銀貨

銀貨 (ぎんか)

銀貨は、文字通り銀を素材として作られた貨幣であり、古代から現代に至るまで世界の多くの地域で流通してきました。特に、銀本位制下では銀貨は無制限の自由鋳造が認められる本位貨幣としての役割を果たし、その代表的な例として、アメリカの1ドル銀貨、香港の1ドル銀貨、フランスの5フラン銀貨、メキシコの8レアル銀貨が挙げられます。日本でも明治時代には、一円銀貨が発行され、貿易決済に利用されました。

銀貨は、近代に入ると一般の流通にはほとんど使用されなくなり、主に収集家向けに発行される特別な種類として残っています。プルーフ加工を施されたものや、保護用のケースに入れられた銀貨が多く流通し、一部では地金型の銀貨も販売されています。また、日本では1966年まで銀貨が発行されており、平成時代からは記念銀貨として1,000円や5,000円の銀貨が登場し、2005年には初の500円記念銀貨が発行されました。

銀貨の純度は国や時代によって異なりますが、明治時代の50銭、5銭の補助通貨は80%であり、一円銀貨と貿易銀は90%の品位を持っていました。戦後には100円銀貨が流通し、その純度は60%に設定されました。国によっては、オランダの1グルデン銀貨のように94.5%という高品位の銀貨が存在しましたが、通常の本位銀貨は90%であったことが多いです。英国の銀貨は92.5%のスターリングシルバーで作られ、その地位は強固なものでした。

「銀貨30枚を受け取る」という表現は、イエス・キリストの使徒ユダが銀貨でイエスを裏切ったエピソードに由来し、裏切りを象徴する言葉として用いられています。

銀貨の歴史

銀は天然で採取される量が限られており、その独特の輝きから古代より装飾品として珍重されてきました。貨幣として用いられるようになったのはエジプト文明の時代からで、古代ギリシャやローマにおいても高額な貨幣として鋳造されました。当時の金は非常に稀少だったため、実質的な貨幣として銀の重要性は高まり、広範囲で流通しました。通貨の名称に「ドル」や「ポンド」といった単位がつけられたのも、元々は銀貨に由来しています。また、金と銀の交換比率を政府が定めることで金銀複本位制という制度が確立し、銀貨は金貨と並ぶ位置を得ました。

しかし、近代に入ると新たに銀鉱山が発見されるなどして、金銀比価は下がっていきました。これにより、中国やフランスに大量の銀を保有することで反発が起こり、アメリカでは中西部農民や銀鉱夫の運動が見られましたが、19世紀末にはほとんどの国が金本位制に移行し、銀貨は役割を終えて銅貨と同様に補助貨幣とされました。この時期、本位貨幣としての銀貨はその使命を失いました。

20世紀に入ると、工業用銀の需要増加に伴い銀の価格が上昇し、多くの国々で銀はニッケルや白銅に置き換えられていきました。また、紙幣の普及も重なり、一般流通に使われる銀貨はほぼ全て姿を消しました。

日本と中国の銀貨の歴史

日本では、飛鳥時代から無文銀銭が流通し、日本最古の通貨とされる和同開珎も発行されました。律令国家では、銅銭や銀銭が発行されましたが、683年には「必ず銅銭を用いよ」という詔が出され、銀銭の使用は制限されました。しかし、その後も銀の価値は認められ、721年には銀銭の価値が定められました。

一方、中国では明代に金銀の使用が禁止され、明宝鈔という新しい通貨形態に移行しました。しかし、銀は依然として重要な役割を果たし、明代中期以降は銀が主な通貨とされました。

このように、銀貨は歴史を通じて社会経済において重要な役割を担ってきましたが、現在では主に収集目的で残されているのが現状です。

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