徳川斉匡

徳川斉匡（とくがわ なりまさ）

徳川斉匡は、江戸時代中期から後期にかけての武士であり、御三卿の一つである田安家の第3代当主です。江戸幕府11代将軍・徳川家斉の異母弟にあたります。

生涯

安永8年（1779年）4月19日、一橋家第2代当主・徳川治済の五男として生まれました。母は丸山氏です。天明7年（1787年）6月13日、第2代当主・治察の死去以来「明屋敷」となっていた田安家の屋敷と領地を相続しました。御三卿の創設者である徳川吉宗の意向に反し、将軍の庶子ではなく御三卿の庶子が田安家を相続したことに対し、御三家の徳川宗睦（尾張家）や徳川治保（水戸家）は強く反発しましたが、老中・松平定信（治察の実弟）が、養母・宝蓮院（田安家初代当主・宗武の正室）の遺志であるとして説得しました。

文化10年（1813年）12月25日には、第11代将軍・家斉の十二男である斉荘を養子に迎えます。

天保8年（1837年）10月、従一位に昇叙しました。父の治済と同様、御三卿として生前に従一位に叙されるのは異例でした（これは将軍家斉にとって、異母弟ではあるものの、当時唯一生存していた兄弟であったためと考えられます）。

斉匡は兄・家斉と同様に多くの子女に恵まれ、その縁組と財政は幕府を悩ませました。正室・裕宮貞子との間に生まれた嫡子・匡時のほか、5代当主となる慶頼（側室・篠﨑氏の子）、斉位、慶壽、松平慶永、慶臧など多くの子女がいましたが、天保7年（1836年）8月、匡時が病弱であることを理由に幕命により廃嫡され、斉匡は隠居しました。第4代当主となったのは養子の斉荘で、斉荘が尾張藩主に転出した後、実子の慶頼が5代当主となり、先々代当主で実父の斉匡が後見を務めました。なお、以後の田安家は慶頼の血筋で今日まで続いています。

嘉永元年（1848年）6月8日に死去しました。享年70歳（満69歳没）。

官歴

1787年（天明7年）
6月13日：田安徳川家の家督を相続。
7月5日：田安邸に定住。
1790年（寛政2年）10月15日：元服し、将軍で兄にあたる徳川家斉の偏諱を受けて斉匡と名乗る。従三位・左近衛権中将兼右衛門督に叙任。
1808年（文化5年）12月1日：参議に補任。
1819年（文政2年）11月15日：権中納言に転任。
1827年（文政10年）6月1日：従二位に昇叙し、権大納言に転任。
1837年（天保8年）10月28日：従一位に昇叙し、権大納言如元。
1847年（弘化4年）8月20日：出家し、入道を称す。三玄斎と号す。
1848年（嘉永元年）6月8日：薨去。法名は惇宗院戒徳巖明。

系譜

父：徳川治済（1751年 - 1827年）
母：丸山氏
正室：貞子女王（1782年 - 1825年） - 閑院宮美仁親王の娘
長女：近姫（1800年 - 1830年） - 徳川斉礼の正室
三女：静姫（1803年）
次男：匡時（1805年 - 1839年）
七女：猶姫（1807年 - 1872年） - 徳川斉荘の正室
側室：筧氏
長男：剛之丞（1799年 - 1800年）
次女：包姫（1800年 - 1801年）
側室：八木氏
四女：鑅姫（1805年 - 1860年） - 久松松平定通の正室
八女：鐐姫（1808年 - 1890年） - 酒井忠発の正室
十四女：愛姫（1818年 - 1832年） - 徳川斉温の正室
五男：慶壽（1823年 - 1847年） - 一橋徳川家7代
六男：聰之助（1824年 - 1825年）
側室：河合氏
五女：理照院（1807年）
三男：謙三郎（1814年 - 1817年）
側室：斎藤氏
六女：鋭姫（1807年 - 1820年） - 津軽信順の婚約者
九女：欽姫（1809年 - 1851年） - 津軽信順の正室
側室：唯心院（1794年 - 1858年） - 奥医師篠崎三伯の養女、実武藤三益の娘、実名「りを」
十女：猗姫（1811年 - 1817年） - 松平定和の婚約者
十三女：三千姫（1818年 - 1820年）
十五女：千重姫（1821年 - 1860年） - 越智松平武成の正室
九男：慶頼（1828年 - 1876年） - 田安徳川家5・8代
側室：高月氏
十一女：恒姫（1815年 - 1819年）
十二女：歳姫（1816年 - 1818年）
四男：斉位（1818年 - 1837年） - 一橋徳川家5代
十六女：純姫（1821年 - 1906年） - 立花鑑寛の正室
十七女：弥姫（1823年 - 1826年）
七男：郁之助（1825年 - 1826年）
側室：青松院（1796年 - 1871年）
十八女：至姫（1824年 - 1826年）
八男：松平慶永（1828年 - 1890年） - 福井藩主
十九女：筆姫（1830年 - 1886年） - 鍋島直正の継室
十男：慶臧（1836年 - 1849年） - 尾張藩主
養子
* 斉荘（1810年 - 1845年） - 田安徳川家4代、のち尾張徳川家12代、徳川家斉の十二男

出典

『徳川諸家系譜3』

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