球磨型軽巡洋艦

球磨型軽巡洋艦について

球磨型軽巡洋艦は、日本海軍が建造した二等巡洋艦（軽巡洋艦）の艦級であり、同型艦は5隻存在します。この艦級は、いわゆる5500トン型軽巡洋艦の最初のグループに該当します。天龍型軽巡洋艦の運用経験を踏まえ、船体の大型化、砲力の強化、そして速力の向上が図られました。

開発の背景

日本海軍は天龍型軽巡洋艦を運用する中で、その改良型を模索していました。天龍型を基に、峯風型駆逐艦で構成される水雷戦隊の旗艦としての運用を想定し、速力を36ノットに引き上げ、居住性や凌波性の改善も図られました。これは、アメリカ海軍が計画していたコンステレーション級巡洋戦艦に対抗するための措置でもありました。

当時、排水量5,000トン級は各国で軽巡洋艦の標準クラスとされており、球磨型もこの基準に沿って設計されました。

計画の変遷

当初、日本海軍は3,500トン型（天龍型）と7,200トン型の巡洋艦を計画していましたが、天龍型では高速力が不足し、7,200トン型は水雷戦隊旗艦としては大型すぎるという判断から、より小型の5,500トン型9隻に変更されました。このうち最初の5隻が球磨型として建造されました。

艦型の特徴

球磨型の設計は、イギリス海軍の軽巡洋艦を参考に、直線的な船体と簡素な艤装が特徴です。艦隊決戦を想定し、強力な砲力、魚雷兵装、機雷敷設設備、通信設備を備え、水雷戦隊旗艦として36ノットの速力を実現しました。また、太平洋での作戦を考慮し、凌波性も重視されました。

艦の構造は、艦首に14cm砲を単装で2基、艦橋の後部に2基、そして後部に3基の主砲を配置。53.3cm魚雷発射管は連装で片舷2基ずつ計4基装備。煙突は3本あり、艦載艇は片舷3組のボート・ダビッドで運用されました。8cm高角砲は1番煙突の両舷に各1基ずつ配置されました。

船体構造

船体は細長く、艦首はスプーン型で、艦尾はデストロイヤー・スターンとなっています。凌波性を高めるため、艦首乾舷の高い船首楼型を採用。また、艦の中央部にも短艇甲板が設けられました。舵は大型の半平行舵でしたが、その抜き差しが困難なため、以後の高速艦艇では採用されませんでした。

兵装

主砲は50口径三年式14cm砲で、単装7門を装備。片舷砲力は6門で、艦橋両舷の砲は首尾線上への発射も可能です。日本海軍の巡洋艦として初めて新造時から方位盤射撃装置を装備しました。

高角砲は当初8cm砲を2門装備していましたが、後に13mm連装機銃、さらに25mm連装機銃へと換装されました。機銃の装備は各艦で差異がありました。

水雷兵装は、当初計画では3連装魚雷発射管を装備する予定でしたが、運用上の問題から連装発射管に変更されました。また、後甲板には機雷敷設用の設備も装備していました。

航空兵装

球磨型は、日本海軍艦艇として初めて航空機の搭載を考慮した設計となりました。水上偵察機を分解して格納し、後部マストに設置されたデリックで海面に降ろして運用する方式でした。後に一部の艦には射出機が搭載されました。

機関

球磨型は36ノットの速力を実現するため、90,000SHPの出力が必要とされました。三菱・パーソンズ・技本式オール・ギアード・タービン4基を搭載し、ボイラーは12基を搭載しました。

防御

防御は、アメリカ海軍駆逐艦の4インチ砲に対する防御を想定し、機関部を覆う装甲を施しました。舷側装甲は最大63.5mm、甲板装甲は最大28.6mmとなっています。

その他

艦橋は最上部に露天式の羅針艦橋があり、その下部に司令塔がありました。また、後部マストと7番砲の間にも後部羅針艦橋が設けられました。居住性は天龍型より改善されましたが、缶室の上の兵員居住区は高温に悩まされ、士官次室は騒音や振動が大きかったようです。

改装と転用

球磨型は、時代とともに様々な改装と転用が検討されました。

敷設艦への改造: 機雷敷設能力を強化する計画がありましたが、実現しませんでした。
練習艦への改造: 艦齢超過後の活用として検討されましたが、軍縮条約の破棄により中止となりました。
重雷装艦への改造: 旧式化した球磨型を有効活用するため、酸素魚雷を装備した重雷装艦への改造が行われ、北上と大井が対象となりました。
高速輸送艦への改造: ガダルカナル島の戦いでの輸送作戦の困難さから、高速輸送艦への改造が検討されましたが、実際には小規模な改造に留まりました。
* 回天搭載艦への改造: 北上は人間魚雷「回天」の母艦として改装されましたが、実戦での使用機会はありませんでした。

各艦の戦歴

球磨型各艦は、シベリア出兵や中国方面での警備、太平洋戦争など、様々な戦場に投入されました。太平洋戦争では、その速力の低下や兵装の陳腐化から、水雷戦隊を率いることはありませんでした。球磨はフィリピン攻略作戦などに参加後、潜水艦の雷撃により沈没。多摩と木曾は北方部隊で活躍後、南方に転じ、多摩はレイテ沖海戦で、木曾はマニラ湾空襲で失われました。重雷装艦に改装された北上と大井のうち、大井は沈没し、北上のみが終戦まで残存しました。

球磨型軽巡洋艦は、その設計思想から、日本海軍の発展とともに様々な役割を担った艦級であり、日本海軍の歴史において重要な位置を占めています。

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