(秘) 必殺現代版 主水の子孫が京都に現われた 仕事人vs暴走族

概要

『㊙必殺現代版 主水の子孫が京都に現われた 仕事人vs暴走族』は、1982年12月31日にテレビ朝日系で放送された、朝日放送と松竹が共同制作したテレビドラマです。必殺シリーズの長時間スペシャル第3弾として、藤田まことさんが主演を務めました。

この作品は、『必殺仕事人III』のレギュラー出演者が、現代の京都を舞台に悪を裁くという、シリーズの中でも異色の設定となっています。特徴的なのは、その構成です。ドラマは、藤田まことさんをはじめとする出演者たちが、撮影終了後に集まってプライベートフィルムの完成披露会を行うという導入で始まります。さらに、CM前後には試写室の場面に戻り、そのリアクションを見るスタジオ中継（VTR映像）が流れるという、二元構成が採用されています。この構成こそが、タイトルの「㊙」の由来です。

物語では、仕事人の子孫たちが暴走族と戦うという、当時の社会情勢を反映した内容が描かれています。1982年当時、共同危険型暴走族の活動が社会問題化しており、その現実をドラマに取り入れた点が、本作の大きな特徴です。また、暴走族は全員が殺されるわけではなく、事件の翌日の新聞では「暴走族4人が死亡」と報道されるなど、現実的な描写がされています。

1985年には、『新装㊙必殺現代版 東京六本木・京都円山公園・大阪梅田 3元仕事人ナマ中継』として、ドラマ部分を再編集したものが再放送されました。2007年にはDVD化されましたが、ドラマ本編のみが収録され、VTR収録部分は削除されています。また、エンディングは完全に作り直され、中継スタッフのクレジット表記がなく、主題歌もインストゥルメンタルバージョンに差し替えられています。

あらすじ

生命保険会社「昭和生命」の訪問勧誘員である中村主水。手作りアクセサリー売りの村上秀夫。ピアノ調律師の山田勇次。個人タクシー運転手の長谷川加代。この4人は、ごく普通のカラオケ仲間ですが、彼らの先祖は、それぞれ仕事人として活躍した中村主水、秀、勇次、加代でした。

ある夜、カラオケ店で悪人と揉めた4人は、先祖と同じように殺しをしようとしますが、先祖の形見である武器は使い物にならず、殺しは失敗したかと思われました。しかし、主水の偶発的な行動で、結果的に殺しは成功してしまいます。この出来事から「こんな危険なことは止めよう」と、4人は一旦は平穏な生活に戻ります。

しかし、主水の顧客である吾助の娘が暴走族にレイプされた挙句、妻子とともに死んでしまいます。葬儀後、主水は吾助の家を訪れますが、そこで吾助は主水を受取人として、5千万（事故死亡時、3倍の特約）の生命保険をかけます。吾助の行動に不審を感じた主水は、吾助を尾行すると、彼は女物の洋服を買ったり、河原でスクーターの練習をするなど、不可解な行動をします。吾助の目的は、妻子を殺した暴走族への復讐でした。吾助は女装して夜中にスクーターを走らせ、暴走族を殺そうとしますが失敗し、逆に殺されてしまいます。警察は、吾助の死を事件ではなく変死として処理しました。

主水は、吾助の保険金を頼みに、仲間たちに復讐を提案します。4人は、吾助の復讐を果たすため、仕事人として立ち上がります。情報を集め、準備を進めた結果、決行当日、暴走族の暴走行為に紛れて、秀夫と勇次が主犯格の暴走族を仕留めていきます。主水は道路工事現場で、ルート変更の看板を崖の方向に変え、暴走族を次々と崖下へ転落させます。暴走族のリーダーは生き残り、バイクで主水と加代に突っ込んできますが、主水が突き出した脇差が燃料タンクに穴を開け、漏れ出したガソリンに火がつき、爆発します。

翌日、主水は保険金を受け取るために保険会社を訪れますが、会社側は「吾助は正常な判断が出来ていなかった」として支払いを拒否。主水たちは結局、保険金を手に入れることはできませんでした。

登場人物

仕事人

中村主水: 藤田まことさんが演じ、生命保険会社「昭和生命」の保険勧誘員で、江戸時代の同心・中村主水の子孫。婿養子で警察官の家系でしたが、警察アレルギーで現在の仕事に就いています。東京から京都に左遷された過去を持ちます。
村上秀夫: 三田村邦彦さんが演じ、手作りアクセサリーを路上販売する青年で、秀の子孫。
山田勇次: 中条きよしさんが演じ、ピアノ調律師で、勇次の子孫。
長谷川加代: 鮎川いずみさんが演じ、個人タクシー運転手で、加代の子孫。

