酸ヶ湯

酸ヶ湯温泉：八甲田山麓の秘湯

青森県青森市南部、八甲田山系の山中にひっそりと佇む酸ヶ湯温泉は、その名の通り強い酸性の泉質を誇る火山性温泉です。pH2.0を下回るほどの酸性度を持ち、かつては「鹿湯（しかゆ）」と呼ばれていました。「すかゆ」という現在の名称は、その読み方が変化したものです。

泉質と効能

酸ヶ湯温泉の泉質は非常に多岐にわたります。主なものとしては、酸性泉、含鉄泉、硫黄-アルミニウム-硫[[酸塩泉]]、塩化物泉、酸性硫黄泉（含石膏、酸性硫化水素泉）などが挙げられます。源泉温度は48度から64度と幅があり、これらの泉質が組み合わさることで、神経痛、リウマチ、皮膚病、婦人病、胃病、痔疾など、さまざまな症状に効果があるとされています。

温泉宿と施設

酸ヶ湯温泉は、八甲田山中の一軒宿として知られています。登山客が立ち寄ることも多いですが、豊富な湯量と多様な効能を求めて、シーズン中には多くの宿泊客が訪れます。宿の規模は大きく、全140室のうち90室が湯治部として利用されています。湯治部では自炊が可能で、3号館では食事付きでの滞在もできます。

名物は何と言っても、総ヒバ造りの「ヒバ千人風呂」です。体育館のような巨大な建物の中に、大きな浴槽が二つ（「熱の湯」と「四分六分の湯」）、そして打たせ湯（湯滝）があります。「熱の湯」と「四分六分の湯」は隣接していますが、泉源が異なっています。「熱の湯」は源泉をそのまま使用しているため、若干ぬるめですが、体の芯から温まると言われています。一方、「四分六分の湯」は源泉に水を加えているものの、源泉自体の温度が高いため、「熱の湯」よりも熱く感じます。また、「熱の湯」と「四分六分の湯」の名称は、必ずしも湯の温度を表しているわけではない点に注意が必要です。

脱衣所は男女別ですが、浴室内は混浴となっています。ただし、大浴槽の中央には目印があり、男女が区切られています。また、短時間ではありますが、女性専用時間帯も設けられています。過去には、「四分六分の湯」を飲用するための猪口が設置されており、レモン水のような味がしたそうです。千人風呂の他に、男女別のこぢんまりとした「玉の湯」も存在します。千人風呂には洗い場がありませんが、玉の湯には洗い場があり、体を洗うことができます。

入浴

日帰り入浴も可能で、建物入口の券売機で入浴券を購入します。

入浴料金

大人：1000円
小学生以下：500円
※千人風呂と玉の湯の両方に入浴可能、フェイスタオル付き、広間の休憩所利用可。

利用時間

立ち寄り入浴：午前7時〜午後5時半
千人風呂の女性専用時間帯：午前8時〜9時、午後8時〜9時
広間（休憩所）：午前8時〜午後3時

歴史

酸ヶ湯温泉は、江戸時代前期の1684年（貞享元年）に開湯したと伝えられています。昔から湯治場として多くの人が訪れました。大正時代には、宿の経営者の妻である郡場フミが、近隣の高山植物を採集し、標本を研究機関に寄贈しました。その功績により、酸ヶ湯温泉の周辺には東北大学の研究施設が設立されました。また、フミの息子である郡場寛は植物学者として活躍しました。1954年（昭和29年）には、四万[[温泉]]、日光湯元[[温泉]]と共に、国民保養[[温泉地]]第1号に指定されています。

千人風呂は混浴であるため、過去には混浴マナーの低下から女性客の苦情が多く、間仕切りが設置されましたが、今度は間仕切りに対する苦情が増えたため撤去されました。その後、2005年（平成17年）には常連客を中心に「混浴を守る会」が発足し、混浴マナーの維持活動が行われています。

気候

酸ヶ湯温泉は、ケッペンの気候区分では亜寒帯湿潤気候（Dfb）に属し、世界有数の豪雪地帯として知られています。1981年（昭和56年）までは冬季は閉鎖されていましたが、現在も寒さを利用した凍み豆腐作りが行われています。年間降雪量は約1706cm、最深積雪は約2370cmにも達します。日本では、富士山に次いで気温が上がりにくい場所であり、標高890mにも関わらずアメダスが設置されています。積雪の多い年には、6月上旬から中旬まで雪が残ることもあります。夏季には稀に25℃以上の夏日になることもありますが、30℃以上の真夏日になることはほとんどありません。

アクセス

鉄道: JR東日本 / 青い森鉄道・青い森鉄道線 青森駅からJRバス東北十和田北線で約1時間15分から1時間40分。
* 自家用車: 青森自動車道 青森中央インターチェンジから約40分。国道103号線沿線。

周辺

酸ヶ湯温泉周辺は、秋には奥入瀬から続く紅葉の名所となります。隣接する東北大学植物園八甲田山分園の南側には、グループ施設の八甲田ホテルがあります。周辺には地熱を利用したベンチの「まんじゅうふかし」や、熱泉が吹き出す「地獄沼」などの観光スポットもあります。

映画

酸ヶ湯温泉を舞台にした映画作品として、『風が通り抜ける道』（田中壱征監督作品）があります。この作品はカンヌ国際映画祭2023で披露上映され、沖縄国際映画祭2023にも正式出品されました。

酸ヶ湯温泉は、その歴史、泉質、そして周辺の自然が織りなす、訪れる人々を魅了する特別な場所です。

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