徳川斉荘

徳川斉荘（とくがわ なりたか）

徳川斉荘は、江戸時代後期の大名であり、田安徳川家と尾張徳川家の当主を歴任しました。文化7年（1810年）に、第11代将軍徳川家斉の十二男として生まれ、幼名を要之丞と称しました。第12代将軍徳川家慶は実兄にあたります。

田安家当主

文化10年（1813年）、御三卿の一つである田安家の当主で、叔父にあたる徳川斉匡の養子となります。天保7年（1836年）には斉匡の隠居により田安家の家督を相続しました。斉匡には多数の子がいましたが、世子であった匡時が病弱を理由に廃嫡されたため、斉荘が後を継ぐこととなりました。また、斉荘は、養父斉匡の娘である猶姫を正室に迎えています。

尾張家当主へ

天保10年（1839年）、尾張徳川家の当主であった異母弟の徳川斉温が急逝したため、斉荘は幕府の命により末期養子として尾張家の家督を継ぐことになります。この際、田安家からは家老の朝倉播磨守、御用人格の興津甚左衛門、用人の梶田五郎兵衛らが側近として斉荘に従い尾張家に入りました。この養子入りは、幕府の強引な決定によるもので、尾張藩内では大きな反発が起きました。先代斉温の遺言もなく、隠居していた先々代の斉朝にも相談がなかったため、不満が高まりました。藩内では高須藩主松平義建の次男である秀之助（後の徳川慶勝）を擁立する動きもみられました。御附家老の一人である竹腰正富が藩内の説得に当たったものの、反発した藩士たちは「金鉄組」を結成し、これが後の幕末における反幕・尊皇攘夷派の動きにつながり、竹腰家を中心とした佐幕派との対立を招くことになります。

藩主としての姿勢

尾張藩の財政は、江戸城本丸用材を献上したことなどにより悪化しており、斉荘は倹約令を出して対応しようとしました。しかし、斉荘自身は遊興に耽る事が多く、財政の苦境を顧みなかったと言われています。天保13年（1842年）には、幕府から藩政停滞について警告を受けるほどでした。藩政に真剣に取り組むことはなく、茶道に熱中し、裏千家に入門して11代千宗室（玄々斎）から奥義を授けられています。

子女

斉荘には6人の子女がいました。次男の昌丸は、斉荘の死後に出生し、一橋徳川家を相続しましたが、間もなく夭折しました。女子のうち二人は成人し、大名家に嫁いでいます。次女の利姫は、徳川斉彊の養女として広島藩主浅野慶熾の正室となりました。

官職と位階の履歴

文化9年（1812年）5月28日：父である将軍徳川家斉の御台所近衛寔子の養子となる。
文化10年（1813年）12月25日：田安斉匡の養子となる。
文政3年（1820年）6月5日：元服し、父・家斉から偏諱を与えられ斉荘と名乗る。従三位に叙し、左近衛権中将に任官、右衛門督を兼任。
文政12年（1829年）7月5日：参議に補任。
天保7年（1836年）8月21日：田安徳川家の当主となる。
天保8年（1837年）8月28日：権中納言に転任。
天保10年（1839年）3月27日：尾張藩主となる。
天保10年（1839年）12月16日：従二位に昇叙し、権大納言に転任。
弘化2年（1845年）7月6日：薨去。法名は、大覚院殿性譽惟徳源懿大居士。墓所は名古屋市東区筒井の徳興山建中寺。

系譜

父：徳川家斉
母：速成院
養父：徳川斉匡（田安家）
養父：徳川斉温（尾張家）
正室：猶姫（貞慎院、徳川斉匡の娘）
側室：お八百（善行院、宮田氏）
次男：徳川昌丸（一橋徳川家第8代当主）
次女：利姫（寿操院、徳川慶臧婚約者、慶臧死後に浅野慶熾室）
四女：釧姫（松平乗命室）
側室：お登佐（笹本氏）
側室：お久米（戒光院、本間氏）
* 養子：徳川慶臧 - 徳川斉匡の十男

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