イタリア領トリポリタニア

イタリア領トリポリタニア：北アフリカにおけるイタリア植民地支配の歴史

イタリア領トリポリタニア（イタリア語: Tripolitania Italiana、アラビア語: طرابلس الإيطالية）は、1911年から1934年まで現在のリビアに存在したイタリアの植民地です。この地は、1911年のイタリア・トルコ戦争の結果、オスマン帝国からイタリアに割譲されました。リビアの西北半分を占め、主要都市はトリポリでした。1934年、イタリア領キレナイカと統合され、イタリア領リビアとして再編されました。

征服と植民地化

イタリア領トリポリタニアとイタリア領キレナイカは、伊土戦争中の1911年に形成されました。オスマン帝国のスルタンは、アラブ人による抵抗にも関わらず、ローザンヌ講和条約に署名し、リビアをイタリアに割譲しました。イタリアは、植民地時代の騎兵隊であるサヴァリを広範囲に活用しました。サヴァリは、1911年から1912年にかけてリビアのベルベル人から採用され、リビア植民地軍の王立軍団の一部を形成しました。

第一次世界大戦中、サヌーシー教団のシェイク・シディ・イドリース・アル・マーディアス・サヌーシー（後のイドリース1世）は、リビアの抵抗運動を主導しました。1913年にイタリア軍がキレナイカに侵攻すると、サヌーシー教団は反撃しました。オスマン帝国の圧力により、アフメド・シャリフ・アズ・サヌーシーがその地位を放棄し、いとこのイドリースが後を継ぎました。

イドリースはイギリスとの暗黙の同盟を確立し、サヌーシー教団は外交的地位を得ました。1916年7月、イドリースはイギリス軍を仲介として、イタリア軍との交渉を開始し、1916年4月のアルズワイティナ合意と1917年4月のアクラマ合意が成立しました。アクラマ合意により、内陸のキレナイカの大部分がサヌーシー教団の管理下に置かれました。しかし、サヌーシー教団と新たに設立されたトリポリタニア共和国との関係は良好とは言えず、軍事衝突も発生しました。

第一次世界大戦後、オスマン帝国はリビアの領有権を放棄し、イタリアに割譲しました。しかし、イタリアは国内の経済的、社会的、政治的問題により、リビアでの軍事活動を再開することができませんでした。その結果、1919年6月にトリポリタニア共和国で、10月にキレナイカで「Legge Fondamentale」として知られる法令が発行され、すべてのリビア人にイタリアとの合同市民権が付与されました。

1920年10月、イタリアとキレナイカの間でアル・ラジマ合意が成立し、イドリースはキレナイカ首長の称号を与えられ、特定のオアシスを自主的に管理することが許可されました。また、イタリア政府から奨学金が支給され、サヌーシー教団の支配下にある地域の警備と管理に責任を持つことに同意しました。

しかし、1921年末までにサヌーシー教団とイタリア政府との関係は再び悪化しました。トリポリタニアのリーダーであるラマダン・アルスウェリーが1920年8月に死亡すると、共和国は内戦に陥りました。1922年1月、国内の安定のために、イドリースがキレナイカのサヌイ首長国をトリポリタニアに拡大することを要求することに同意しました。しかし、新たなファシストの指導者ベニート・ムッソリーニの下でイタリアがサヌーシー教団に対して軍事的に報復することを恐れたイドリースは、1922年12月にエジプトに亡命しました。

ファシスト体制下のトリポリタニア

ムッソリーニが権力を握ると、戦闘は激化しました。リビアの人々の抵抗により、イタリアによるトリポリタニアとキレナイカの植民地化は難航し、1930年代初頭までイタリア王国は地域を完全に支配することができませんでした。1929年、トリポリとキレナイカは1つの植民地として統合されました。1931年から1932年にかけて、バドリオ将軍の指揮下にあるイタリア軍は鎮圧作戦を行い、ロドルフォ・グラツィアーニ将軍はリビア人の抵抗を打ち砕くことを許可されました。

