アッシリア学

アッシリア学の概要

アッシリア学は、古代オリエントで使われた楔形文字とそれを用いた民族の言語や文化を学ぶ専門領域です。この学問は、古代学、考古学、東洋学の一部で、エジプト学と合わせて古代オリエント学の重要な基盤を成しています。古代オリエントに残された膨大な楔形文字資料を解読し、それらを通じて地域の歴史や文化を明らかにすることを主な目的としています。

研究対象と民族

この学問の中心的な関心は、シュメール人やアッカド人、アッシリア人といった古代西アジアの様々な民族が生み出した文献です。古代西アジアを舞台に展開するこれらの文化は、政治、社会、経済、法律、宗教、芸術、文学など、幅広い分野に影響を与えました。アッシリア学という名称が付けられた理由は、アッシリアとその言語が最初に発見されたためであり、当初はこの地域に関する研究が主に行われていました。

隣接学問との関係

アッシリア学は、エジプト学と並んで古代オリエント文化を研究する分野ですが、両者はそれぞれ異なる学問として発展しています。エジプト学はヒエログリフ文献を扱い、非常に異なる方法論や資料を基盤としています。日本ではアッシリア学があまり知られていないため、古代オリエント学の一部としてエジプト学と一緒に言及されることが一般的です。

一方、イランの歴史や文化を研究するイラン学は、基本的にはアッシリア学とは別の分野ですが、古代ペルシア語に関する楔形文字資料の研究に関しては、両者の交差が見られます。古代ペルシア語の知識は、アッシリア学の重要な基盤の一つとして機能しているのです。

アッシリア学の歴史

この学問の発展は19世紀半ばに始まりました。特にボッタやレヤードによるニネヴェやニムルドの考古学的発掘が重要です。1849年にはレヤードがアッシュールバニパル王の王宮附属図書館を発見し、22,000枚の粘土板が大英博物館に移管されました。これを踏まえ、ローリンソン、ヒンクス、オッペールなどの研究者が古代ペルシア語やバビロニア語の解読を進め、1857年には彼らの研究が一致し、アッシリア学の成立が正式に宣言されました。

1884年にはフランスとドイツで専門誌が創刊され、この分野がさらに制度化される一因となりました。アッシリア学の発展は、古典古代文献や旧約聖書に依存していた以前の西洋古代史研究に新たな知見をもたらしました。

現代におけるアッシリア学

近年、研究が進むにつれて、アッシリア学はシュメール学やエラム学、ヒッタイト学など他の専門領域に分化しています。この進展により、楔形文字文化全体を単一の分野として捉えることはほぼ不可能になり、それぞれの特徴やアプローチに応じた研究が行われています。これにより、古代オリエント文化の多面的な理解が深まることが期待されています。

参考文献

• - 前田徹ほか『歴史学の現在：古代オリエント』山川出版社、2000年
• - 杉勇「アッシリア學」『世界歴史事典』第1巻 平凡社、1956年
• - 吉川守「アッシリア学」『世界大百科事典』第1巻 平凡社

これらの文献によりさらに深い知識を得ることが可能です。

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