ZPU-4

ZPUシリーズ：ソ連が生んだ対空機関銃

ZPUシリーズは、第二次世界大戦直後にソビエト連邦で開発された牽引式の対空機関銃です。本シリーズには、4連装のZPU-4を筆頭に、単装のZPU-1、2連装のZPU-2といった派生型が存在します。

開発の背景

ZPUシリーズは、歩兵用に開発された14.5mm口径のKPV重機関銃を対空用途に転用する形で開発されました。20mm未満の口径であるため、機関砲ではなく機関銃に分類されることもあります。

形式名の「ЗПУ」は、ロシア語で対空機関銃架を意味する「Зенитная Пулемётная Установка」の頭文字に由来し、ラテン文字転写でZPUとなります。

概要

ZPU-4とZPU-2は1945年に、ZPU-1は1947年に開発が開始され、1949年にはZPUシリーズ全てがソ連軍に制式採用されました。

特徴

銃身: 空冷式で、容易に交換可能
連射速度: 最大600発/分（実際には150発/分に制限）
弾薬: BS.41焼夷徹甲弾、BZT曳光焼夷徹甲弾、ZP曳光焼夷弾の3種類
装弾数: 1丁あたり1,200発

ZPU-4

4連装式のZPU-4は、四輪式の砲架を備え、射撃時にはジャッキを下ろして地面に固定します。射撃準備には15-20秒を要しますが、ジャッキなしでの応急射撃も可能です。

ZPU-2

2連装式のZPU-2は、二輪式の砲架を採用しています。前期型はトレーラーと三脚型砲架に分離する構造で、射撃時に砲架を地面に降ろす必要がありました。後期型は車輪が一体化しており、射撃準備が迅速に行えます。ZPU-2後期型の砲架は、ZU-23-2にも流用されています。

ZPU-1

単装式のZPU-1は、二輪式で、不整地での移動時には80kg以下の部品に分解して輸送できます。

実戦での活躍

ZPUシリーズは、朝鮮戦争で初めて実戦投入され、北朝鮮軍や中国人民志願軍によって使用されました。ベトナム戦争では、北ベトナム軍や南ベトナム解放民族戦線がアメリカ軍のヘリコプターに対する脅威として活用しました。

ソ連軍では、1960年代にZU-23-2 23mm大口径機関砲に更新されましたが、退役後は世界中の東側諸国やゲリラ組織に供与され、現在も各地の紛争で使用されています。湾岸戦争やイラク戦争ではイラク軍が使用し、九州南西海域工作船事件では、自沈した北朝鮮の工作船にZPU-2が搭載されていました。

また、北朝鮮が軍高官の粛清にZPUを使用しているとの情報もありますが、真偽は不明です。

弾薬

BS.41焼夷徹甲弾（API）
弾芯：炭化タングステン製
弾頭重量：64.4g
砲口初速：976m/秒
装甲貫通力：32mm（距離500m、入射角90°）
BZT曳光焼夷徹甲弾（API-T）
弾芯：鋼鉄製
弾頭重量：59.56g
砲口初速：1,005m/秒
曳光剤：距離2,000mまで燃焼
ZP曳光焼夷弾（I-T）
弾頭重量：59.68g

これらの弾薬は、ブルガリア、ルーマニア、ポーランド、エジプト、中国でも生産されています。

派生型

牽引型

ZPU-4
56式（中国製）
ZPU-2
58式（中国製）
ZU-23-2
ZPU-1

自走式対空砲

BTR-40A: BTR-40の兵員区画にZPU-2を搭載
BTR-152A: BTR-152の兵員区画にZPU-2またはZPU-4を搭載

また、各種装甲戦闘車両やトラックにZPUシリーズを搭載した即席の自走式対空砲も存在します。レバノン軍はM113装甲兵員輸送車にZPU-2またはZPU-4を搭載し、2011年のリビア内戦やシリア内戦では、ピックアップトラックにZPUを搭載したテクニカルが使用されました。

スペック

(ZPU-1/ZPU-2/ZPU-4の個別の性能は省略)

採用国

(採用国リストは省略)

関連項目

対空砲
機関砲
ZU-23-2
重機関銃
* KPV 重機関銃

もう一度検索