DORIS (衛星測位システム)

DORIS（ドップラーによる衛星軌道決定と電波灯台位置決定法）は、フランスが開発した衛星システムで、人工衛星の精密な軌道決定と地上局の正確な位置測定に用いられます。英語では「Doppler Orbitography and Radiopositioning Integrated by Satellite」、フランス語では「Détermination d’Orbite et Radiopositionnement Intégré par Satellite」と表記され、それぞれの頭文字を取ってDORISと呼ばれています。

動作原理

DORISの基本的な原理は、地上局のビーコン（電波灯台）から送信された信号を、軌道上の人工衛星が受信することです。これは、GPSなどの他の全地球航法衛星システム（GNSS）とは異なり、送信機が地上にあり受信機が衛星にあるという逆の構成になっています。衛星の移動によって生じるドップラー効果を利用し、信号の周波数の変化から衛星の正確な軌道を割り出し、同時に地上局の位置を特定します。この技術は、初期のトランシット衛星による測量と本質的な原理は同じですが、DORISでは分解能が向上し、電離層による屈折の影響をより効果的に補正できるようになっています。

システムの構成

DORISシステムは、フランス国立宇宙研究センター（CNES）によって管理されています。運用の中枢はトゥールーズに置かれ、ここでマスタービーコンの管理と衛星との通信が行われています。DORISの地上局は、地球全体に約60か所配置されており、衛星の軌道決定に必要な観測範囲を確保するために、地理的に均等に配置されています。これらの地上局は信号を送信するだけで、いかなる情報も受信しないため、設置には電源のみが必要です。DORISビーコンは、401.25 MHzと2036.25 MHzの2つのUHF周波数で衛星に信号を送信します。また、DORISビーコンは、エベレストのベースキャンプや南極の昭和基地のような極地にも設置されています。

DORISを搭載した人工衛星

DORIS受信機を搭載した主要な人工衛星には、高度計衛星のTOPEX/ポセイドン|TOPEX_ポセイドンとジェイソン1があります。これらの衛星は、海洋の表面高度を観測し、海流や波の高さの研究に利用されています。DORISは、これらの衛星の軌道を約2cmの精度で決定することができます。他にも、Envisat、SPOT、海洋2号A、CryoSat-2などの衛星がDORISシステムを利用しています。

測位への応用

衛星の軌道決定だけでなく、DORISによる観測データは地上局の測位にも利用されます。測位精度はGPSよりわずかに劣りますが、DORISは現在も国際地球基準座標系（ITRF）の構築に貢献しています。これにより、地球上の正確な位置情報を必要とするさまざまな科学研究や測地学の分野で重要な役割を果たしています。

関連情報

DORISシステムは、国際DORIS事業を通じて世界的に協力体制が築かれています。
関連する人工衛星やシステムとしては、以下のものがあります。
SPOT (SPOT-2, SPOT-3, SPOT-4, SPOT-5)
TOPEX/ポセイドン|TOPEX_ポセイドン
ジェイソン1
Envisat
Space Test Program (STPSat-1)
OSTM/Jason-2
CryoSat-2
海洋 (人工衛星) (HY-2A, HY-2C, HY-2D)
SARAL
Jason-3
Sentinel-3A
Sentinel-3B
Sentinel-6 Michael Freilich (Sentinel-6A)
Surface Water and Ocean Topography (SWOT)
アルゴスシステム
トランシット (人工衛星)

これらの関連システムとともに、DORISは地球観測と測位技術の発展に大きく貢献しています。

外部リンク

DORIS
International DORIS Service
* 統合測地モニタリング観測 国立極地研究所

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