九条基家

九条基家：鎌倉時代の公卿、その生涯と歌業

九条基家（くじょう もといえ）は、鎌倉時代中期に活躍した公卿・歌人です。太政大臣を務めた九条良経を父に持ち、摂関家という名門に生まれました。後九条内大臣、または鶴殿とも呼ばれました。

生い立ちと官歴

基家は、父・良経の三男として誕生。幼くして父を亡くしたため、後鳥羽上皇の猶子となり、藤原忠綱の元で養育を受けました。また、外祖父である松殿基房からも公事に関する故実を学びました。

建保3年（1215年）に正五位下に叙せられ、侍従に任ぜられたのを皮切りに、右近衛中将、従四位下へと昇進。その後も、従三位、正三位、権中納言、従二位、権大納言と、摂関家の子弟として順調に官位を上げていきました。

寛喜3年（1231年）には、右近衛大将であった西園寺実氏が、基家を越えて内大臣に任ぜられたことに不満を抱き、籠居する出来事がありました。摂政の子であり、母は関白の娘、兄は現任の摂関という家柄に加え、歌道にも熱心に取り組んでいた基家にとって、この人事は看過できるものではなかったのでしょう。

嘉禎2年（1236年）に大納言に任ぜられ、嘉禎3年（1237年）には念願の内大臣に昇進。しかし、翌暦仁元年（1238年）には内大臣を辞任し、以後、薨去するまで出家することなく、「前内大臣」として歌壇で活躍しました。また、ライバルであった衣笠家良よりも先に内大臣となったため、辞任後も家良よりも序列が上でした。

歌人としての活動

承久の乱の後、京の歌壇で活躍する一方、隠岐国に配流されていた後鳥羽上皇と連絡を取り合い、遠島歌合などにも参加しました。藤原定家の死後、その子である為家と対立しましたが、弘長2年（1262年）には『続古今和歌集』の撰者の一人に選ばれました。また、「弘長百歌」「弘安百歌」に参加し、「和漢名所詩歌合」「雲葉和歌集」を撰出するなど、歌人として精力的な活動を展開しました。

基家の歌風は華麗でありながらも古風を好み、葉室光俊に近い立場を取っていました。「新時代不同歌合」の編者であるという説もあり、また、「古来歌合」を編纂したとも言われています。「新三十六歌仙」の一人として『新三十六人撰』に10首が選ばれており、家集も存在しましたが、現在は散逸しています。

早くから作歌に熱心であったにもかかわらず、藤原定家が単独で撰者をつとめた『新勅撰和歌集』に1首も採られなかったことが、歌人としての基家の活動に影響を与えたのかもしれません。定家は、基家よりも衣笠家良を評価していたようです。

人物

『源氏物語』の注釈書である『幻中類林』の著者であるという説があります。

逸話

『徒然草』第223段には、基家が鶴殿内大臣と呼ばれているのは、鶴を飼っていたからではなく、幼名が「鶴殿」であったためである、という俗説を正す記述があります。

九条基家は、公卿として、そして歌人として、鎌倉時代中期を生きた人物でした。その生涯は、名門の家に生まれた者の宿命と、歌道への情熱、そして人間関係の複雑さが interwoven されたものであったと言えるでしょう。

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