ジノン

ジノンの歴史と意義

はじめに

ジノン（モンゴル語：ᠵᠢᠨᠦᠩ、転写：Jinong、または中国語の済農）は、元代から清代にかけて使用されていたモンゴルにおける重要な称号である。この称号は、元代において「晋王」と関連付けられるもので、特に北元時代にはオルドス地方の部族長により広く用いられた。

元代におけるジノン

元代では、クビライ・カンが即位した際、彼の3人の嫡子が広大な領域を統治するためにそれぞれ割り当てられた。モンゴリアはノムガンの支配下にあったが、彼の死去によりその権威が失われ、チンキムの長子であるカマラが「晋王」として新たに封じられることとなった。

「晋王」にはモンゴリアの統轄だけでなく、先帝の祭祀を行う重要な役目も付与されていた。カマラは、先代の霊を祀るためにモンゴル国のヘンティー県にあるブルカン・カルドゥンで祭祀を実施していた。この役割は後の皇帝イェスン・テムルによっても引き継がれ、称号は一家から一家へと移り変わっていったものの、その権威は長らくモンゴル社会で尊重され続けた。

北元時代とジノンの登場

「ジノン」という称号は、北元時代に顕著に現れた。タイスン・ハーンの弟アクバルジが初めてこの称号を名乗った。その後、アクバルジはハルグチュクとの連携によりエセン・ハーンの支持を受けたが、悲運にもエセンに命を奪われてしまった。しかし、その息子バヤン・モンケは逃げ延びて、その後ボルフという名前で再起を果たした。

バヤンは、明朝に知られる有力な指導者となり、オルドス地方の権威を確立する。チンギス・ハーンの廟もオルドスへと移され、このことが後の「ジノン」の権威に大きく寄与することとなる。

ジノンの伝承と影響

その後、ジノンはオルドス部族長の世襲称号として定着した。ダヤン・ハーン時代には息子ウルス・ボラトがこの称号を受け継ぎ、さらにバルス・ボラトが「サイン・アラク・ジノン」と称したことで、その名は一層広がりを見せた。こうした背景からも、ジノンは清代に至るまで権威ある称号として引き続き使用され続けた。

結論

ジノンの称号は単なる名ではなく、モンゴル帝国の歴史的背景と深く結びついている。この称号の伝承は、当時のモンゴル社会における権威の象徴であり、文化的なアイデンティティを形成する重要な要素であった。モンゴルの歴史を語る上で、この称号は避けられない存在であると言える。

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