平山省斎

平山省斎：幕末の幕臣から明治の神道家へ

平山省斎（ひらやま せいさい）は、文化12年（1815年）に生まれ、明治23年（1890年）に没した、幕末から明治にかけて活躍した人物です。彼は、幕臣（旗本）として幕末の動乱期に重要な役割を果たし、明治維新後は神道家として新たな道を切り開きました。本姓は黒岡、名は敬忠、字は安民、通称は謙二郎、号は省斎、素山道人といいました。官途は従五位下図書頭。

生涯

陸奥国三春藩士、黒岡活円斎の子として生まれた平山省斎は、20歳の時に江戸に出て、叔父である奥祐筆組頭の竹村七佐衛門宅に寄宿し、安積艮斎に師事して漢学や国学を学びました。嘉永3年（1850年）には、小普請平山源太郎の養嗣子となり家督を継ぎ、翌年には徒目付となります。

安政元年（1854年）、ペリーが再来航した際には応接掛となり、米艦から出て川崎近辺を徘徊していた乗員ビッティンガーを追跡し送還しました。同年、松前蝦夷地用掛の堀利煕に従って陸奥国三厩に滞在していた際には、急遽箱館へ出張し、遊歩区域協定を迫るペリーの主張を退けるという功績を挙げました。これらの功績により、安政2年（1855年）には下田表御用を賞され、金2枚と時服2襲を授与されました。

安政4年（1857年）には、蕃書調所設置の勤労を賞され、貿易事項取調のため長崎奉行水野忠徳らに従い長崎へと赴き、日露追加条約を審議しました。しかし、将軍継嗣問題では一橋派とされたため、安政5年（1858年）の安政の大獄で免職となり、差控を命じられました。

慶応元年（1865年）に二ノ丸留守居より目付として復帰し、翌慶応2年（1866年）の第二次長州征討においては、老中小笠原長行の小倉口陣営にあって、小倉藩からの援兵の要求を時期尚早として却下したため、小倉城落城を招いてしまいます。その後、将軍徳川慶喜の側近としてこれを補佐し、将軍名代として熱海に避寒中のフランス公使ロッシュを訪ね、大坂城中における援幕単独会見の要求および徳川昭武のパリ万博派遣を告げました。慶応3年（1867年）には若年寄並兼帯外国惣奉行となりましたが、慶応4年（1868年）の鳥羽・伏見の戦いで幕軍が惨敗した後、薩長勢力に対し強硬論を主張したために免職となり、逼塞の処分を受けました。

明治維新後は慶喜に従って静岡に移りましたが、その後は神道家として活動を開始し、明治5年（1872年）に教導職となり、明治8年（1875年）には日枝神社祠官、翌年には氷川神社大宮司となりました。明治12年（1879年）に大成教会を結集して教長となり、明治15年（1882年）には敬神愛国を唱える神道大成派（神道大成教）として独立し、初代管長となりました。また、御岳教の別派独立に際してはその管長を兼ねました。著書に『平山省斎遺稿抄』があります。

人物評価

平山省斎は、幕末の激動期において、幕臣として様々な要職を歴任し、外交交渉や国内政治に深く関与しました。その一方で、明治維新後は神道家として新たな道を歩み、教派神道の発展に貢献しました。彼の生涯は、幕末から明治への移行期における日本の社会と文化の変容を象徴するものと言えるでしょう。

参考文献

井上順孝『教派神道の形成』（弘文堂　1991年）
朝日日本歴史人物事典（朝日新聞出版）

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