PostScriptフォント

PostScriptフォントとは

PostScriptフォントは、アドビシステムズが開発したアウトラインフォントの仕様です。PostScriptファイル形式を用いてフォント情報をエンコードします。Type 1やCIDフォントなど様々な種類が存在し、それぞれ特徴や用途が異なります。

PostScriptフォントの種類

Type 0

Type 0は、複数の子孫フォントを参照する高レベルフォントからなる「合成」フォント形式です。OCF形式（Type 0のファイル構造を使用）は大きな文字集合を持つフォントをサポートするために設計され、その後、より柔軟な構造を持つCID形式へと移行しました。

Type 1

Type 1は、1バイト欧文フォントのためにAdobe Type ManagerソフトウェアとPostScriptプリンタで使われるフォント形式です。フォントヒンティングをサポートしており、当初はプロプライエタリな仕様でしたが、後にアドビが仕様を公開しました。

Type 1はアウトライン情報のみを格納するよう効率的にPSシステムを単純化したものであり、完全な言語ではありませんでした。アドビはType 1テクノロジのライセンスを高額で販売し、ヒンティングのサポートを付け加えました。Type 1のより安価な実装であるType 3フォントはPostScript言語の洗練された機能すべてを使えましたが、ヒンティングのための標準化された手段がありませんでした。その他の違いがさらに混乱を増やしました。

Type 2

Type 2は、アウトラインフォントファイルにおける文字記述の手続きにコンパクトな表現を提供するcharacter string形式です。Compact Font Format (CFF) と組み合わせて使うように設計されており、CFF/Type2形式はType 1 OpenTypeフォントの基礎であり、Acrobat 3.0 PDFファイルへのフォント埋め込みに使われます。

Type 3

Type 3は、サブセットではなく完全なPostScript言語を使って定義されたグリフからなります。これにより、Type 1フォントでは不可能なシェーディング、色、フィルパターンの指定などが行えますが、ヒンティングはサポートしていません。このフォントの処理には完全なPostScriptインタプリタが必要なため、Adobe Type ManagerはType 3フォントをサポートできません。

Type 4

Type 4は、プリンタフォントカートリッジとプリンタのハードディスク上の永続的なストレージ用のフォントを作るために使われた形式です。文字の記述はType 1形式で表現されます。

Type 5

Type 5はType 4形式に似ていますが、PostScriptプリンタのROMへ格納されるフォントのために使われます。CROMフォント (圧縮ROMフォント) という別名でも知られています。

Types 9, 10, 11

CIDフォントは文字記述の方式によって3つの種別（CIDFontType番号）が定義されています。Type 1の方式を用いるものがCIDFontType 0、Type 3の方式を用いるものがCIDFontType 1、Type 42の方式を用いるものがCIDFontType 2です。これらはType番号も他のフォント形式とは区別されており、それぞれType 9, 10, 11と定められています。

Type 14

Type 14、もしくはChameleonフォント形式は、多数のフォントを少量の格納空間で表現するために使われます。Chameleonフォントのコアセットは1つのMaster Fontと、特定の書体の望んだ字形の集合を与えるためにMaster Fontを補正する方法を指定したフォント記述子の集合からなります。

Type 32

Type 32はバージョン番号2016かそれ以降のPostScriptインタプリタにビットマップフォントをダウンロードするために使われます。ビットマップ文字は直接インタプリタのフォントキャッシュへ転送され、そのためプリンタのメモリを節約できます。

Type 42

Type 42フォント形式はPostScriptファイル形式に埋め込まれたTrueTypeフォントです。これによりTrueTypeラスタライザを含むPostScript対応プリンタが可能になります。PostScriptインタプリタにはバージョン2010でオプション機能として初めて実装されました。

ファイル形式

CIDフォント

CIDフォントは、多数のグリフを扱うために設計されたPostScriptフォントファイル形式です。欧文以外の文字集合をサポートするために開発されました。CIDフォント形式はType 1フォント形式と組み合わせてCIDフォントで、もしくはType 2と組み合わせてCID-keyed OpenTypeフォントで使うことができます。

Compact Font Format (CFF)

Compact Font Format (CFF) は、Type 1より少ない格納空間を使うように設計されています。OpenTypeフォントはCFFテーブルにグリフのアウトラインを含むこともできます。CFFはType 2 charstring形式と組み合わせて使うように設計されており、Type 1 OpenTypeフォント形式の基礎となっています。

マルチプルマスターフォント

マルチプルマスターフォントは、アドビシステムズのType 1 PostScriptフォントの拡張です。現在ではOpenTypeにほとんど取って代わられています。マルチプルマスターフォントは1つかそれ以上の「マスター」を含み、利用者がそれらのフォントスタイルを連続する範囲の「軸」に沿って織り交ぜることを可能にします。

OpenType

PostScriptのグリフデータはOpenTypeフォントファイルに埋め込むことができますが、OpenTypeフォントはPostScriptアウトラインを使うものに限られません。

Adobe Font Metrics (AFM)

Adobe Font Metrics (AFM) ファイルは一般的なフォント情報とフォントメトリック情報を含みます。AFMファイルは通常Unix環境でのみ直接使われます。

文字集合

PostScriptフォントはあらゆる文字集合を符号化できますが、アドビが開発したフォントで使うために、アドビが特に開発した文字集合が存在します。

Adobe Western 2

大文字と小文字の字母、図形記号、アクセント文字、および約物からなる基本的な文字集合を含む、ほとんどの西欧言語をサポートします。

Adobe CE

クロアチア語、チェコ語、エストニア語、ハンガリー語、ラトビア語、リトアニア語、ポーランド語、ルーマニア語、セルビア語 (ラテン文字)、スロバキア語、スロベニア語およびトルコ語といった中央ヨーロッパ言語のサポートに必要な文字が含まれています。

Adobe-GB1

簡体字中国語の文字コレクションで、GB 1988-89、GB 2312-80、GB/T 12345-90、GB 13000.1-93、およびGB 18030-2005文字コード規格のサポートを提供します。

Adobe-CNS1

繁体字中国語の文字コレクションで、Big5とCNS 11643-1992文字コード規格のサポートを提供します。おもに香港ロケールで使われる文字を含んだ、多数のBig5拡張のサポートも含んでいます。

Adobe-Japan1

日本語フォントのために開発された文字集合で、JIS X 0208, ISO-2022-JP、Microsoft Windows 3.1 J、JIS X 0213:2004、JIS X 0212-1990、共同通信のU-PRESSなどに由来する文字集合をサポートします。

Adobe-Korea1

朝鮮語用の文字コレクションで、KS X 1001:1992とKS X 1003:1992文字コード規格、およびいくつかの選定されたメーカー拡張のサポートを提供します。

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