IERS基準子午線

IERS基準子午線（IRM）とは

IERS基準子午線（IRM：International Reference Meridian）は、国際地球回転・基準系事業（IERS）が管理する、国際的に用いられる本初子午線、つまり経度0度の基準となる線です。このIRMは、かつての本初子午線であったグリニッジ子午線とはわずかに異なり、東に約102.478メートル（経度で5.3101秒）ずれています。

グリニッジ子午線とのずれ

IRMとグリニッジ子午線のずれは、グリニッジ子午線がグリニッジの局所的な鉛直を基準とした局所座標系であったためです。対してIRMは地心座標系であり、地球の重心を通る平面上に存在します。このずれが、GPSや世界測地系1984（WGS84）などの基準となる子午線にIRMが採用される理由の一つです。

IRMと国際地球基準座標系 (ITRS)

国際地球基準座標系（ITRS）は、地球の質量中心を原点とし、IRMと赤道の交点の方向をX軸、東経90度線と赤道の交点の方向をY軸、IERS基準極点（北極点）の方向をZ軸とする三次元直交座標系として定義されます。この座標系は、地球上の位置を正確に測定するために不可欠です。

IRMの利用と測地系

国際水路機関（IHO）は1983年に、国際民間航空機関（ICAO）は1989年に、それぞれ海図と航空航法にIRMを採用しました。しかし、プレートテクトニクスにより地表は常に移動しているため、各地の測地系は、特定の年の年初にその国土が存在した位置に固定し、その時のIRMに基づいて定義されています。例として、北米測地系1983（NAD83）、欧州地球基準系1989（ETRF89）、オーストラリア地心測地系1994（GDA94）などが挙げられます。これらの測地系と実際のIRMとの差は、数センチメートル程度です。

IRMの決定方法

IRMは、地球上の固定された点ではなく、IERSネットワークに参加する数百の地上局の観測データに基づいて決定されます。これらの地上局には、GPS局、衛星レーザ測距（SLR）局、月レーザー測距（LLR）局、および高精度超長基線電波干渉法（VLBI）局が含まれます。これらのデータを用いて、最小二乗法による加重平均を計算し、IRMを決定しています。

IRMと地球の自転

IRMは地球上の特定の地点に固定されているわけではありません。ユーラシアプレートのように、IRMに対して年間約2.5cm北東方向に移動している地域もあります。この変化は、プレートの移動によるものです。

180度経線

180度経線はIRMの反対側に位置し、IRMとともに地球を西半球と東半球に分ける大円を形成します。

世界時（UT）との関係

世界時（UT）はWGS84子午線に基づいていますが、地球の自転速度の変化により、協定世界時（UTC）は本初子午線における平均太陽時と最大0.9秒ずれることがあります。このずれを補正するために、閏秒が挿入されます。

IRMが通過する国

IRMは、北極点から南極点まで、以下の8か国を通過します。

(国名は省略)

関連事項

• - 東経1度線
• - 西経1度線
• - 180度経線
• - グリニッジ子午線
• - 本初子午線
• - 協定世界時 (UTC)

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