M-346 (航空機)

M-346：多用途ジェット練習機

M-346は、イタリアのアレーニア・アエルマッキ社（現レオナルド）が開発した高等ジェット練習機です。高度な訓練を可能にする性能に加え、軽攻撃機としての運用も視野に入れた設計が特徴です。

開発の経緯

M-346の開発は、1990年代にロシアのA・S・ヤコヴレフ記念試作設計局との共同プロジェクトとして始まりました。しかし、市場の変化に伴い、計画はロシア向け（Yak-130）と西側向け（M-346）に分離されました。イタリアで独自に開発が進められたのが、このM-346です。

2004年に初飛行を成功させ、2008年にはトーネードIDSからの空中給油に成功。同年には生産型1号機がロールアウトしました。生産型では、降着装置をAMXと同様のものに変更、機体構造の見直しやチタニウム、複合素材の使用により大幅な軽量化を実現しています。また、燃料タンクを前方に移動し、航法システムも強化されました。

2009年には公式試験を完了し、「マスター」(Master)と命名。イタリア空軍から初期ロットの受注を獲得し、T-346の型式名が与えられました。2010年には最初の2機がロールアウトし、翌年には型式認証を取得、運用が開始されました。2020年には、軽攻撃機型であるM-346FAが初飛行しています。

機体の特徴

M-346は、高等練習機としての性能に加え、軽攻撃機としての能力も有しています。アフターバーナーを搭載しないながらも、練習機としては高い推力を実現。双発エンジンによる安全性、システム冗長性、兵装搭載量の増大が図られています。

デジタルコントロールは四重化されており、様々な実用機の特性を模擬することが可能です。コクピットには、ヘッドアップディスプレイと3面のカラー液晶ディスプレイが搭載され、ヘッドマウントディスプレイや暗視ゴーグルの運用にも対応しています。射出座席には、イギリス製のMk16が採用されています。

高アングル・高G機動や遷音速域での飛行に対応し、対空・対地訓練の内容を地上から随時変更可能です。複合素材の多用、機体構造の標準化、F124エンジンの採用などにより、訓練費用や維持費用の低減にも配慮されています。

軽攻撃機型であるM-346FAは、グリフォ・レーダー、データリンク、自衛用ECM装置を装備し、近接航空支援、低速目標迎撃、対艦攻撃などに用いられます。主翼下に7箇所の搭載ステーションを持ち、最大2,000kgの兵装を搭載可能。LITENING 5レーザー照準器やRecceLite偵察ポッドなども搭載できます。

派生型

M-346: 基本型
M-346FT: ファイター・トレイナー型。LIFT機として、戦闘訓練にも使用可能
M-346LCA: 軽戦闘機型。簡素な戦闘・攻撃機
M-346LFFA: 多用途作戦型（旧M-346FA）

運用状況

M-346は、以下の国で採用されています。

イタリア
ポーランド (愛称：ビエリク（オジロワシ）)
シンガポール
イスラエル (愛称：ラビ（若獅子）)
アゼルバイジャン
ギリシャ
トルクメニスタン
カタール
ナイジェリア
[オーストリア]

アメリカ合衆国では、T-X計画にT-100として提案されましたが、ボーイングT-7が採用されています。アラブ首長国連邦では、導入計画が一時停止された後、別の機種が採用されました。

事故

2011年11月18日、ドバイ航空ショーに出展された試作機が、帰国途中にドバイ近郊で墜落する事故が発生しましたが、搭乗者は脱出に成功しています。

主要諸元

乗員：2名
全長：11.49 m
全幅：9.72 m
全高：4.91 m
翼面積：23.52 m2
空虚重量：4,625 kg
運用時重量：7,400 kg
最大離陸重量：10,200 kg
エンジン：ハネウェル/ITEC F124-GA-200 2基
最大速度：1,059 km/h
* 航続距離：1,981.6 km

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