉えられました。発見されたわずか数日後の同年3月3日には地球に接近。さらに、2021年3月3日にも再び地球の近くを通過する軌道であったため、その直前の2021年2月にも詳細な観測が行われました。

軌道の特性

2016 DV1は、太陽の周りを約2年半（約2年6か月）かけて一周する公転周期を持っています。軌道長半径は太陽から平均して約1.84天文単位（au）です。その軌道は非常に楕円形であり、軌道離心率は0.63という高い値を示します。一方、黄道面からの軌道の傾きを示す軌道傾角は約3度と比較的穏やかです。

地球軌道との間で最も近づく最小交差距離（MOID: Minimum Orbit Intersection Distance）はわずか0.001天文単位であり、これは距離に換算すると約15万キロメートルに相当し、月までの平均距離（約38.4万km）の半分にも満たない近さです。

大きな軌道離心率のため、この小惑星は近日点（太陽に最も近づく点）では太陽から約0.68天文単位まで接近する一方、遠日点（太陽から最も遠ざかる点）では約2.98天文単位まで遠ざかります。また、遠日点に向かう軌道上で、太陽から約1.66天文単位の距離にある火星の軌道を横断します。

2016年の発見と接近

2016 DV1が初めて観測されたのは、地球からおよそ600万キロメートル離れた位置にあり、太陽に対する見かけの角度（離角）が174度と、ほぼ地球を挟んで太陽の反対側にある状態だった2016年2月28日のことです。この発見は、アリゾナ大学のレモン山サーベイによってなされました。

この小惑星の光学望遠鏡による最後の画像は、世界協定時（UT）で同年3月3日の午前3時8分に撮影されました。また、アメリカ航空宇宙局（NASA）のゴールドストーン深宇宙通信施設にあるDSS-13アンテナと、ウェストバージニア州にあるグリーン・バンク天文台（GBT）といった電波望遠鏡を用いて、小惑星の詳細な形状や表面を捉えるためのレーダー画像観測も実施されました。

同年3月3日の午前5時17分（UT）には、地球から0.00264天文単位（約39万5千キロメートル、月までの距離の約1.03倍）という近距離まで最接近しました。しかし、その後すぐに小惑星は太陽に近い方向へ移動したため、強い太陽光の影響を受け、光学望遠鏡での更なる追跡観測は困難となりました。

2021年の観測と接近

2016年の観測以降、時間の経過とともに小惑星の軌道予測における位置の不確実性は徐々に蓄積していきました。天球上での位置の誤差が約1.2度まで広がった2021年2月17日、ハワイに設置されているパンスターズ望遠鏡によって2016 DV1が再び捉えられました。

2021年2月の初め頃までに、この小惑星の見かけの明るさは24等級よりも明るくなりましたが、これは自動掃天観測で検出できる限界に近い暗さでした。その後、同年2月26日頃には地球から見て太陽のほぼ反対側にあたる衝の位置に達し、見かけの等級は約19等級まで明るくなり、観測が比較的容易になりました。

そして、当初の予測通り、同年3月3日には地球から0.0053天文単位（約79万キロメートル、地球-月間距離の約2.1倍）の距離を通過しました。

この接近について、地球に衝突する可能性のある天体を監視するNASAのSentry Risk Tableにはリストされませんでした。これは、小惑星の将来の軌道予測における不確実性の範囲（いわゆる変動線）が地球の位置を通過しなかったためです。

物理的な特徴

自転周期

2016年3月に、アメリカの天文学者ブライアン・ワーナーが、カリフォルニア州にあるCS3（Center for Solar System Studies）のPalmer Divide Station（観測所コードU81）で2016 DV1の光度曲線を測定するための測光観測を行いました。この光度曲線の分析から、約0.084148時間（±0.000005時間）、すなわち約302.9秒という非常に短い、明確な自転周期が明らかになりました。光度曲線の明るさの変化（振幅）が大きいことから、この小惑星の形状がかなり不規則であることも示唆されました。

翌日の夜には、ヨーロッパの天文学者チーム（Siegfried Eggl、William Thuillot、Maria Kudryashova、Raoul Behrend）も同様の観測を実施し、約0.08435時間（±0.00005時間）、すなわち約303.7秒という近い自転周期と、さらに大きな光度変化（1.02等級±0.03等級）を確認しています。

直径

2016 DV1の正確な直径は現状では確定しておらず、いくつかの仮定に基づく推定値が用いられています。一般的に、小惑星の絶対等級（標準的な距離から見た明るさ）から直径を換算する際には、その表面の反射率であるアルベドを仮定する必要があります。

2016 DV1の絶対等級を24.8等級とし、一般的な小惑星のアルベドである0.14を仮定した場合、計算される直径は約40メートルとなります。

しかし、地球近傍小惑星のアルベドは、S型小惑星のような岩石質の比較的明るい天体（アルベド約0.25）と、C型小惑星のような炭素質の暗い天体（アルベド約0.05）に二峰性の分布を示すことが知られています。この二つの可能性を考慮し、2016 DV1の組成がS型またはC型であると仮定した場合、その直径は29メートルから65メートルの範囲にあると推定されています。

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