サヌーシーのシャイフであるオマル・ムフタールは、リビアの抵抗運動を組織し、約20年に渡って主導しました。ムフタールは1931年9月16日に捕らえられ処刑されましたが、彼の抵抗は人々に影響を与え続けました。1934年までに、リビアの先住民族の抵抗は鎮圧され、イタリア領リビアと呼ばれる政治的実体が作成されました。その後1937年に、植民地は行政的にトリポリ、ミスラタ、ベンガジ、デルナの4つの州に分割されました。

キレナイカとの統合とその後

1934年、イタリア領トリポリタニアはイタリア領リビアの一部となりました。1937年、北トリポリタニアはトリポリ県とミスラタ県に分割され、1939年にはイタリア王国の第四海岸に含められました。1943年初頭、この地域は連合国に侵攻され、占領され、イタリアの植民地支配が終わりました。第二次世界大戦後、イタリアはトリポリタニアの植民地を維持しようとしましたが失敗し、1947年2月の平和条約ですべてのイタリア植民地を放棄しました。

植民地行政と人口

トリポリ県は、イタリア領リビアの中で最も重要な県であり、いくつかの地区に細分化されました。1930年代後半には、多くのイタリア人入植者がトリポリタニアに移住し、主にトリポリとその周辺地域に居住しました。1939年には、トリポリタニア全体に約60,000人のイタリア人がおり、そのほとんどがトリポリに住んでいました。イタリア人の移住により、トリポリタニア沿岸全体で経済が大きく改善されました。

インフラストラクチャー

イタリア領トリポリタニアでは、イタリアは物理的なインフラストラクチャーに大幅な改善を加えました。最も重要なのは、トリポリとベンガジの間の沿岸道路と、トリポリと各地を結ぶ鉄道でした。その他、トリポリ港の拡張やトリポリ空港の創設などが行われました。1930年代には、トリポリタニア沿岸にイタリア人とリビア人のための村が建設されました。

考古学と観光

イタリア当局は、古典考古学をプロパガンダとして利用し、イタリアがこの地域に駐在することを正当化しました。1920年代後半になると、レプティス・マグナやサブラタなどのローマ都市の発掘調査に資金を提供し始めました。ファシスト党が政権を握ると、海外の考古学探検隊はリビアから追い出され、すべての考古学研究はイタリアの美術館や雑誌にのみ利益をもたらす中央集権的なイタリアの発掘調査政策の下で統合されました。

国際的に重要なレーシングカーイベントであるトリポリグランプリの創設により、観光業はさらに促進されました。

主な軍事・政治的展開

1911年：イタリア・トルコ戦争勃発。イタリアがトリポリとフムスを征服。
1912年：ローザンヌ講和条約によりイタリア・トルコ戦争終結。オスマン帝国はトリポリタニアとキレナイカをイタリアに割譲。
1914年：イタリアのガートへの進出。
1915年：イタリアはワディ・マルシットの戦いとアル・ガルダビヤの戦いで敗北。
1922年：イタリア軍がミスラタを占領し、トリポリタニアの再征服を開始。
1924年：スルトを征服し、イタリアはトリポリタニアのほとんどを支配下に置いた。
1927年冬 - 1928年：「29度線作戦」が開始され、シドラ湾を征服。
1929年：ピエトロ・バドリオが、トリポリタニアとキレナイカの唯一の統治者となった。
1929年 - 1930年：フェザーンの征服。
1934年：トリポリタニアがイタリア領リビアに編入される。

参考文献

Chapin Metz, Hellen. Libya: A Country Study. Washington: GPO for the Library of Congress, 1987.
Del Boca, Angelo. Gli italiani in Libia. Vol. 1: Tripoli bel suol d'Amore. Milano, Mondadori, 1997.
* Sarti, Durand. The Ax within: Italian Fascism in Action. Modern Viewpoints. New York, 1974.

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