ヨグ＝ソトース

ヨグ＝ソトース：クトゥルフ神話の超越的存在

ヨグ＝ソトースは、H・P・ラヴクラフトが創造したクトゥルフ神話に登場する、最強にして最も謎めいた存在です。単なる「存在」ではなく、「空虚」や「無」と表現されることも多く、その実体はいまだに不明瞭な部分が多く残されています。

時間と空間を超越する存在

ラヴクラフトの記述や、T・S・ミラーの学術論文によれば、ヨグ＝ソトースは汎神論的な存在と解釈できます。あらゆる時間、空間、そして存在そのものが、ヨグ＝ソトースの一部を成していると言えるでしょう。過去、現在、未来はすべて同時に存在し、旧支配者や他の「外なる神」さえも、その一部に含まれています。ラヴクラフトの『銀の鍵の門を越えて』では、「始まりも終わりもない」存在として描写され、人間の概念で捉えられるあらゆるものが、ヨグ＝ソトースにおいては同時存在している様子が示唆されています。

ヨグ＝ソトースは、しばしば「あらゆる大地、あらゆる宇宙、あらゆる物質を超越する、最極の空虚」、「無」、「限りのない空虚」、「存在、大きさ、範囲という概念のことごとくを超越するもの」などとも形容されます。これは、人間の理解を超えた、究極の超越性を示していると言えるでしょう。

多様な姿と異名

ヨグ＝ソトースは、明確な姿形を持たない超越的存在です。しかしながら、様々な作品において、その姿は「絶えず形や大きさを変える虹色の輝く球の集積物」、「一つ一つが太陽のように強烈な光を放つ玉虫色の球体の集積物」などとして描写されています。一方で、その表面の下には、触腕を持つ粘液状の怪物がいるという説もあります。これらの描写は、ヨグ＝ソトースの理解しがたい本質を暗示していると言えるでしょう。

ヨグ＝ソトースには、「門にして鍵」、「全にして一、一にして全なる者」、「戸口にひそむもの」など、多くの異名が存在します。これらの異名は、ヨグ＝ソトースが次元や世界の境界、そしてあらゆる存在の根源に関わっていることを示唆しています。

旧支配者との関係性

オーガスト・ダーレスによるクトゥルフ神話の体系化において、ヨグ＝ソトースは旧支配者、外なる神の一柱として位置づけられています。『ダニッチの怪』では、人間の女性との間に子をなしたとされ、その子孫は後世に影響を与え続けています。さらに、リチャード・L・ティアニーの作品では、ヤハウェの正体がヨグ＝ソトースであるという解釈も存在し、ヨグ＝ソトースとイエスは宇宙の破壊と解放を企てているとされています。

ヨグ＝ソトースの系譜は、複数の作家によって異なった解釈がなされています。ラヴクラフトの手紙では、アザトースの子として、無名の霧から生まれたとされています。一方、リン・カーターの解釈では、アザトースの子ではありますが、兄弟は異なっています。クトゥルフ、ハスター、ヴルトゥーム、ツァトゥグァなどは、ヨグ＝ソトースの異母子とされている場合もあります。

しかし、ヨグ＝ソトースが邪神達の祖であるという設定は、多くの作家によって共有されており、その父なる男神としての地位は揺るぎません。

作品におけるヨグ＝ソトース

ヨグ＝ソトースは、『チャールズ・ウォードの奇怪な事件』『ダニッチの怪』『銀の鍵の門を越えて』『暗黒の儀式』『丘の夜鷹』など、多くのラヴクラフト作品や、後続作家による作品に登場します。これらの作品において、ヨグ＝ソトースは、直接的に描写される場合もあれば、その存在が背景として暗示される場合もあります。

結論

ヨグ＝ソトースは、その圧倒的な力と謎めいた存在感で、クトゥルフ神話において中心的な役割を担っています。時間と空間を超越するその性質、多様な姿と異名、そして他の旧支配者との複雑な関係性は、読者に無限の想像力を掻き立て、解釈の余地を残しています。その真の姿と目的は、永遠の謎として、読者の想像力を刺激し続けるでしょう。

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