藤原国経

藤原 国経について

藤原国経（ふじわら の くにつね）は、平安時代前期の著名な公卿であり、詩人としても知られています。彼は藤原北家に生まれ、権中納言である藤原長良の長男として誕生しました。国経の官位は正三位・大納言であり、その地位に至るまでの昇進過程は非常に興味深いものです。彼は陽成天皇の外伯父でもあります。

経歴

国経の官歴は彼の生涯を通じて順調に進展しました。最初に蔵人および左衛門大尉としてキャリアを開始し、貞観元年（859年）には従五位下に叙爵されました。その後、清和天皇の治世の下で侍従や右兵衛権佐などの役職を務め、貞観9年には従五位上、貞観17年には正五位下へと昇進しました。特筆すべきは、彼の弟である基経が貞観6年に29歳という若さで従四位下・参議に任じられたことに対し、国経の昇進がかなり遅れた点です。

貞観18年（876年）、甥である陽成天皇が即位する際、国経は一気に昇進を果たし、貞観19年には従四位下に、さらに元慶3年（879年）には従四位上となります。元慶6年（882年）には正四位下・参議に任じられ、公卿に列します。その後、議政官としても活躍し、皇后宮大夫として妹である藤原高子に仕える役割も果たしました。

さらに、宇多朝の寛平6年（894年）には新羅の入寇に対処するために大宰権帥に任ぜられ、同年5月には従三位・権中納言に昇進しました。国経は長命を保ち、70歳を過ぎてもなお活躍を続け、寛平9年（897年）には中納言、延喜2年（902年）には大納言へと昇進し、延喜3年（903年）には正三位にまで至ります。晩年の延喜8年（908年）6月29日に彼は81歳で薨去しました。

和歌作品

国経は勅撰歌人としても名を馳せており、彼の和歌の作品は『古今和歌集』や『続古今和歌集』にそれぞれ1首ずつ収録されています。彼の詩的感性は、その時代の文化と深く結びついています。

逸話

国経の生涯には多くの逸話が存在しますが、その中でも特に有名なのは、彼の若く美しい妻を左大臣の藤原時平に奪われた話です。この逸話は『今昔物語集』にも記されています。国経が80歳近くになった頃、彼は年の離れた妻を持っていました。その妻は美しさで評判であり、平中と呼ばれた好色な兵衛佐である平定文も彼女に会いに行くものの、実を結ぶことはありませんでした。

一方、大臣の藤原時平は、この美しい妻を狙って、ある年の正月に国経の邸宅を訪れます。宴も終わり、大臣が帰ろうとした際、彼は特別な引き出物を求めます。国経は、酔った勢いでこの妻こそが自分の持ち物の中で最も優れたものであると考え、彼女を大臣に差し出してしまいます。そして、大臣はそのまま彼女を連れ去ります。

翌朝、国経は夢のような出来事だったかと思い返しますが、実際には現実であったことを思い知らされます。彼は、妻をも奪われた悲しみや苦悶を抱え、「せめて彼女が幸せであることを願うしかない」と悩みつつ、内心の葛藤に苛まれます。この複雑な感情は、後に谷崎潤一郎の小説『少将滋幹の母』の中でも描かれ、多くの人々に読み継がれています。

官歴

国経の詳細な官歴は、次の通りです。彼は数々の役職を歴任し、その地位は高まっていく一方で、時には悩みや苦労も伴いました。彼の人生は、当時の公卿たちのあり方や、歌人としての活動を考えるうえでも貴重な資料となっています。

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