カトリック浦上教会
カトリック浦上教会（浦上天主堂）
カトリック浦上教会は、長崎県長崎市に位置するカトリック教会で、その聖堂は一般的に「浦上天主堂」として知られています。この教会は、長崎市の重要な観光名所の一つであり、その歴史は長崎におけるキリスト教の歴史と深く結びついています。
歴史
浦上地区は、長崎の北に位置する農村であり、キリスト教伝来以来、カトリック信者の多い地域でした。江戸時代の異教禁制下では、隠れキリシタンの摘発が数回行われた場所でもあります（浦上崩れ）。鎖国解除後、長崎開港に伴い、欧米人が長崎港の東山手・南山手に居住区を設け、1865年に大浦天主堂が建てられました。これを知った浦上の住民は、大浦に赴任したベルナール・プティジャン神父に密会し信仰を告白、カトリック信仰が公にされるきっかけとなりました。
しかし、明治政府も当初はキリスト教を禁じ、弾圧を行いました（浦上四番崩れ）。浦上の住民は各地へ配流されましたが、禁制解除後に帰郷し、1879年に小聖堂を建設したのが浦上教会の始まりです。その後、大浦天主堂から専任の神父が派遣され、1880年に現在の地に移転しました。
大聖堂の建設と完成
1895年、大聖堂の建設が始まりました。フランス人宣教師フレノーが設計を担当し、大浦天主堂にも劣らない東洋一の聖堂を目指しました。建設には19年の歳月を要し、フレノー師の死後、ラゲ師が工事を引き継ぎました。
1914年3月17日、「信徒発見の日」からちょうど49年後、浦上天主堂は完成し献堂式が行われました。この煉瓦造りの聖堂は357坪の広さを誇りました。1925年には正面の高塔ドームが完成しました。
原爆による破壊と再建
1945年8月9日、長崎への原爆投下により、浦上天主堂は爆心地に近かったため、ほぼ全壊しました。当時、聖母被昇天の祝日を控えていたため、多くの信徒が教会に集まっており、主任司祭や助任司祭を含む全員が原爆の犠牲となりました。俳人の水原秋桜子は、被爆した天主堂の惨状を「麦秋の 中なるが悲し 聖廃墟」と詠んでいます。
戦後、浦上では犠牲者を弔う慰霊祭が行われ、天主堂の瓦礫は撤去されました。一部の遺構は原爆資料として保存されましたが、1958年には再建のため取り壊しが始まりました。1959年、旧天主堂の外観を模した浦上教会が再建されました。
その後
1962年、浦上教会は長崎大司教区の司教座聖堂となり、現在に至ります。1981年には、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が教会を訪れミサを捧げました。1980年代には改修工事が行われ、戦前の赤レンガ造りの外観が復元されました。
原爆遺構の保存問題
被爆した天主堂遺構の保存については、被爆直後から議論がありました。長崎市議会では保存を求める意見があったものの、資金援助の条件として天主堂遺構の撤去を求められたこと、また、市長の意向もあり、遺構の一部が平和公園に移設されたにとどまりました。浦上教会の信徒たちは、被爆した土地で再建することを強く望んだため、現在の形となりました。
残存する原爆遺構
- - 被爆マリア像: 1929年に祭壇に飾られた木製の聖母マリア像は、原爆で倒壊した瓦礫の中から頭部が発見されました。その後、様々な場所で保管されていましたが、1990年に浦上天主堂に返還され、現在も公開されています。
- - 天主堂の鐘楼: 「アンジェラスの鐘」とも呼ばれる鐘楼の一部は、原爆で吹き飛ばされて約30m離れた地点に落下しました。この遺構は、被爆当時のままの状態で保存され、長崎市によって最上位の被爆建造物として分類されています。
- - 馬利亜十五玄義図:西洋画の技法を用いて描かれた初期洋風画です。原爆で焼失しましたが、2011年ガラス乾板の一部が発見されました。
- - 拷問石と寒ざらしのツル: 浦上四番崩れの際、信徒たちが棄教を迫られた「拷問石」が境内に置かれています。特に岩永ツルという女性は、この石の上で過酷な拷問に耐え、信仰を貫き通しました。
現在の浦上教会
現在の浦上教会は、日本最大規模のカトリック教会であり、多くの信徒が信仰生活を送っています。教会の敷地内には、被爆資料を展示する資料室も併設されており、誰でも自由に見学できます。
所在地
〒852-8112 長崎県長崎市本尾町1-79
アクセス
周辺施設
浦上教会は、キリスト教信仰の歴史、原爆の悲劇、そして復興の象徴として、多くの人々に深い感銘を与え続けています。
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