アクメイズム

アクメイズム（Acmeism）は、20世紀初頭のロシア帝国で、1910年から1912年頃にかけて成立した文学流派、または文学運動です。ギリシャ語で「頂点」を意味する「アクメ」を語源とし、この流派の詩人をアクメイストと呼びます。

この運動は、象徴主義の神秘主義的な傾向に対する反発として生まれました。指導者として詩人ニコライ・グミリョフとミハイル・クズミンが中心となり、象徴主義から詩の技法を学びながらも、その神秘性を否定し、明晰な表現と古典的な調和を追求しました。彼らは、詩における具体的で触知可能なイメージを重視し、現実世界をありのままに描写することを試みました。

アクメイズムの主要なメンバーには、グミリョフの妻であるアンナ・アフマートヴァ、オシップ・マンデリシュターム、セルゲイ・ゴロデツキー、ミハイル・ゼンケヴィッチ、ウラジーミル・ナルブト、ボリス・サドフスキーらがいました。彼らは自らを「アダミズム」と称し、「詩人の職場（Tsekh poetov）」というグループを結成。1909年から1917年まで機関誌『アポロン』を発行し、自分たちの詩を発表しました。

しかし、1917年の十月革命によって、このグループは解体を余儀なくされました。多くのメンバーが文壇を去る中、アンナ・アフマートヴァは文壇に残り、その後も活動を続けましたが、1946年のジダーノフ批判によって文壇から去ることを強いられました。

アクメイズムは短命な文学運動ではありましたが、その後のロシア文学に大きな影響を与えました。その詩的な表現は、簡潔で明快な言葉選び、具体的なイメージの多用、そして古典的な形式への関心によって特徴づけられます。象徴主義の曖昧さや神秘主義を批判し、現実の世界をそのまま受け入れ、描写しようとした点が、アクメイズムの重要な特徴です。

アクメイズムは、文学史における重要な転換点であり、その後の文学運動の発展に大きな影響を与えました。この運動は、詩における表現の新たな可能性を切り開き、ロシア文学の多様性と豊かさに貢献しました。

参考文献

高津春繁、手塚富雄、西脇順三郎、久松潜一 著、相賀徹夫 編『万有百科大事典 1 文学』小学館（1973）
林達夫 編『世界大百科事典 1 アーアン』平凡社（1972）
鈴木勤 編『世界文化大百科事典 1 アーウチワ』世界文化社（1971）
鈴木泰二 編『グランド現代百科事典 1 アーアメリカサ』学習研究社（1983）
藤沼貴、小野理子、安岡治子 著、山口昭男 編『新版 ロシア文学案内』岩波文庫（2005）

関連項目

ロシア文学
ロシア・フォルマリズム
ジダーノフ批判

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