あぶくま洞

あぶくま洞：地底に広がる神秘の世界

福島県田村市にあるあぶくま洞は、阿武隈高原中部県立自然公園内に位置する鍾乳洞です。この洞窟は、長い年月をかけて自然が創造した芸術作品であり、訪れる人々を魅了し続けています。本稿では、あぶくま洞の発見から地質、洞内の詳細、そして関連する入水鍾乳洞までを詳しく解説します。

歴史

あぶくま洞は、1969年9月12日に石灰岩の採掘中に偶然発見されました。当初は「釜山鍾乳洞」と呼ばれていましたが、現在の釜山採石場の跡地で発見されました。発見当初は、深さ12mの縦穴と、北へ60m、南西へ15mの横穴からなる小規模なものでした。しかし、翌1970年3月に日本大学の探検隊が調査を行った結果、それまで終点とされていた場所からさらに奥に、あぶくま洞の本洞が発見されました。その後の探検により、総延長3,000m以上の洞窟であることが確認されました。一般公開は1973年6月に開始されました。

また、田村市滝根町には、古くから鬼穴という洞穴が知られており、この穴には豪族大多鬼丸の伝説が残っていました。1977年にこの鬼穴が深さ51mの縦穴であり、あぶくま洞東本洞と繋がっていることが判明しました。

地形

あぶくま洞が位置する田村市滝根町には、典型的なカルスト地形である「仙台平」が広がっています。この地域は阿武隈高原中部県立自然公園に指定されており、あぶくま洞や入水鍾乳洞の他にも、ドリーネや地下に水が流れ込む「猫じゃくし」といった地形が見られます。大滝根山南から湧き出した同一の水源によって形成された洞穴群は、「あぶくまケイブシステム」と呼ばれており、あぶくま洞と入水鍾乳洞は、このシステムの一部です。あぶくま洞は、つるべ落としと呼ばれる沢から水が地下に流れ込んで形成され、入水鍾乳洞はキッサ沢から地下に水が流入して形成されました。

地質

あぶくま洞がある地域には、滝根層と呼ばれる石灰岩層が南北4km、東西0.5〜1kmにわたって広がっています。この石灰岩は、約3億年前の石炭紀からペルム紀にかけて、有孔虫などの生物の遺骸が海底に堆積してできたものです。あぶくま洞を形成する石灰岩が結晶質に変成したのは、約8,000万年前の白亜紀後期と推定されています。この時期に、石灰岩が花崗岩などから接触変成を受け、一部が大理石へと変化しました。その後、広域的な隆起によって石灰岩層が地表に現れ、地下水による侵食が始まり、洞窟が形成されたのは第三紀末から第四紀にかけてのことと推定されています。

洞内

あぶくま洞の総延長は4,218.3mにも及びます。洞内の平均気温は14℃前後で、年間を通して安定しています。ただし、詳細に見ると、観光開発後の1975年と1977年のデータでは、上層部では夏に15〜17℃、冬に15℃、下層部では夏に14℃、冬に0〜10℃となっています。入り口付近では冬に氷柱が見られることがありますが、内部の水路や壁面は凍結しません。また、洞内の環境を利用してワインの貯蔵も行われています。

あぶくま洞は、鬼穴、あぶくま洞東本洞、奥本洞の3つのエリアに区分されています。あぶくま洞東本洞は1973年11月24日に発見され、奥本洞から湧き出す地下水は、大滝根山麓から浸透したもので、水温は9.3℃、pHは8.1の弱塩基性です。

鬼穴

鬼穴は、あぶくまケイブシステムの中で最も早くに形成された洞穴です。深さ51mの縦穴であり、あぶくま洞東本洞と連結しています。この鬼穴には、豪族大多鬼丸が財宝を隠したという伝説が残っています。伝説によると、平安時代初期にこの地を治めていた大多鬼丸は、朝廷軍との戦いで追い詰められ、この鬼穴で自害したとされています。鬼穴には、長さ100m、天井高60m以上の「大多鬼丸ホール」や「大多鬼丸の腰かけ石」など、伝説にちなんだ名前がつけられています。鬼穴は現在、入洞禁止となっており、ニホンテングコウモリ保護のため、穴には扉が設置されています。

洞穴生物

あぶくま洞には、多くの洞穴生物が生息しています。ヤスデ、カニムシ、トビムシ、カマドウマなどが確認されており、4種類のコウモリが生息しています。特に、絶滅危惧II類に指定されているニホンテングコウモリも生息しています。洞内は光合成が難しいため植物は生育できませんが、観光用のライトアップによって、壁面に蘚苔類や藻類が付着して生育しています。

観光

あぶくま洞は一部が観光洞として一般公開されており、一般コース600mと探検コース120mの観光コースが設定されています。洞内には特徴的なエリアや鍾乳石に様々な名前が付けられており、観光客を楽しませています。

施設情報

• - 開洞時間：3月1日〜11月30日は8:30〜17:00、12月〜2月は16:30閉洞
• - 休業日：なし
• - 駐車場：乗用車700台、観光バス30台（無料）
• - 料金：大人1200円、中学生800円、小学生以下600円

交通情報

• - 鉄道：JR磐越東線神俣駅よりタクシー
• - 自家用車：磐越自動車道またはあぶくま高原道路経由、小野ICより約15分

入水鍾乳洞

入水鍾乳洞は、あぶくま洞の北約4kmに位置する鍾乳洞で、1927年8月25日に発見されました。旧名は「滝根不動洞」といい、1934年12月に国天然記念物に指定されました。この鍾乳洞もあぶくまケイブシステムの一部で、キッサ沢の水が「猫じゃくし」から地下に流入して形成されています。入水鍾乳洞には、A、B、Cの3つの見学コースがあり、Aコースのみ水への備えなしで見学可能です。Bコース、Cコースは水深があるため装備が必要で、Cコースは原則予約制です。

あぶくま洞関連施設

あぶくま洞と入水鍾乳洞の周辺には、ふれあい館（星の村ふれあい館）や天文台（星の村天文台）などの関連施設が整備されています。

この地底の神秘、あぶくま洞を訪れてみてはいかがでしょうか。

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