B-1 (航空機)

ロックウェル B-1 ランサー：可変翼が生み出す戦略爆撃機

ロックウェル B-1 ランサー（Rockwell B-1 Lancer）は、アメリカ空軍が運用する可変翼超音速戦略爆撃機です。開発はロックウェル社（後にボーイングに吸収）が担当しました。B型以降の公式愛称は「ランサー（Lancer）」で、槍騎兵を意味します。また、形式番号（B-One）にちなんで「ボーン」（Bone、骨）と呼ばれることもあります。

概要

B-1 ランサーは、大型爆撃機としては珍しい可変翼を備え、15度から67.5度の後退角によって幅広い速度領域をカバーします。最高速度は、可変式エアインテークを持つA型でマッハ2.2、固定式となったB型ではマッハ1.25です。設計当時にはステルス機という概念は確立していませんでしたが、ブレンデッドウィングボディによる胴体設計により、レーダー反射断面積はB-52の1/100にまで抑えられ、レーダーによる発見率が低いという特徴があります。

ソ連のTu-160 ブラックジャックは、B-1を参考に開発されたと言われています。両機の外観は酷似していますが、技術的には大きな違いがあり、サイズもTu-160の方が一回り以上大きいです。同様の現象は、同時期の米ソ両国の宇宙往還機、スペースシャトルとブランにも見られます。

2016年8月には、太平洋軍傘下で米領グアムにも配備され、北朝鮮まで約2時間で到達可能となりました。2021年時点で45機が運用されており、2025年からノースロップ・グラマン B-21による置き換えが開始され、2036年までに全機が退役する予定です。

沿革

B-1の開発は、XB-70 ヴァルキリー戦略爆撃機の開発中止がきっかけとなりました。XB-70は、超音速・高高度飛行で敵地深くまで侵攻する戦略核兵器投下を目的としていましたが、開発費の高騰や事故、ICBMやSLBMの台頭により、計画はキャンセルされました。その後、戦略爆撃機の用法は、亜音速・超低空飛行で敵地深くまで侵攻し、電子妨害装置で敵防空網を無力化するという戦略思想に変化しました。

1970年、ロックウェル社が先進型有人戦略航空機（AMSA）計画の担当に指名され、開発が開始されました。ソ連の先制核攻撃によって滑走路が一部破壊されても離陸できるよう、STOL（短距離離着陸）性能も要求され、これらの要求を満たすために可変後退翼が採用されました。

B-1Aは1974年12月23日に初飛行しましたが、1977年6月30日、カーター政権下の軍縮によって開発・導入が中止されました。戦略ミサイルの大量配備や巡航ミサイルの開発が進む中で、有人爆撃機の有効性に疑問が生じたためです。しかし、1981年8月、レーガン政権の「強いアメリカ」政策によって計画が復活し、B-1は長距離戦闘航空機（LRCA）として配備されることになりました。

要求仕様の変更に伴い、B-1Aの試作機の一部に採用されていたコックピットごと緊急脱出する分離脱出システムは、通常の射出座席に変更され、エンジン空気取り入れ口も可変式から固定式に変更されました。この変更は、コスト削減とステルス性向上を目的としたもので、最高速度は低下しました。こうして、B-1Bが生産・配備されることになったのです。初めての実戦投入は、1998年2月の砂漠の狐作戦でした。

B-1Bの特徴と性能

B-1Bは、超低空侵攻による核/爆弾攻撃、通常の戦略爆撃、巡航ミサイルプラットフォームなど、多岐にわたる任務をこなすために、地形追随レーダー、赤外線監視装置、ドップラー・レーダー、ECMシステムなど、高度な電子機器を搭載しています。しかし、エンジントラブルや搭載コンピュータとECMのミスマッチングなどにより開発は遅延し、初期作戦能力獲得は1986年となりました。

第二次戦略兵器削減条約（START II）の対象となったため、1994年に核攻撃任務から外され、現在配備されている機体はすべて核兵器搭載能力を持っていません。1990年代半ばからは、近代化改修とともに通常兵器搭載能力・精密兵器搭載能力の向上が図られています。

B-1Bの搭乗員は、機長、副操縦士、兵装システム操作員、防御システム操作員の4名で、座席はすべてACES II 射出座席となっています。

機体はブレンデッドウィングボディを採用し、主翼は全翼幅にわたるスラットと、約3/4を占める隙間式フラップを装備しています。エルロンはなく、代わりにスポイラーを装備。水平尾翼は全遊動式で、ローリングは主翼のスポイラーと水平尾翼の差動によって行われます。

エンジンは、ゼネラル・エレクトリックF101-GE-102アフターバーナー付きターボファンエンジンを4基搭載しています。

兵装最大搭載量は56,000kgで、機内34,000kg、機外23,000kgです。胴体中央には3つの兵器倉があり、機外には8つの搭載ステーションがあります。

レーダーは、AN/APQ-164多モードパッシブフェーズドアレイレーダーを機首に装備しています。電子戦自衛装備の中核は、防御システム操作員によって操作される防御電子機器システム（DAS）です。

今後の展望

米空軍は、老朽化したB-1Bを、次世代爆撃機B-21 レイダーによって順次置き換える計画を進めています。B-1Bは、長年にわたりアメリカ空軍の戦略爆撃を支えてきましたが、その役割は新たな世代へと引き継がれていくことになります。

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