C-17 (航空機)

C-17 グローブマスター III：世界を繋ぐ戦略輸送機

C-17 グローブマスター IIIは、マクドネル・ダグラス（現ボーイング）社が開発・製造し、アメリカ空軍が主力として運用する大型長距離輸送機です。その愛称は、かつてダグラス社が開発した輸送機、C-74 グローブマスター、C-124 グローブマスター II に由来します。

概要

C-17 は、C-5戦略輸送機に匹敵する大型貨物の長距離輸送能力と、C-130戦術輸送機並みの短距離離着陸性能を兼ね備えています。アメリカ空軍では、研究開発機を除く 223 機を航空機動軍団、太平洋空軍などに配備。平和維持活動や人道支援など、世界規模での軍の海外派遣が増加したことで、その長距離・大型輸送能力が高く評価され、他国での採用も広がりました。

2000年代に入ると国際的な軍事費削減の動きが強まり、ボーイング社は2015年に C-17 の製造ラインを閉鎖しました。しかし、その後のアメリカ国内における中国脅威論の台頭や、中東での対テロ戦争の継続を受け、生産の継続や、初期生産分の近代化改修を行う提案がなされています。

特徴

C-17 は、アメリカ陸軍のほぼ全ての装甲戦闘車両と航空機を搭載可能です。最大ペイロードは77トンに達し、これはC-5戦略輸送機の最大ペイロードの約65%に相当します。

搭載例

M1A1 エイブラムス戦車 × 1両
M2A2 ブラッドレー歩兵戦闘車（26トン時） × 3両
M270 MLRS自走多連装ロケットランチャー × 1両、支援車両 × 3両（運用および整備要員47名）
ハンヴィー高機動多用途車 × 10両
AH-64 アパッチ攻撃ヘリコプター × 3機
463L貨物パレット × 18枚
兵員189名

最大ペイロードでの航続距離は4,440km、離着陸距離は910mです。EBF方式のパワードリフト・システムを用いてSTOL性能を確保しており、4基のエンジン全てにスラスト・リバーサーが装備されています。リバーサーはファンコールドストリーム型とクラムシェル型の併用で、100％の逆噴射が可能です。

太い胴体と横に突き出したスポンソン部に4ユニット計12個の車輪を収めることで、大貨物の搭載を可能にしています。貨物の積み下ろし口は後部ランプのみですが、油圧ウインチと8列ローラー・コンベアにより、省力化されています。

コックピットはグラスコックピットで、輸送機として世界で初めてヘッドアップディスプレイを採用しました。操縦装置はフライ・バイ・ワイヤの操縦桿を採用しています。

多くの軍用輸送機と同様に高翼配置の主翼にターボファンエンジンを4基搭載し、尾翼はT字尾翼、翼端にはウィングレットを装備しています。また、19tまでの低高度パラシュート抽出システムに対応しています。

生産71号機以降は中央翼部に燃料タンクが増設され、航続距離が延伸しました。ボーイング社ではこの型をC-17ERと呼んでいます。

歴史

C-17 の開発は、1970年代にアメリカ空軍が C-130 の後継機計画を模索したことから始まりました。先進中型短距離離着陸輸送機計画 (AMST) での競争試作を経て、1981年8月にマクドネル・ダグラスが C-17 の開発を担当することが決定しました。

1991年9月15日に初飛行を行い、1993年7月に部隊配備が開始されました。開発目標を概ね達成し高く評価され、近年のアメリカ軍の中東展開には、欠かせない機体となっています。

運用実績

ノーザン・ディレイ作戦: 2003年のイラク戦争におけるアメリカ軍初のエアボーン作戦に参加
機上のドラゴン作戦: 1/63機甲大隊を空輸
シリア内戦: ISILに対する攻勢支援
アメリカ軍のアフガニスタン撤退: 避難民の国外輸送

採用国

現在、C-17 を採用しているのは以下の国と機構です。

アメリカ合衆国
イギリス
オーストラリア
カナダ
カタール
アラブ首長国連邦
NATO
インド
クウェート

検討国

日本：航空自衛隊でC-1の後継候補となったが、飛行場の問題や性能面から不採用
フランス：C-17A購入を検討
韓国：C-17クラスの輸送機購入を検討

搭載機器

AN/AAR-47（V）2 ミサイル・レーザー警報システム
AN/ALE-47|AN_ALE-47 射出装置（チャフ、フレア散布）

スペック

全長：53.0 m
全幅：51.8 m
全高：16.8 m
最高巡航速度：M0.77
航続距離：5,190 km（空荷フェリー時：9,815 km）
* 最大積載量：77.519 t

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