関係者の子孫

中村せん: 菅井きんさんが演じ、主水の姑で、せんの子孫。
中村りつ子: 白木万理さんが演じ、主水の妻で、りつの子孫。
田中係長: 山内敏男（現・山内としお）さんが演じ、昭和生命の係長で、主水の上司。筆頭同心 田中の子孫で、先祖と同様のオカマです。

仙田家

仙田吾助: 芦屋小雁さんが演じ、主水の顧客。
仙田いく: 山口朱美さんが演じ、吾助の妻で、裕子を追って自殺します。
仙田祐子: 中西紫野さんが演じ、吾助の娘で、暴走族に襲われた末に自殺します。

その他

一平: ひかる一平さんが演じ、西順之助の子孫ではなく、京都の予備校生役でした。

暴走族

健一: 内田正之さんが演じました。
隆: 渥美博さんが演じました。
弘平: 葭川浩さんが演じました。
次郎: 井上孝さんが演じました。

昭和生命勧誘員

新田: 宮本毬子さんが演じました。
木下: 三笠敬子さんが演じました。
昭和生命調査部・木田: 浜田雄史さんが演じました。
昭和生命顧問弁護士・朝倉: 芝弘さんが演じました。

その他

ヤクザ: 浜伸二さんが演じました。
マンションの女: 白礼花さんが演じました。
刑事: 国田栄弥さん、田中義章さんが演じました。
スーパーサンチェーン店長: 千田一夫さんが演じました。
舞妓: 矢野裕子さん、斉田真由美さんが演じました。
スナックマスター: 鈴木猛士さんが演じました。
トレーナー: 西脇美智子さんが演じました。

役名に関する補足

村上秀夫の名前は、三田村邦彦さんの映画デビュー作『限りなく透明に近いブルー』の原作者である村上龍から、長谷川加代の名前は長谷川一夫から、山田勇次の名前は、おりく役の山田五十鈴からそれぞれ拝借されています。

殺し技

中村主水: 先祖代々の脇差を使用しようとするも錆び付いており、使い物になりません。工事現場でルートを迂回させ、自動車やバイクを崖から転落させるという方法を使いました。暴走族との対決では、バイクのガソリンタンクに脇差を突き刺し、漏れ出したガソリンに火をつけて爆発させました。
村上秀夫: 先祖代々の簪を使おうとしますが派手すぎて使えず、新しい簪を作り、走行中の暴走族のバイクを飛び回りながら悪人を刺し殺すという荒業を見せました。
山田勇次: 先祖代々の三味線糸を使おうとしますが古く、切れてしまい使えません。代わりにピアノ線を使い、悪人の首に巻き付け締め上げ、宙吊りにして弦を鳴らし、窒息死させました。実際の殺しでは、ストップウォッチを用い、橋の下のトンネルの端から端までの時間を計り、綿密にタイミングを計った上で暴走族の首を絞めました。

スタッフ

制作: 山内久司（朝日放送）
プロデューサー: 仲川利久、辰野悦央（朝日放送）、櫻井洋三（松竹）
脚本: 吉田剛
音楽: 平尾昌晃
照明: 中島利男
制作主任: 渡辺寿男、高坂光幸
制作補: 武田功
美術: 梅田千代夫
録音: 広瀬浩一
調音: 本田文人
編集: 園井弘一
監督補: 津島勝
助監督: 都築一興
装飾: 草川浩
記録: 山村晶子
進行: 鈴木政喜、三ツ田晴高
特技: 宍戸大全
バイクスタント: マイクスタントマンチーム
装置: 新美術工芸
美術: 八木かつら
衣装: 松竹衣装
小道具: 高津商会
現像: 東洋現像所
監督・撮影: 石原興
制作協力: 京都映画株式会社（現・松竹撮影所）
制作: 朝日放送、松竹

中継スタッフ／ABC

技術: 尾池弥嗣
カメラ: 村上明吉
音声: 幸西徹昌
中継ディレクター: 森山浩一

主題歌

鮎川いずみ「冬の花」（CBSソニー）
作詞：石坂まさを、作曲：平尾昌晃、編曲：竜崎孝路
ただし、DVD版では主題歌がインストゥルメンタルバージョンに差し替えられています。

脚注

注釈

出典

参考文献

* 必殺スペシャル DVD-BOX上巻 封入解説書

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