女医

女医について

女医とは、女性の医師を指します。医学の世界における女性の活躍は、古代から現代に至るまで、その役割と立場が大きく変化してきました。ここでは、女医の歴史、現状、課題について詳しく見ていきましょう。

女医の統計

厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」によると、2005年末時点で日本の医師数は270,371人でした。病院や診療所で働く医師は256,668人で、そのうち女性医師は42,040人、全体の16.4%を占めています。この数字は、医療現場における女性医師の割合がまだ低いことを示唆しています。

歴史の中の女医

古代から中世の医学では、男性が理論的な医学を学ぶことが多かった一方、女性は身体機能への理解や薬草を用いた実用的な医療に精通していました。古代ギリシャでは、「産婆医者」「臍帯を切る女」「女医」という3つのカテゴリーで女性医療従事者が区別されていました。古代ローマでも、医療知識を持つ女性はレベルに応じて呼び分けられ、特に産科、婦人科、小児科に関わる女医は尊敬の対象でした。

ヨーロッパでは、中世の暗黒時代に医学の中心が修道院に移ると、婦人科の研究は羞恥心から後退しました。大学では女性の入学がほとんど認められず、医学は男性聖職者のものとなりました。しかし、10-13世紀に一般信徒に開放されたサレルノ大学では女性の入学が許され、中世後期につながる婦人科や小児科の文献が残されました。12世紀以降、専門教育を受けた女医と民間医療を行う産婆が分化し始めました。

日本における女医の歴史

日本の歴史においても、女医の存在は古くから確認できます。平安時代に記された「令義解」には「女医」の語が見られ、制度として規定されていました。

1875年に医術開業試験制度が法制化される以前から、榎本住をはじめとする女性医師が開業していましたが、国家資格を取得した初の日本人女性医師は、1885年に合格した荻野吟子です。その後、1886年に生沢くの、1887年に高橋みつが続き、明治末までに医籍登録された女性医師は約240名に達しました。

1903年に医籍登録した井上トモは、クリーブランド医大からミシガン大学医学部を卒業し、日本で開業しました。1912年にミシガン大学理事のレヴィ・ルイス・バーバーが極東を訪れた際、中国で働く同大学出身のアメリカ人女医や井上の存在を知り、帰国後にアジア女性のための奨学金制度を設立しました。

女医の団体としては、1902年に日本女医会が設立され、現在も活動を続けています。

近年の女医を巡る問題

2018年には医学部不正入試問題が発覚し、女性受験者が不利な扱いを受けていたことが明らかになりました。公益社団法人全日本病院協会の2021年版「病院のあり方に関する報告書」では、女医は当直業務への関与が少ない、地方勤務者が少ない、選択診療科に偏りがあるなどの理由から、医師不足解消への貢献度が低いと指摘されています。

著名な女医たち

歴史に名を残す著名な女医は数多くいます。以下にその一部を挙げます。

野中婉 - 江戸時代の女医
榎本住 - 江戸時代の女医
楠本イネ - 江戸時代の女医、シーボルトの娘
高場乱 - 江戸時代の女医
荻野吟子 - 日本初の公許女医
生沢くの - 日本で2人目の公許女医
高橋みつ - 日本で3人目の公許女医
丸茂むね - 日本初の女性病院院長
吉岡彌生 - 日本初の女子を対象とする旧制医学専門学校の創立者
右田アサ - 日本初の女性眼科医
宇良田唯 - ドイツの医学士号を取得した初の日本女性
宮川庚子 - 日本初の医学博士号取得者

まとめ

女医は、古代から現代に至るまで、医学の発展に大きく貢献してきました。しかし、依然としてその数は少なく、医療現場における女性医師の活躍を阻害する要因も存在します。医学部における女性差別や、出産、育児との両立の難しさなど、課題は山積しています。今後の医療現場において、女性医師がより一層活躍できるよう、社会全体での理解と支援が求められます。

もう一度検索