ひろしま

映画『ひろしま』の詳細解説

概要

『ひろしま』は、1953年に公開された関川秀雄監督による日本[[映画]]です。日教組（日本教職員組合）が制作し、長田新編纂の『原爆の子〜広島の少年少女のうったえ』を原作としています。この映画は、原爆投下によって壊滅的な被害を受けた広島の惨状と、そこで生きる人々の苦悩を克明に描いています。

特筆すべきは、広島県教職員組合と市民の全面的な協力のもと、約8万8500人もの市民がエキストラとして参加した点です。彼らは手弁当で撮影に協力し、被爆者の群衆シーンに迫真性を与えました。さらに、広島市役所や地元企業も制作に協力し、映画は多くの人々の手によって作り上げられました。撮影は、広島市内外24ヶ所で行われ、168のシーンで構成されています。

監督の関川秀雄は、原爆投下直後の地獄絵図を再現することに尽力し、救援所や太田川の惨状など、被爆地の修羅場を詳細に描き出しました。また、被爆者たちのその後の苦しみにも焦点を当て、原爆の悲劇を多角的に捉えています。スタッフには、録音のベテランである安恵重遠をはじめ、後に独立プロや教育・記録映画を支える小松浩、河野秋和らが参加。美術には平川透徹、セットデザインには高山良策が名を連ねています。監督補佐には小林太平、助監督には熊井啓が務めました。

内容

物語は、白血病で倒れた女子生徒みち子を中心に展開します。戦後広島に赴任した教師の北川は、生徒たちと原爆症について話し合う中で、原爆の悲劇と向き合います。1945年8月6日、女教師の米原が生徒たちと共に被爆し、焦土と化した広島をさまよう様子が回想されます。北川は、自身の無知を謝罪し、生徒たちは原爆の事実を世界に伝えたいと訴えます。病床のみち子は、原爆投下前の広島の様子を思い出し、物語はクライマックスを迎えます。

主要な出演者

北川先生: 岡田英次 - 物語の狂言回しとなる教師。戦後広島に赴任し、原爆についてほとんど知らない。
大庭みち子: 町田いさ子 - 原爆で家族を失った少女。白血病で入院し、被爆時の記憶を回想する。
大庭みね: 山田五十鈴 - みち子の母。自宅で被爆し、重傷を負いながらも子供たちを救護所へ避難させるが、力尽きる。
遠藤秀雄: 加藤嘉 - 家族と共に被爆。妻を失い、子供たちを探し求める。
遠藤よし子: 河原崎しづ江 - 秀雄の妻。爆風で倒壊した家の下敷きになり焼死する。
米原先生: 月丘夢路 - 女学校の教師。生徒たちと共に被爆し、川で力尽きる。
千田先生: 神田隆 - 中学生の引率教師。重傷を負いながらも生徒たちを気遣う。
大庭町子: 松山りえ子 - みち子の姉。建物疎開中に被爆し、川で力尽きる。
大庭明男: 南雅雄 - みち子の弟。被爆により重い火傷を負い、母の背で息絶える。
遠藤幸夫: 月田昌也 - 秀雄の息子。戦災孤児となり、荒んだ生活を送るが、後に更生する。
遠藤洋子: 亘征子 - 幸夫の妹。変わり果てた父の姿にショックを受け、行方不明となる。

その他、薄田研二、信欣三、三島雅夫、梅津栄など、多くの俳優が出演しています。また、広島原爆被害者、労働組合員、学生、一般市民など、8万8500人以上がエキストラとして参加しています。

制作・上映の経緯

1952年8月、日教組が映画制作を決定。「あの日を正確に再現する」ことを目指し、組合員からのカンパで2400万円の制作費を調達しました。脚本は広島県教職員組合内で討議され、4回も書き直されました。映画の題名が「ひろしま」に決定しましたが、原作を編纂した長田新教授はこれに不同意の意思を示しました。

1953年4月には、関川監督らが広島でロケハンを行い、5月には似島でのロケが開始されました。撮影は、被爆者や広島市民との交流の中で進められました。同年8月には広島市内で試写会が開かれ、9月には松竹が「反米色が強い」として上映を拒否。最終的に、広島、長崎県では自主配給、その他の地域では北星映画との共同配給となりました。

海外での反応と上映

1955年5月にはニューヨークで上映され、エレノア・ルーズベルト夫人が「控えめだが効果的」「平和増進に役立つ」と賞賛しました。同年11月にはドイツ国内でも公開されました。

エピソード

広島市出身の月丘夢路はノーギャラで出演。また、仁科博士役の薄田は、原爆で息子を失っています。伊福部昭作曲の音楽は、後の「ゴジラ」の劇中曲に転用されました。

映画監督のオリバー・ストーンは、この映画を「優れた映画であり、優れたストーリーであり詩的」と評価し、「現代戦争の真の恐ろしさを思い出させる」と述べています。

デジタル化

近年、プロデューサーの伊地知徹生やFILM STRUCK EXTRASのチャールズ・タベシュの協力により、デジタル化され、北米、欧州、アジアの10カ国で上映されています。

地上波テレビ放送

2019年8月には、NHK Eテレで全国放送されました。

脚注

本映画は、原爆の悲劇を伝えるだけでなく、人間の尊厳や平和への願いを強く訴えかける作品です。多くの人々に観ていただきたい映画です。

関連項目

広島原爆をテーマとした作品
原爆の子
はだしのゲン
その夜は忘れない
小林一平

外部リンク

映画『ひろしま』 - 井上・月丘映画財団
ひろしま - allcinema
* ひろしま - IMDb（英語）

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