ミズキ

ミズキ（水木）

ミズキ（学名: Cornus controversa var. controversa）は、ミズキ科ミズキ属に分類される落葉高木です。別名としてクルマミズキとも呼ばれます。特徴的なのは、水平に伸びる枝が階段状に見える樹形です。春には白い小花を密集させて咲かせ、秋には美しい紅葉を見せます。庭木として親しまれる一方、こけしの材料としても知られています。

名称の由来

和名「ミズキ」は、早春に地中から大量の水を吸い上げ、枝を切ると樹液が滴る様子から「水の木」が転じたとされています。別名のクルマミズキは、枝が輪状に分かれることに由来します。中国では燈臺樹と呼ばれています。

分布と生育環境

ミズキは、日本国内では北海道から九州まで広く分布しており、国外では朝鮮半島、台湾、中国、ヒマラヤ南部、南千島など、アジア地域に広く分布しています。主に山地や丘陵の日当たりの良い場所に生育します。

特徴

ミズキは、樹高10〜20メートル、幹の直径60〜100センチメートルに成長する落葉広葉樹です。成長が非常に早く、樹齢が古いものはあまり見られません。主幹はまっすぐ伸び、そこから水平に枝を広げ、さらに枝先が上に向かって扇状に広がります。この枝の広がりが繰り返されることで、階段状の独特な樹形を形成します。樹皮は灰色から汚灰色で、縦筋が入ります。若い樹皮は暗赤褐色で皮目が目立ちます。一年枝は赤色から紅紫色で、初めは細かい毛がありますが、次第に無毛になります。

早春には、樹液の吸い上げが非常に活発になり、樹皮を傷つけると多量の水が溢れ出します。樹皮には赤い筋ができることがあり、これは樹液に含まれる糖分を餌に、空気中の酵母やカビが繁殖した結果です。

葉は枝先に集まって互生し、広卵形から広楕円形で、縁は滑らかで先端は尖っています。葉の形はサクラに似ています。葉の裏面はやや白色を帯び、短い毛があります。葉脈は弓形に曲がったものが5〜9対あり、隆起しています。春の芽出しは透明感のある緑色で、葉脈がよく目立ちます。秋には、黄色から山吹色を基本に、赤色や赤紫色など、様々な色に紅葉します。このように多彩な紅葉を見せる木は珍しいとされています。

花期は晩春から初夏にかけてで、新枝の先に散房花序を出し、直径7〜8ミリメートルの白い4弁花を多数咲かせます。秋には直径7〜8ミリメートルの球形の果実がなり、最初は赤色、後に黒紫色に熟します。果実は野鳥、特にヒヨドリが好んで食べます。

冬芽は長さ7〜12ミリメートルの長卵形で、先がやや丸く、5〜8枚の芽鱗に包まれています。枝先につく頂芽は濃紅色で、側芽は非常に小さいです。葉痕は上向きで小さく、維管束痕が3つあります。

利用

ミズキは、庭木や公園樹として広く利用されています。材は白色で柔らかく、緻密であるため、建築材や器具材、薪炭材として使われます。特に、こけし材として有名で、木肌の美しさと割れにくい性質から、東北地方で多く使われています。また、正月の祝箸に使われることもあります。かつて江戸時代には、奥多摩産のミズキが箸材として利用され、植林も行われていたと伝えられています。

文化

アイヌの人々は、ミズキの材を薄く削ってイナウ（神への供物）を作り、祭事に使用しました。木肌が白いミズキのイナウは、天上界で銀に変わると信じられていたそうです。また、サケを捕獲する際に、頭を叩いて殺す棒にもミズキの材が使われていました。

一部の地域では、落葉期の枝に繭玉を飾る風習があります。北海道の札幌では、冬に赤くなるミズキの枝を正月の飾り物として使い、豊作を祈願しました。早春に水を吸い上げるミズキの枝先が上を向くことから、運気が上向くことを願ってミズキの枝を使ったという説もあります。

ミズキの花言葉は「成熟した精神」「耐久」です。

下位分類

ミズキには、以下の亜種や変種があります。

タカネミズキ (Swida controversa (Hemsl. ex Prain) Soják var. alpina (Wangerin) H.Hara ex Noshiro):
本州の日本海側の多雪地帯に生育し、低木で葉は円形です。
イシヅチミズキ (Swida controversa (Hemsl. ex Prain) Soják var. shikokumontana (Hiyama) H.Hara ex Noshiro):
四国の山地に生育します。

ミズキ属の植物

ミズキ属には、他にも以下のような植物があります。

クマノミズキ (Swida macrophylla (Wall.) Soják):
本州、四国、九州の山地に生え、葉は対生で卵状楕円形です。

参考文献

亀田龍吉『落ち葉の呼び名事典』世界文化社、2014年。
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社、2014年。
田中潔『知っておきたい100の木：日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社、2011年。
辻井達一『日本の樹木』中央公論社、1995年。
西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』学習研究社、2009年。
林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年。
平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年。
佐竹義輔ほか 編『日本の野生植物 木本I』平凡社、1989年。

関連項目

木の一覧

外部リンク

* ミズキ：植物雑学事典

もう一度検索