りゅう座シグマ星

りゅう座σ星

りゅう座σ星（りゅうざシグマせい、σ Dra / σ Draconis）は、北天の星座であるりゅう座に位置する恒星です。

物理的性質

この恒星はスペクトル型がK0に分類されるオレンジ色の主系列星（矮星）で、長年にわたりK0型主系列星の分光標準星として用いられてきました。その直径は、光学干渉計であるCHARAアレイを用いた直接的な測定により、太陽の約77.8%であることが分かっています。視線方向に見かけられる自転速度は秒速1.5キロメートルと、比較的穏やかです。また、ヘリウムよりも重い元素の存在比率を示す金属量は、太陽に比べてやや低いと考えられています。

りゅう座σ星の表面温度や明るさの変化、表面での活動は、まだ確定した周期は見出されていないものの、太陽活動周期とよく似ている可能性が指摘されています。ただし、ヒッパルコス衛星による精密な観測では、光度変動が非常に安定しており、観測された恒星の中でも最も変動の小さい部類に入ることが確認されています。

運動と軌道

この恒星は、天球上を年に約1.8秒角という大きな固有運動を示し、夜空の中を比較的速く移動していることが特徴です。過去の軌道を遡ると、今から46,725年前に太陽系に最も接近したと推定されており、その際の距離は16.55光年でした。

銀河系内におけるりゅう座σ星の空間速度は、銀河中心方向（U）に+36 km/s、銀河自転方向（V）に+40 km/s、銀河の北極方向（W）に-10 km/sとなっています。これらの速度データから算出される、銀河中心を公転する軌道の離心率は0.30と、太陽（0.06）に比べて例外的に大きな値を示します。銀河中心からの平均的な距離は、およそ34,000光年（10.3キロパーセク）と推定されています。

惑星探査

2013年時点での観測では、木星のような巨大ガス惑星の存在は確認されていません。また、恒星の周囲に塵やガスからなる円盤（星周円盤）が存在することを示すような、顕著な赤外線放射も観測されていません。

しかしながら、W・M・ケック天文台などに設置された高分散分光装置や、リック天文台の自動惑星検出望遠鏡を用いた視線速度法による継続的な観測から、約300日の周期で視線速度にわずかな変動が見出されています。この変動は、天王星クラスの惑星が存在する可能性を示唆するものですが、変動の原因が惑星によるものなのか、あるいは恒星自身の表面活動など他の要因によるものなのかを明確に区別することができていないため、現時点では惑星の発見として公式に報告されるには至っていません。

名称

りゅう座σ星の固有名であるAlsafiは、アラビア語で遊牧民が野外での調理に用いる「三脚」（Athāfiyy）を指す言葉が、写本などの転写過程で誤って伝えられたものと推測されています。2017年6月30日、国際天文学連合（IAU）の恒星命名に関する作業部会は、このAlsafiを正式にりゅう座σ星の固有名として承認しました。

中国の伝統的な天文学における星官では、りゅう座σ星は『天厨』（調理場を表す星官）の一部とされており、その中でも2番目の星として天厨二と呼ばれています。

参考文献

SolStation.com: Sigma Draconis
国際天文学連合 (IAU) による恒星の命名に関する情報

（注：上記参考文献は入力に基づき記載しましたが、実際の辞書記事ではより学術的な出典が記載されるのが一般的です。）

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