韓国岳

韓国岳：霧島連山の最高峰に広がる絶景と豊かな自然

韓国岳は、九州南部にそびえる霧島連山の最高峰です。宮崎県えびの市、小林市、そして鹿児島県霧島市の3市にまたがるその山容は、古くから人々を魅了してきました。別名「唐国岳」とも呼ばれるこの山は、標高1,700メートルを超える雄大な姿で、霧島連山の象徴的な存在となっています。

山容：変化に富む景観と豊かな植生

韓国岳の山頂には、直径約900メートル、深さ約300メートルの大きな火口が存在します。雨期には火口に水が溜まり、池を形成することもあります。冬には冠雪し、霧氷が美しく輝く様子も観察できます。

北西側山腹には、えびの高原が広がり、多くの観光客が訪れます。南西側には、神秘的な雰囲気を漂わせる大浪池があります。山腹は、多様な植生に覆われています。標高によって植生は異なり、ハリモミ、ミズナラ、ブナ、クヌギなどの広葉樹林から、山頂付近ではミヤマキリシマ、マイヅルソウ、ススキなどが見られます。また、火口壁にはヤシャブシ、シロドウダン、ヒカゲツツジなどの植物が生息し、多様な生態系を育んでいます。山中には野生動物も多く生息しており、シカの姿を目にすることも少なくありません。

地質：繰り返された噴火活動の痕跡

韓国岳は、霧島火山群の中でも比較的新しい火山活動によって形成されました。白鳥山、夷守岳、獅子戸岳、大浪池といった、より古い時代の火山の上に形成されており、地質学的にも非常に興味深い存在です。山体を構成する地層は、大きく分けて古期溶岩、中期溶岩、新期溶岩の3つに分類されます。それぞれの地層は異なる時代に噴火した溶岩流によって形成され、その年代の違いによって、山体の形成過程を読み解くことができます。特に、山頂付近は1万5000年前以降に噴出した新期溶岩からなり、火砕流や軽石の噴出を繰り返してできた噴石丘となっています。また、形成後には火口北西部で爆発的な噴火が発生し、西側の火口壁が崩壊した痕跡も残っています。

歴史：古くから人々に親しまれてきた山

韓国岳は、古くは「霧島岳西峰」、「筈野岳」、「雪岳」、「甑岳」など、様々な名前で呼ばれていました。「韓国の見岳（からくにのみたけ）」という名称の由来は、山頂から朝鮮半島が見えるほど高い山という意味だと伝えられていますが、実際には朝鮮半島を視認することはできません。歴史上、山頂での噴火の記録はありませんが、1768年（明和5年）には北西側山腹から溶岩が流出し、硫黄山が形成されました。江戸時代には、薩摩藩の島津氏がしばしば登山に訪れ、この山を信仰の対象としていたと考えられています。

登山：多彩なルートと絶景のパノラマ

韓国岳への登山道は、宮崎県小林市と鹿児島県霧島市を結ぶ県道付近から複数整備されています。中でも、駐車場やビジターセンターが充実しているえびの高原からのルートが一般的で、初心者にもおすすめです。山頂からは、南方を中心とした素晴らしい眺望が広がります。霧島連山の山々、霊峰高千穂峰はもちろん、天気が良ければ遠くは鹿児島湾の桜島や高隈山まで見渡せる絶景は、登山者にとって大きな魅力となっています。かつては、韓国岳から獅子戸岳、新燃岳、中岳と縦走し、高千穂河原へと降りるルートも人気でしたが、2011年の新燃岳噴火以降は通行止めとなっています。また、1996年には、鹿児島県によって「韓国岳南避難小屋」が設置され、登山者の安全確保にも配慮がなされています。

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