禁酒令

禁酒令とは

禁酒令とは、アルコール飲料の製造、販売、輸送、輸入、輸出を制限または禁止する政策のことです。この政策は、奢侈禁止令の一種として位置づけられます。禁酒令は、特定の時代や地域において、アルコールに関連する問題に対処するために実施されてきました。歴史的に見ると、禁酒令は文化圏や国によって異なり、その厳格さや執行方法も大きく異なっています。

禁酒令の歴史

禁酒令の歴史は古く、紀元前2200年頃の古代中国の夏王朝にまで遡ると言われています。記録に残っている最古の禁酒令は、紀元前1100年頃の古代エジプトで発令されたものです。古代ギリシャやローマでも、同様の政策が実施されました。20世紀初頭には、北欧諸国や北アメリカで禁酒運動が活発化し、プロテスタントのアルコールに対する警戒心がその背景にありました。

20世紀前半には、いくつかの国で実際に禁酒令が敷かれました。以下はその例です。

1900年 - 1948年: カナダ、プリンスエドワードアイランド州
1914年 - 1922年: ロシア帝国およびソビエト連邦
1915年 - 1922年: アイスランド（ビールは1989年まで禁止）
1916年 - 1927年: ノルウェー
1919年: ハンガリー
1919年 - 1932年: フィンランド
1920年 - 1933年: アメリカ合衆国（禁酒法）

地域ごとの禁酒令の事例

イスラム圏

イスラム教の教えに基づき、多くのイスラム教国ではアルコールが禁じられています。ただし、その取り締まりの厳格さは国や時代によって異なります。

アフリカ

リビア: アルコールの輸入、販売、消費を禁止
チュニジア: ワイン以外のアルコール飲料を制限
モロッコ: ラマダーン期間中のアルコール販売を禁止
スーダン: アルコールの消費を一切禁止

中東

サウジアラビア: アルコールの生産、輸入、消費を完全に禁止
カタール: アルコールの輸入を禁止、公共の場での飲酒を違法とする
イラン: 1979年のイラン革命以降、アルコールの生産、消費を禁止
アフガニスタン: ターリバーン政権がアルコールを厳しく取り締まる

アジア

パキスタン: 非ムスリムのみアルコールを許可
モルディブ: リゾート地のみアルコールを許可
バングラデシュ: 外国人に限り、ホテルやレストランでアルコールを販売

北米

アメリカ合衆国では、1920年代に禁酒法が施行されましたが、1933年に廃止されました。しかし、一部の地域では現在も禁酒条例が存在します。

南米

ラテンアメリカの多くの国では、選挙期間中のアルコール販売が禁止されています。

ヨーロッパ

北欧諸国では、長い禁酒の伝統があります。アイスランド、ノルウェー、フィンランドなどでは、過去に禁酒令が施行されていました。現在でも、これらの国々ではアルコールの販売が厳しく管理されています。

ロシア・ソ連

ロシア帝国では、1914年に限定的な禁酒令が導入され、ソビエト連邦時代まで維持されました。1985年には、ミハイル・ゴルバチョフ書記長が酒類の生産制限を行いましたが、不評を買いました。

南アジア

インドの一部の州では、禁酒令が施行されています。また、特定の祝日や投票日には、国全体で禁酒となります。

東南アジア

タイ: 学生によるアルコール購入を制限するため、午後のアルコール販売を禁止
ブルネイ: 公共の場でのアルコール消費を禁止、アルコールの販売を一切禁止
* シンガポール: 午後10時30分から翌朝7時まで、公共の場での飲酒を禁止

オーストラリア

オーストラリアのアボリジニのコミュニティでは、アルコールが禁止されている地域があります。

中国

中国では、周の時代から禁酒令が出されていましたが、長期的な維持は困難でした。

日本

日本では、大化2年（646年）に最初の禁酒令が発令され、その後も度々禁酒令や酒造の制限が行われました。

禁酒令の影響

禁酒令は、社会に様々な影響を与えます。肯定的な側面としては、アルコール関連の犯罪や健康問題の減少が挙げられます。しかし、一方で、密造酒の横行や犯罪組織の台頭、経済的な損失などの問題も引き起こされることがあります。禁酒令の成否は、その実施方法や社会の状況によって大きく左右されると言えるでしょう。

もう一度検索