西ガーツ山脈

西ガーツ山脈：多様な生態系と歴史が息づく世界遺産

西ガーツ山脈は、インド亜大陸の西海岸に沿って南北に約1,600kmにわたって連なる山脈です。標高は1,000mから最高峰のアナムディ山（2,695m）まで変化に富み、その地形と気候は、多様な生態系を育んでいます。ヒマラヤ山脈よりも古い歴史を持ち、インドの気候に大きな影響を与え、多くの河川の源流となっています。

地理

西ガーツ山脈は、グジャラート州からタミル・ナードゥ州まで、6つの州を通過し、デカン高原とアラビア海の境界を形成しています。その広大な面積は約12万平方キロメートルに及びます。山脈は、パラッカド峡谷によって分断される部分もあります。アラビア海とベンガル湾に流れ込む河川の分水嶺としての役割も担っています。

生物多様性

西ガーツ山脈は、世界でも有数の生物多様性のホットスポットとして知られています。熱帯モンスーン気候の影響を受け、お花畑、高山森林（ショーラ林）、熱帯常緑樹林など、多様な生態系が存在します。ゴンドワナ大陸の一部であったインド亜大陸の地史を反映し、アフリカ由来とアジア由来の生物が混在し、独自の進化を遂げています。ハンミョウ科の甲虫類のように、固有種が多いことも特徴です。トラ、アジアゾウ、シシオザルなど、多くの絶滅危惧種が生息しており、生物多様性の保全が重要な課題となっています。

生物圏保護区

西ガーツ山脈には、ニルギリ生物圏保護区やアガストヤマラ生物圏保護区など、生態系の保全を目的とした生物圏保護区が設定されています。これらの保護区には、国立公園や野生動物保護区が含まれ、貴重な動植物の保護が行われています。

名称の由来

「ガーツ」とは、ヒンディー語で階段を意味する言葉です。西ガーツ山脈は、海岸平野から階段状に隆起している地形に由来して名付けられました。

農園

西ガーツ山脈の周辺地域では、コーヒー、紅茶、香辛料などの栽培が盛んです。特に、カルナータカ州のチクマガルールは、インドで初めてコーヒーが栽培された場所として知られています。ニルギリ山地は、良質なニルギリ紅茶の産地としても有名です。

牛頭山

カルダモン丘陵は、仏典に牛頭栴檀（ビャクダン）が生える牛頭山として登場します。

世界遺産

2012年、西ガーツ山脈はユネスコの世界遺産に登録されました。39箇所の自然保護区が登録対象となり、生物多様性の保全におけるその重要性が認められました。

登録基準

西ガーツ山脈は、以下の世界遺産登録基準を満たしています。

(9)：陸上、淡水、沿岸および海洋生態系と動植物群集の進化と発達において、進行しつつある重要な生態学的、生物学的プロセスを示す顕著な見本であること。
(10)：生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいること。絶滅の恐れのある種の生息地などが含まれること。

西ガーツ山脈は、豊かな自然と多様な生態系、そして歴史と文化が融合した、かけがえのない遺産です。その保全と持続可能な利用が、今後の課題となっています。

もう一度検索