STS-35

STS-35ミッション：宇宙望遠鏡ASTRO-1の挑戦

STS-35は、スペースシャトル・コロンビアによって行われた10回目のミッションであり、スペースシャトル計画全体では38回目のミッションにあたります。このミッションの最大の目的は、スペースラブの観測施設であるASTRO-1を軌道に打ち上げ、天体観測を行うことでした。1990年12月、フロリダ州ケネディ宇宙センターから打ち上げられたこのミッションは、数々の困難を乗り越え、重要な科学的成果をもたらしました。

乗組員

STS-35の乗組員は以下の7名です。

船長: ヴァンス・ブランド（4度目で最後の宇宙飛行）
操縦手: ガイ・ガードナー（2度目で最後の宇宙飛行）
ミッションスペシャリスト1: ジェフリー・ホフマン（2度目の宇宙飛行）
ミッションスペシャリスト2: ジョン・M・ラウンジ（3度目で最後の宇宙飛行）
ミッションスペシャリスト3: ロバート・A・パーカー（2度目で最後の宇宙飛行）
ペイロードスペシャリスト1: サミュエル・デュランス（初の宇宙飛行）
ペイロードスペシャリスト2: ロナルド・パリーゼ（初の宇宙飛行）

さらに、バックアップとして以下の2名が選ばれていました。

ペイロードスペシャリスト1: ケネス・ノーシック（初の宇宙飛行）
* ペイロードスペシャリスト2: ジョン＝デヴィッド・バルトー（2度目の宇宙飛行）

このミッションは、当初STS-61-Eとして1986年3月に打ち上げられる予定でしたが、チャレンジャー号の事故により大幅に遅延しました。当初の船長であったジョン・マクブライドが引退したため、ヴァンス・ブランドが船長を務めることになりました。また、操縦手とミッションスペシャリストも交代がありました。

準備と打ち上げの困難

ASTRO-1は当初、チャレンジャー号の事故の直後に打ち上げられる予定でしたが、事故により計画は大幅に変更されました。このミッションは、広帯域[X線]][[望遠鏡]の打ち上げも加えられ、STS-35として再設定されました。しかし、打ち上げ準備はスムーズには進みませんでした。

コロンビアは1990年5月に発射台に移動しましたが、冷却システムの不具合により打ち上げが延期されました。その後、水素漏れが発見され、修理のためにオービタは組み立て棟に戻され、さらにオービタ整備施設に移送されました。問題のあったアンビリカルケーブルは、当時建設中だったエンデバーから借りて交換されました。

打ち上げはその後、何度も延期を繰り返しました。水素漏れの原因は、オービタ後部区画の再塗装と水素再循環ポンプにあると特定されました。これらの修理と再試験が終わるまで、打ち上げは行われませんでした。最終的には、12月2日の打ち上げまで、幾多の困難に見舞われました。夜間の打ち上げとなったのは、これがスペースシャトル史上9番目、コロンビアとしては2番目という遅さでした。このミッションは、スペースシャトル計画の中でも最も遅延した打ち上げの一つとなりました。

ミッションのハイライト

主要ペイロードはASTRO-1で、これは[スペースラブ]]システムによる5度目の打ち上げでした。その主目的は、紫外線とX線の波長での天体観測です。ASTRO-1には、ホプキンス紫外線望遠鏡]、ウィスコンシン[紫外線偏光計実験(WUPPE)、紫外線撮像望遠鏡]が搭載されていました。また、広帯域[X線[[望遠鏡]と2軸指向システム(TAPS)も搭載されました。

軌道に到達すると、乗組員は赤チームと青チームに分かれ、観測活動を開始しました。望遠鏡は打ち上げから11時間後に電源が入れられ、16時間後には観測が開始されました。紫外線観測では、シャトルの向きを調整する必要があり、ミッションスペシャリストが望遠鏡を目標の天体に向けるためにIPSを操作しました。また、ペイロードスペシャリストが観測機器を調整し、データを監視しました。

しかし、指向システムの精度やデータ表示ユニットの過熱などの問題が発生し、地上チームが望遠鏡の微調整を行う必要がありました。幸い、BBXRT-01は地上からの操作が可能であったため、影響を受けませんでした。これらの困難にもかかわらず、143時間にわたる観測活動で、130の天体に対して231回の観測が行われ、ミッションの目的の70%が達成されました。このミッションは、マーシャル宇宙飛行センターのスペースラブミッションぺレーションコントロールセンターが一部を運用した初めてのケースとなりました。

また、ミッション中に廃水配管の詰まりが発生しましたが、予備の容器を利用して解決しました。さらに、RCCスラスターの故障や、テレタイプ端末の障害も発生しました。

その他のペイロードと実験

このミッションでは、地上のアマチュア無線従事者とスペースシャトル内のアマチュア無線従事者との間の短波通信の実験も行われました。これは後のShuttle Amateur Radio Experiment (SAREX-II)の基礎となりました。SAREXでは、音声、低速度走査テレビジョン、データ、またはアマチュアテレビジョンの4つのモードで交信が行われました。また、ハワイにある空軍マウイ光学及びスーパーコンピューティング天文台の電子光学センサーの校正実験も行われました。

さらに、学生の科学、数学、技術に対する興味を喚起するためのSpace Classroom Program, Assignment: The Starsプロジェクトが実施され、ジェフリー・ホフマンが史上初の宇宙からの授業を行い、電磁スペクトルとASTRO-1に関する資料を説明しました。

着陸

当初の着陸予定地であったエドワーズ空軍基地の天候が悪化したため、ミッションは予定より1日早く終了しました。コロンビアは12月10日にエドワーズ空軍基地に着陸し、総飛行時間は8日間と23時間5分8秒でした。これはスペースシャトル計画で4度目の夜間着陸となりました。コロンビアは12月20日にシャトル輸送機でケネディ宇宙センターに戻りました。

まとめ

STS-35ミッションは、幾多の困難を乗り越え、天体観測という主要な目的を達成しました。宇宙望遠鏡ASTRO-1の運用を通じて、紫外線やX線による貴重なデータが得られ、今後の宇宙科学研究に大きく貢献することになりました。

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