アントニアッツォ・ロマーノ

アントニアッツォ・ロマーノ（Antoniazzo Romano、1430年頃 - 1510年頃）は、本名をアントニオ・ディ・ベネデット・アクィロ・デリ・アキリ（Antonio di Benedetto Aquilo degli Aquili）といい、ルネサンス期のイタリアで活躍した画家です。彼は15世紀のローマ派を代表する画家の一人として知られています。

アントニアッツォはローマで生まれ、初期の作品ではラツィオ地方の画家たちと同様に、ベノッツォ・ゴッツォリやフラ・アンジェリコの装飾的な画風から影響を受けました。彼の初期の記録に残る作品として、1461年にスフォルツァ家のアレッサンドロ・スフォルツァの依頼で、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂に描かれた『聖ルカと聖母子』のレプリカ（真贋は不明）があります。しかし、本格的な活動は1464年からローマ教皇の下で働き始めてから始まり、リエーティに『聖者と聖母子』の三連祭壇画を制作しました。1467年には、ローマのサンティ・アポストリ教会ベッサリオン枢機卿礼拝堂の装飾を手掛けました。この装飾の中心となったのは聖母のイコンで、サンタ・マリア・イン・コスメディン教会にあったビザンティン美術のイコンを複製したものでした。この作品は、アントニアッツォがビザンティン美術を基にした聖母画を多く制作するきっかけとなり、彼の代表作の一つとして知られています。その後、アントニアッツォはローマのTor de' Specchi修道院に聖フランチェスカ・ロマーナの生涯を描いたフレスコ画を制作し、さらにヴェネツィア宮殿の公共ラウンジの装飾も担当しました。

1470年代には、バチカン宮殿の装飾を、ペルジーノ、メロッツォ・ダ・フォルリ、ドメニコ・ギルランダイオといった同時代の著名な画家たちと共同で手がけました。これらの画家たちの影響を受け、アントニアッツォの作品は中世的な特徴を残しつつも、人物像の穏やかさや、衣服の装飾的な模様が洗練されていきました。メロッツォと共にサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会のフレスコ画を制作し、続けて同教会のために『受胎告知』（1482年）を描きました。また、1475年から1480年にかけては、ローマ教皇シクストゥス4世が制定した聖母の祝日を広めるため、多くの聖母像の祭壇画や板絵を制作しました。

アントニアッツォの作品は、後年になるにつれてマニエリスムの要素が強くなっていきました。彼の作品は多くの画家によって模写されましたが、模写されたものが彼の作品と誤認されることも少なくありませんでした。彼は、1478年にローマの画家・彩飾者のギルドである聖ルカ・アカデミアを創設した3人のうちの1人であり、その法規に署名しています。アントニアッツォの作品は、その高い芸術性から、アメリカ合衆国郵便公社が1991年のクリスマス向け名画切手に、ヒューストン美術館所蔵の『寄進者と聖母』を選んだことからもわかるように、今日においても高く評価されています。

主要作品としては、1468年に制作されたTor de' Specchi修道院のフレスコ画『フランチェスカ・ロマーナの一生』、1470年頃の『玉座の聖母子』（サンタ・マリア・デッラ・コンソラッツィオーネ教会、ローマ）、1474年頃の『聖ペテロ、聖パウロと聖母子』（サン・ピエトロ教会、フォンディ）、1485年の『受胎告知』（サンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会、ローマ）、1487年の『幼子イエスと聖者たちと玉座の聖母』（イタリア国立古典絵画館、ローマ）、そして1480年から1485年の間に制作された『聖ラウレンティウスと聖アンデレとキリスト降誕』（イタリア国立古典絵画館、ローマ）などが挙げられます。これらの作品を通して、アントニアッツォ・ロマーノはルネサンス期のローマにおける重要な画家としての地位を確立しました。

アントニアッツォ・ロマーノに関する詳細な情報は、クラウディオ・レンディーナの『Enciclopedia di Roma』などの文献で確認することができます。

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