ねじ式 (ゲーム)

『名作浪漫文庫 ねじ式』は、1989年にツァイトとウィルから発売されたPC-9800シリーズおよびX68000用のアドベンチャーゲームです。プロデューサーは大浦由貴が務めました。

概要

このゲームは、つげ義春の代表作である漫画『ねじ式』を主軸に、彼の描く独特な世界観をゲーム化したものです。つげ義春は、以前からコンピューターゲームに興味を持っており、自身の作品がゲーム化されることを快諾しました。彼は制作にも協力し、完成したゲームを実際にプレイして、その出来栄えに満足した様子でした。ゲームをプレイ後、つげは「私の作品を元に、新しい作品ができた。私はこれを元に、また新しい別の作品が描けそうだ」と語り、ゲーム化に対する肯定的な評価を示しました。

いきさつ

ゲーム化の企画は、青林堂の山中潤が発案しました。山中は熱狂的な『ねじ式』ファンであり、採算度外視で大人が楽しめるゲームを制作したいと考えていました。当時、大人向けのゲームはほとんど存在しなかったため、大浦由貴はこの企画をリスクを承知で引き受けました。大浦が参画した段階で、ゲームのプロトタイプはすでに存在しており、彼の主な役割は作品のクオリティ向上と制作進行管理でした。『ねじ式』が持つカリスマ性から、単に面白いだけでは批判を浴びる可能性があったため、制作は緊張感の中で進められました。ゲームの完成が近づき、パブリシティを開始したところ、パソコン雑誌からの反応が予想以上に大きく、テレビや新聞などでも取り上げられるほどの反響を呼びました。

ストーリー

ゲームの主人公は作家「T」です。彼はある事件をきっかけに、つげ義春の作品世界に迷い込み、生死をさまよう中で幻覚を見ます。そこで、彼は様々なつげ作品のキャラクターたち（「紅い花」のキクチサヨコ、「もっきり屋の少女」の小林チヨジ、「ほんやら洞のべんさん」、「必殺するめ固め」の元プロレスラーの痴漢男、「ねじ式」の少年、「ゲンセンカン主人」の登場人物など）と出会います。物語は、現実と夢の境界が曖昧になる中で、主人公が自分の存在とは何かを自問自答しながら終わります。ノベル形式のアドベンチャーゲームとして、独特な世界観と物語性が特徴です。

その他

ゲームには、付録として漫画「ねじ式」や「紅い花」などが掲載された冊子と、店頭で使用されたデモディスクが付属していました。PC-9800版よりも後発のX68000版は、そのハードウェアの性能を活かし、グラフィックや音楽、効果音がよりリアルに表現されています。フロッピーディスク3枚組（約3メガバイト強）という、当時のパソコンゲームとしては大作でした。また、名作浪漫文庫シリーズには、本作以外にも、ひさうちみちおの漫画作品をゲーム化した『アソコの幸福』（PC-9800シリーズのみ発売）があります。

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