KrAZ-6322

KrAZ-6322：ウクライナ生まれの多用途オフロードトラック

KrAZ-6322は、ウクライナの自動車メーカーAvtoKrAZが開発した6x6輪駆動の大型オフロードトラックです。旧ソ連時代から続くKrAZ-255やKrAZ-260の設計を基に、現代的な改良を加えたモデルとして登場しました。一世代前のKrAZ-260とよく似た構造と外観を持ちながら、より洗練されたデザインと性能を備えています。

基本構造と特徴

KrAZ-6322のプラットフォームであるKrAZ-63221は、あらゆる地形に対応できる高い走破性を誇ります。貨物や人員の輸送はもちろん、荒地や起伏の激しい地形でも安定した走行が可能です。-45℃から+50℃までの幅広い温度環境下での使用が想定されており、スペアタイヤや工具などの予備部品を搭載している他、必要に応じて予熱器を装備することもできます。

外観は、KrAZトラック伝統の角型ボンネットデザインを継承していますが、ボンネットの形状はUralAZ製トラックに近い曲線を取り入れたものとなっています。バンパーには前照灯とウインカーが組み込まれています。

サスペンションは、前後独立懸架式で、縦置きの半楕円形スプリングを使用しています。前部には2基の油圧式ショックアブソーバー、後部にはバランサー式のショックアブソーバーが装備されています。ブレーキは、圧縮空気式のフットブレーキ、駐車ブレーキ、排気ブレーキの3種類を搭載。

エンジンは、V型8気筒ターボチャージャー付きディーゼルエンジンで、EURO-0規格のYaMZ-238DまたはEURO-2規格のYaMZ-238EYe2を選択可能です。出力は330馬力、トルクは133kgf/m、排気量は14.86Lで、最高速度80km/hでの走行が可能です。クラッチは、乾式2枚式を採用。直径1,300mm、幅530x533mmの530/70R21サイズのタイヤを使用し、深さ1.2mまでの浅瀬も走行できます。また、30tまでのトレーラー、または75tまでの航空機を牽引できる強力な牽引力も備えています。

多彩な派生型

KrAZ-6322は、その汎用性の高さから様々な派生型が開発されています。

KrAZ-6322 トラック: 基本型となる貨物トラックで、荷台にはMAZ-8926が使用されています。幌を装着することで、標準的な幌付き車両となります。
KrAZ-6322 AF1: 有蓋車型で、軍用輸送、修理用車両、特殊車両、トレーラーヘッドとして使用できます。人員輸送用の座席も装着可能です。
KrAZ-6322-076: 回収車型で、運転席後部にクレーンを備え、未舗装地での車両修理・回収作業に使用されます。
KrAZ-6322-121 フラード: BM-21多連装ロケット砲の搭載型で、ウラル-375DをベースとしたBM-21の後継として開発されました。
* KrAZ-6446: セミトレーラー牽引用のトラクターヘッド。

この他にも、車体を延長したロングシャーシ型や、様々なロケットランチャーシステムを搭載した自走砲、装甲車など、多種多様な派生型が存在します。

ウクライナ軍での採用と輸出

KrAZ-6322は、ウクライナ国防省の要求に基づき開発され、厳しい試験をクリアした後、2008年に「ソルダート（兵士）」の愛称でウクライナ軍に正式採用されました。AvtoKrAZは、ウクライナ軍向けに多数のKrAZ-6322を納入し、軍の即応能力向上に貢献しています。

また、KrAZ-6322とその派生型は、インドネシア、イラク、イエメン、アンゴラ、エジプトなど、世界各国に輸出されています。これらの車両は、燃料タンカー、修理回収車など、様々な用途で使用されています。

KrAZ-6322は、その高い信頼性と汎用性から、軍事・民生の両面で幅広く活躍する、ウクライナを代表する多目的トラックと言えるでしょう。

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