山内上杉家

山内上杉家：関東を揺るがした名門の興亡

山内上杉家は、室町時代に関東地方に割拠した上杉氏の一流であり、その歴史は関東の政治、軍事を語る上で欠かせない存在です。初代関東管領・上杉憲顕を祖とし、鎌倉の山内に居館を構えたことがその名の由来となっています。

室町幕府との繋がり

上杉家は、室町幕府の初代将軍・足利尊氏の生母・上杉清子を輩出しており、幕府との関係は非常に密接でした。清子は上杉頼重の娘であり、この繋がりが上杉家に関東管領という重職が世襲される基盤となりました。公家である藤原氏の支族でありながら、武家の棟梁である足利将軍家との姻戚関係を築いたことは、上杉家が室町時代を通じて関東で勢力を拡大する上で大きな意味を持ちました。

関東管領としての役割

正平18年（1363年）に足利尊氏の次男・基氏が鎌倉公方として関東に下向すると、上杉憲顕は関東公方の執事、後の関東管領として公方を補佐し、関東の政務を取り仕切りました。一時は観応の擾乱で没落するも、後に復帰。関東における上杉家の地位を確立しました。しかし、鎌倉公方との対立や、一族内部の抗争が、その後の上杉家の命運を左右することになります。

戦乱の時代

応永23年（1416年）の上杉禅秀の乱後、山内上杉家は上杉氏の宗家としての地位を確立し、関東管領をほぼ独占。上野を本拠に、武蔵、伊豆へと勢力を広げました。しかし、永享の乱を境に鎌倉公方家との対立が深刻化。享徳の乱では事実上の敗北を喫し、さらに長尾景春の乱を機に扇谷上杉家が台頭し、関東管領の座を巡る抗争が激化しました。

山内上杉家はこれらの戦いを乗り越え、関東管領の地位を守りましたが、越後守護代・長尾為景の反乱や、当主・上杉顕定の戦死など、相次ぐ内憂外患に見舞われます。また、伊豆に興った後北条氏の勢力が拡大し、山内上杉家は圧迫を受けることになります。

上杉謙信への家督譲渡とその後

後北条氏に対抗するため、関東管領・上杉憲政は扇谷家と和睦を結びましたが、天文15年（1546年）の河越夜戦で大敗。勢力を失った憲政は、越後の長尾景虎（後の上杉謙信）を頼り、永禄4年（1561年）に家督と関東管領職を譲りました。これにより、大名上杉氏の家名は長尾氏によって存続することになります。

上杉謙信は関東御征西を行い、小田原城を包囲するなど、関東における上杉家の勢力回復に尽力しました。しかし、御館の乱を経て、上杉家は上杉景勝の時代に関ヶ原の戦いで西軍に付き敗北。出羽国米沢へ移封されることになります。

米沢藩主として

関ヶ原の戦い後、上杉景勝は出羽国米沢へ移封されましたが、その後も大名としての地位を維持し、幕末まで存続しました。明治時代には華族に列し、伯爵を授けられています。

山内上杉家を支えた家臣たち

山内上杉家は、多くの家臣によって支えられていました。上野衆、武蔵衆を代表する長尾氏、横瀬氏、大石氏、成田氏などがその例です。彼らは山内上杉家のために戦い、その勢力拡大に貢献しました。

主要拠点

山内上杉家の主要な拠点としては、菅谷城、鉢形城、平井城などが挙げられます。特に平井城は上野における本拠地として重要な役割を果たしました。近年の研究では、板鼻（現在の群馬県安中市）に上野国の守護所があったと推定されています。

山内上杉家は、室町時代から戦国時代にかけて、関東地方において大きな影響力を持った名門でした。その興亡の歴史は、関東の歴史を理解する上で欠かせない要素と言えるでしょう。

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