S-3 (航空機)

S-3 ヴァイキング：多用途艦上哨戒機の詳細

S-3 ヴァイキングは、アメリカのロッキード社（現ロッキード・マーティン社）が開発した艦上対潜哨戒機です。1960年代後半にアメリカ海軍がS-2トラッカーの後継機として開発を計画し、ロッキード社が製造契約を獲得しました。艦上機開発の経験が浅かった同社は、ヴォート社を協力企業として開発を進めました。

開発と特徴

1972年1月21日に試作機が初飛行し、S-3Aとして量産が開始されました。その後、輸送機型のUS-3Aや信号情報収集機型のES-3A シーシャドウなどの派生型が開発されました。

機体はほぼ四角断面で、大きな単垂直尾翼と高翼配置の主翼を持ちます。主翼には浅い後退角が付けられ、翼端部にはESM装置が装備されています。TF-34-GE-400ターボファンエンジンを2基搭載し、機体後部にはラムエアタービンをAPUとして搭載しています。艦上機としての特性から、主翼と垂直尾翼は折り畳み可能です。

MADセンサーは胴体内に引き込み式で、FLIRは機首左下面に内蔵されています。胴体内のウェポンベイや翼下のパイロンに魚雷や爆弾などを搭載でき、空中給油能力も有しています。

乗員は4名で、主操縦士、副操縦士兼センサー員、戦術航空士、音響センサー員で構成されます。座席は並列2列配置で、全て射出座席です。乗員区画は与圧されており、ECSにより居住性が向上しています。

運用と戦歴

S-3Aは1974年から部隊配備され、1975年以降にS-2トラッカーの後継として配備が進められました。1981年からはWSIPによりS-3Bへと改造され、電子機器や兵装運用システムが改良されました。

冷戦終結後は対潜哨戒任務から、空中給油や汎用攻撃任務に移行しましたが、F/A-18E/Fの配備が進み、S-3は退役しました。1991年の湾岸戦争では、爆撃や対艦ミサイル攻撃、SIGINT活動に従事しました。

2003年には、ジョージ・W・ブッシュ大統領が原子力空母エイブラハム・リンカーンを訪問する際に、S-3がネイビーワンとして使用されました。S-3は2016年1月11日にアメリカ海軍から完全に退役し、NASAで使用されていた機体もサンディエゴ航空宇宙博物館に展示されています。

艦載対潜機という特殊性から、海外への輸出は実現しませんでしたが、カナダのCP-140 オーロラはS-3と同じ対潜システムを導入しています。

導入計画

海上自衛隊はS-2の後継機としてS-3を検討していましたが、空母保有の意向を批判されました。韓国海軍もS-2の後継としてS-3の購入を希望しましたが、価格交渉が難航し、P-8Aを導入しました。

各型と派生型

YS-3：試作型
S-3A：初期量産型
S-3B：WSIPによる能力向上型
ES-3A：SIGINT機
KS-3A：空中給油機型（試作のみ）
KS-3B：空中給油機型（計画のみ）
US-3A：艦上輸送機型
概念実証型ヴァイキング：各種電子戦／試験機

主要諸元

乗員：4名
全長：16m
全幅：20.6m
全高：6.9m
エンジン：TF-34-GE-400ターボファン×2
最大離陸重量：23,831kg
最高速度：830km/h
航続距離：4,260km以上
武装：AGM-84、Mk.46魚雷など

登場作品

映画『ファイナル・カウントダウン』
映画『エアポート'77』
アニメ『エリア88』
漫画『沈黙の艦隊』
アニメ『マクロスゼロ』
アニメ『FUTURE WAR 198X年』

参考文献

『世界の傑作機 NO. 137 ロッキードS-3バイキング』
* Naval Technology＞S-3B Viking

もう一度検索