アハイア県

アハイア県について

アハイア県（ギリシア語: Αχαΐα / Achaïa）は、ギリシャ共和国の西ギリシャ地方に属する行政区です。ペロポネソス半島の北部に位置し、古代にはアカイアと呼ばれた地域にあたります。県都はパトラで、人口は2001年に30万人を超えました。

地理

位置

アハイア県は、ペロポネソス半島の北部沿岸に位置しています。北部はコリンティアコス湾に面した肥沃な平野が広がっており、南部にはエリマントス山脈やキリニ山脈といった山々が連なっています。西はイリア県、東はコリンティア県と隣接しています。

地勢

県内には複数の山脈が連なっており、東部にはオンブロス山脈とマラティア山脈、中央部にはエリマントス山脈、南東部にはアロアニア山脈、南西部にはスコリス山脈、西部にはモヴリ山脈がそびえ立っています。また、ラリソス川やハラドロス川などの河川も流れています。森林は山地や西部の平原に多く見られ、高地部では標高の高い場所は植物が育ちにくく、それ以外は草原となっています。

気候

アハイア県は、夏は高温で冬は温暖な気候です。夏には海岸部で晴天が続く一方、高地部では曇りや雨が多くなります。冬は山地で雪が降る一方、低地部では気温が10℃前後となります。

主要な都市・集落

ペロポネソス半島の人口の約3分の1がアハイア県に居住しており、そのうちの3分の2は県都パトラに住んでいます。主要な工業地帯は、パトラの南20kmに位置するファレス近郊と、ヴラフネイカ周辺に広がっています。

主な都市・集落：

パトラ（パトラ市）
エギオ（エギアリア市）
カト・アハイア（西アハイア市）
パラリア（パトラ市）
オヴリア（パトラ市）
リオ（パトラ市）

歴史

先史時代

アハイアという名称は、古代ギリシアの叙事詩『イリアス』においてギリシア軍を指す言葉として用いられたアカイア人に由来します。紀元前13世紀頃のヒッタイトの文書にも、アカイア人はアヒヤワとして記録されています。『イリアス』の「船舶一覧」では、アカイア人はアルゴスからティリンスまでの人々を指すとされています。ドーリア人のペロポネソス半島への侵入により、アカイア人はこの地に追いやられたという説もあります。アカイア人の起源地はテッサリア地方南部のアカイア・フティオティス地域だと考えられています。

古代から近世

紀元前146年に共和政ローマによって征服された後、この地域はテッサリア、イピロス、アカルナニアを除くギリシア全土と共にアカエア属州となりました。新約聖書にもアカエアとして登場します。ローマ皇帝アウグストゥスは、アカエア属州を地理的に近いという理由で元老院属州としました。プラエトル経験者が総督として統治し、州都はコリントに置かれました。属州内にはローマ兵は配置されず、古来からの宗教や社会も維持されるなど、ローマの支配は寛容でした。アウグストゥス帝の死後、15年にはアカエア属州はマケドニア属州と合併し、モエシア属州の総督が管轄する皇帝属州となりましたが、44年に再び分割されました。67年には皇帝ネロによって自治権を得ますが、後のヴェスパシアヌス帝により再び元老院属州となりました。3世紀末のディオクレティアヌス帝の時代までローマ帝国の属州であり続け、東西分裂後は東ローマ帝国の領土となりました。13世紀には第4回十字軍によりアカイア公国が建国されましたが、15世紀半ばにはオスマン帝国に征服されました。16世紀末から17世紀にかけてヴェネツィア共和国の侵略を受けましたが、最終的にオスマン帝国の支配下に戻りました。

近代から現代

1821年、ギリシャ独立戦争においてアハイア県の地域はギリシャ王国の一部となりました。エギオはギリシャ人によって最初に解放された町です。当初はアハイア＝イリダ県として、現在のイリア県を含んだ約6,000km²の面積で成立しましたが、1899年に分割、1909年に再統合、1936年に再度分割されました。1919年から1922年の希土戦争では、小アジアからの難民が大量に流入し、パトラ郊外に居住地を建設して定住しました。第二次世界大戦やギリシャ内戦では多くの建造物が破壊されました。1994年には地震、2007年には山火事の被害を受けています。

行政区画

市（ディモス）

アハイア県は、以下の自治体（ディモス、市）から構成されます（2001年国勢調査時点）。

アイギアリア
エリモス
カラブリタ
パトラ
西アハイア

旧自治体（ディモティキ・エノティタ）

カリクラティス改革以前の広域自治体（ノモス）としてのアハイア県は、23の基礎自治体（21のディモス、2つのキノティタ）から構成されていました。改革後、旧自治体は新自治体（ディモス）を構成する行政区（ディモティキ・エノティタ）となっています。ディモティキ・エノティタはさらにキノティタ（都市・村落の共同体）に分けられます。

郡（エパルヒア）

2006年以降、法的な位置づけはなくなりましたが、以前は以下の郡がありました。

エギアリア郡（首府: エギオ）
カラヴリタ郡（首府: カラヴリタ）
パトラ郡（首府: パトラ）

交通

アハイア県内には以下の主要道路が整備されています。

欧州自動車道路E55号線
欧州自動車道路E65号線
国道5号線
国道8号線
国道8A号線
国道9号線
国道31号線
国道33号線
国道48号線
国道62号線

著名な出身者

アハイア県出身の著名人は以下の通りです。

アナスタシオス・ハラランビス (1862-1949、ギリシャ首相)
コスタス・ダヴルリス (1948-1992、サッカー選手)
テオドロス・ディリヤンニス (1820-1905、ギリシャ首相)
ディミトリオス・グナリス (1866-1922、ギリシャ首相)
コスタス・カツラニス (1979-、サッカー選手)
コンスタンディノス・コンスタンドプロス (1832-1910、ギリシャ首相)
アンドレアス・ミハラコプロス (1876-1938、ギリシャ首相)
タノス・ミクルツィコス (1947-、音楽家)
コスティス・パラマス (1859-1943、詩人)
ゲオルギオス・パパンドレウ (1888-1968、ギリシャ首相)
ゲオルギオス・パパドプロス (1919-1999、ギリシャ軍司令官)
ベニゼロス・ルフォス (1795-1868、ギリシャ首相)
コンスタンディノス・ステファノプロス (1926-、ギリシャ大統領)
ディミトリオス・トファロス (1877-1966、重量挙げ選手・金メダリスト)
* アレクサンドロス・ザイミス (1855-1936、ギリシャ首相)

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