Aqua (コンピュータ)

Aqua（アクア）とは

Aquaとは、AppleがMac OS X v10.0で採用した一連のGUIデザインの名称です。水や滴をイメージした、白と水色を基調とした立体的なデザインが特徴で、流れるようなアニメーションによって、動的な操作感を提供していました。このデザインは、スコット・フォーストール氏が開発を主導しました。

デザインの特徴

AquaのGUIは、2D部分をQuartzというグラフィックライブラリで実現し、PDFベースでレンダリング、アンチエイリアス、合成などの機能を提供しました。3D部分にはOpenGLが利用されていました。初期のMac OS Xでは動作速度が課題でしたが、アップデートを重ねるごとに、Quartz ExtremeやCore Imageといった技術によってGPUに処理を移すことで改善されました。

導入の背景

1990年代、Appleは次世代のMac OSの開発に苦戦していました。Pink、Taligent、Coplandといったコードネームのプロジェクトが次々と失敗に終わる中、最終的にNeXTSTEPをベースとしたMac OS Xが開発されました。これは、AppleがNeXTを買収し、スティーブ・ジョブズ氏がCEOとして復帰した後のことです。

当初、Rhapsodyという開発コードネームで知られる次世代OSは、サーバー向けのリリースを想定しており、GUIは暫定的なものでした。しかし、一般ユーザーにとって分かりやすいGUIが必要とされたため、スコット・フォーストール氏を中心とするチームが新たなGUIの開発を進め、2000年1月のMacworld ExpoでAquaが発表されました。発表時、ジョブズ氏は「見たときに舐めたくなるようなデザインが目標の一つであった」と語っています。

デザインの変遷

Aquaのデザインは、OSのメジャーアップデートごとに手が加えられ、初期の姿から大きく変化しました。

• - Mac OS X v10.2: 2xAGP以上のバスに接続されたGPUを搭載したマシンでは、Quartz Extremeによる高速な描画が可能になりました。

• - Mac OS X v10.3 - v10.4: 金属表面のヘアライン処理を意識した“Brushed Metal”というユーザーインターフェースデザインが併用されました。

• - Mac OS X v10.5: “Brushed Metal”デザインがAquaデザインに統合されました。タイトルバーがグレーになり、プッシュボタンから水色の影がなくなりました。プルダウンメニューの背景は不透明になり、コンテキストメニューは低い透明度の白無地になりました。

• - Mac OS X Lion: 従来の青いスクロールバーは、操作時にのみ表示されるグレーのオーバーレイスクロールバーに変更されました。プッシュボタンは角の丸い長方形になりました。タブやプルダウンメニューから水色が排除されました。

また、アプリケーションやツールバーのアイコンは、初期にはガラスやステンレス、プラスチックを思わせる写実的なものが用いられていましたが、Mac OS X v10.3あたりから、アルミや不透明なプラスチックを意識した、ソリッドなアイコンも使われるようになりました。

フラットデザインへの移行

Aquaのデザインは、iOSのデザインにも大きな影響を与えていましたが、ジョナサン・アイブ氏がApple製品のデザイン全体を統括するようになり、ソフトウェアのデザインの方向性が大きく変わりました。iOS 7を皮切りに、Apple製品のOSはフラットデザインへと移行し、MacのOSもOS X Yosemiteでフラットデザインに移行したため、従来のAqua/Metalデザインは一部の古いソフトウェアを除き、使われなくなりました。

まとめ

Aquaは、Mac OS Xの初期を象徴する美しいGUIデザインでした。その立体感のあるデザインと動的な操作感は、多くのユーザーに愛されましたが、OSの進化とともにフラットデザインへと移行しました。しかし、そのデザインは、Appleの歴史において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

関連項目

• - Luna
• - Windows Aero
• - Frutiger Aero

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