2024 YR4

2024 YR4：地球近傍小惑星の解説

2024 YR4は、地球の軌道と交差するアポロ群に分類される地球近傍小惑星（NEO）です。この小惑星は、2024年 12月27日に小惑星地球衝突最終警報システム（ATLAS-CHL）によって発見され、その直径は40mから100mと推定されています。2025年2月初旬の時点で、2024 YR4は2032年 12月22日に地球に接近する際、トリノスケールで「3」と評価され、衝突の可能性が1.7%（約59分の1）と計算されました。これは、観測史上2番目に高いリスク評価でした。

発見と軌道

2024 YR4は、チリのコキンボ州にあるATLAS-CHLの観測で発見されました。発見の前日には、アリゾナ大学のカタリナ・スカイサーベイでも観測されていました。小惑星センター（MPC）によって発行された小惑星電子回報（MPEC）で、この小惑星には仮符号が与えられました。

この小惑星の軌道は非常に歪んだ楕円形であり、太陽からの平均距離は約2.54天文単位（約3億8000万km）です。近日点では太陽から約0.85天文単位（約1億2800万km）まで近づき、遠日点では約4.23天文単位（約6億3200万km）まで離れます。地球軌道との最小交差距離（MOID）は約0.00265天文単位（約396,000km）で、これは月までの距離とほぼ同じです。このため、2024 YR4はアポロ群に分類される地球近傍小惑星となりました。

物理的特徴

大きさと衝突エネルギー

2024 YR4の直径は直接測定されていませんが、絶対等級と幾何アルベドから推定されています。小惑星が可視光の5%から25%を反射すると仮定すると、直径は40mから100mになります。NASAは、反射率を15.4%と想定して、直径を55mと推定しました。この大きさは、1908年のツングースカ大爆発や、アリゾナ州のバリンジャー・クレーターを形成した小惑星とほぼ同じです。

質量と密度は、推定された密度2.6g/cm³に基づいて計算され、NASAは質量を2.2×10⁸kgと推定しました。もし2024 YR4が推定速度の17.32km/sで地球に衝突した場合、約7.9Mt（約33PJ）のエネルギーを放出すると推定されています。これは2013年のチェリャビンスク隕石の約14倍の威力ですが、地球全体に影響を与えるほどではありません。ただし、局地的に破滅的な被害を引き起こす可能性は十分にあります。直径が100mと推定される最大値の場合、放出エネルギーは50Mt（約206PJ）に達すると考えられます。

組成と自転周期

分光解析の結果、2024 YR4はS型またはL型小惑星に分類され、石質の組成であると考えられています。測光観測から、自転周期は約19分半であることが明らかになり、自転に伴って明るさが0.42等級変化することが観測されました。これは、2024 YR4が細長い形状をしていることを示唆しています。

2032年の潜在的な衝突可能性

2025年2月2日時点の観測弧は約38日間で、2032年 12月22日に2024 YR4が地球に衝突する確率は1.7%と計算されました。この計算はJPL Small-Body Databaseに基づいています。JPLの地球近傍天体研究センター（CNEOS）は、この衝突リスクを評価するトリノスケールを「3」に引き上げました。これは天文学者にとって注意が必要な段階です。

トリノスケールで評価された小惑星としては、2004年に(99942)アポフィスが「4」と評価された例に次いで2番目に高いものでした。パレルモスケールでは-0.43と評価され、これはBackground Hazard Levelの3倍の衝突危険度を示します。国際小惑星警報ネットワーク（IAWN）も、この地球接近に関する通知を発表しました。欧州宇宙機関（ESA）の地球近傍天体調整センター（NEOCC）も、2024 YR4を「リスクリスト」に掲載し、パレルモスケールを-0.43、衝突確率を1.57%と評価しました。Near Earth Objects Dynamic Site（NEODyS）では、パレルモスケールを-0.33、衝突確率を1.88%としました。この接近で衝突が起こるとした場合、太平洋の中央アメリカ沖から南アメリカ北部、大西洋中部、アフリカ中部、そしてインド周辺までの帯状の地域に影響が出ると予想されています。

対応と今後の観測

2024 YR4の発見を受け、惑星防衛の対応として、超大型望遠鏡VLTやその他の望遠鏡で追跡観測が実施されています。国際連合が承認した宇宙ミッション計画アドバイザリーグループ（SMPAG）も警戒を強めています。ESAは、衝突確率が1%を超える状態が続けば、SMPAGは国際連合に勧告を行い、対応策の評価を開始すると述べています。

科学雑誌「サイエンティフィック・アメリカン」は、2025年4月までに衝突の可能性を完全に排除できない場合、DART計画のような小惑星の軌道変更計画について議論する可能性を指摘しました。

2024 YR4の最も古い観測記録は2024年 12月25日でしたが、その位置は正確には特定できませんでした。過去の観測記録を調べても、この小惑星は見つからず、2032年の接近で地球から遠く離れたところを通過する可能性は低いとされています。アマチュア天文家のSam Deenは、初期の観測データを含めると衝突確率が3%に上昇する可能性を指摘しています。さらに、12月25日の観測データを含めると、衝突確率は6%にまで増加する可能性があるとしています。

しかし、不十分な観測データに基づく初期の軌道予測には不確実性が伴います。観測を重ねるごとに軌道が正確になり、ほとんどの場合、衝突リスクはほぼゼロになることが判明しています。2024 YR4についても、最終的には地球への衝突の可能性は非常に低いと予想されています。

外部リンク

2024 YR4 - NeoDyS-2, Near Earth Objects—Dynamic Site
2024 YR4 - ESA–space situational awareness
2024 YR4 - JPL Small-Body Database
日本経済新聞記事

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