イランとロシアの関係

イランとロシアの関係：歴史的変遷と現代の協力

イランとロシアの関係は、16世紀末に遡る長い歴史を持ちます。両国間の関係は、時代ごとに緊張と協調を繰り返し、複雑に変化してきました。この記事では、その歴史的な変遷と現代における協力関係について詳細に解説します。

20世紀までの関係

18世紀後半、ガージャール朝が成立すると、イランとロシアの関係は活発化しました。ガージャール朝は国内の混乱で弱体化し、ヨーロッパ列強がイラン周辺に進出する中で、ロシア帝国は南下政策を推し進めました。ロシアは、コーカサスやカスピ海方面に進出し、イランは領土を失いました。1813年のゴレスターン条約、1828年のトルコマーンチャーイ条約で、イランは領土割譲とロシアへの領事裁判権を認めざるを得なくなりました。さらに、ロシアは中央アジアにも進出し、イランは伝統的な地盤を失いました。

19世紀末には、ロシアの勢力がイランの多くの都市に及ぶほど拡大しました。イランは、ユーラシア大陸での勢力圏を巡る英露対立（グレートゲーム）の舞台となり、イギリスも勢力を拡大しました。イランの中央政府は、英露の承認なしに閣僚を選任することさえできない状況でした。1911年には、ロシアによるマシュハドのモスク砲撃や、国民議会砲撃事件などが発生し、イラン全域で反露感情が高まりました。

20世紀初頭、ロシア帝国のプレゼンスに対する抗議活動の結果、ギーラーン護憲運動が発生しましたが、1917年のロシア革命で中断しました。ロシア帝国崩壊後、成立したソビエト連邦もイランへの干渉を続けました。1920年代には、イラン最後の君主制政府であるパフラヴィー朝が成立しました。ソ連の支援を受けた共産主義国家の独立運動がイラン北部で試みられましたが、短命に終わりました。第二次世界大戦中、ソ連はイギリスと協力してイランを占領し、対ソ支援ルートとして利用しました。

冷戦期には、イランは反共ブロックの一員としてソ連に対峙し、ロシアの影響力は一時途絶えました。しかし、モハンマド・レザー・パフラヴィーの改革が社会混乱を招き、イラン革命が勃発。イラン・イスラム共和国が成立し、反米国家となりました。

イスラーム革命後の関係

イラン・イラク戦争中、ソ連はイラクに大量の通常兵器を供給しました。イランの最高指導者ホメイニは、ソ連の共産主義をイスラム教とは相容れないものと見なし、ソ連のアフガニスタン侵攻も対立要因となりました。ソ連崩壊後、ロシア連邦は欧米に対抗し、勢力圏の再建を目指し、イランと接近。軍事協力を含めて関係を緊密化させています。

1990年代半ばには、ロシアはイランの核開発計画を支援し、ブーシェフルの原子炉プラント建設に合意しました。イランはイスラム教シーア派の擁護者を自任し、レバノンのヒズボラやパレスチナを支援していますが、ロシアとの協力関係を重視し、ロシアがチェチェン紛争で独立運動を鎮圧したことに対しては沈黙しました。

21世紀の関係

アメリカ合衆国およびEUとイランの対立が深まるにつれ、イランは中国＝ロシア同盟に引き寄せられています。イランとロシアは、中央アジアにおけるアメリカの影響力拡大を抑制することに共通の利害を持ち、2005年にはイランは上海協力機構のオブザーバー国となりました。2023年には正式加盟する予定です。

2003年のイラク戦争でフセイン政権が崩壊すると、イランはイラク国内のシーア派を通じて影響力を拡大しました。シリア内戦では、イランはアサド政権を支援し、ロシアも2015年から空爆でアサド政権を支援しました。イランは、ロシアの空軍基地を一時使用しました。2018年には、カスピ海の法的地位に関する協定が締結されましたが、イランには不利であると批判されました。

軍事面では、イラン空軍はロシア製航空機の割合が増加しており、2022年ロシアのウクライナ侵攻では、イラン製自爆ドローンが使用されています。経済面でも、西側諸国の経済制裁下にあるロシアとイランは、貿易額を増やし、経済協力を深めています。両国間の銀行間通信システムも接続されました。

外交使節

過去の主な在イラン・ロシア大使、在イラン・ソビエト連邦大使、在ロシア・イラン大使、在ソビエト・イラン大使は以下の通りです。

ウラジーミル・ヤコヴレヴィチ・エロフェーエフ（1968～1977年）
ウラジーミル・ミハイロヴィチ・ヴィノグラードフ（1977～1982年）
ヴィル・コンスタンチノヴィチ・ボルドィレフ（1982～1987年）
ウラジーミル・ヴィクトロヴィッチ・グデフ（1987～1991年）
ウラジーミル・ヴィクトロヴィッチ・グデフ（留任、1991～1993年）
セルゲイ・ミハイロヴィチ・トレチヤコーフ（1993～1997年）
コンスタンティン・ヴィクトロヴィッチ・シュワロフ（1997～2001年）
アレクサンドル・ゲオルギエヴィッチ・マリヤーコフ（2001～2005年）
アレクサンドル・アレクセビッチ・サドフニコフ（2005～2011年）
レヴァン・セミョーノヴィッチ・ジャガリャン（2011年～）
ナイマトッラー・イーザディー（～1995年）
メフディー・サファリー（1995～2001年）
ゴラームレザー・シャーファイー（2001～2005年）
ゴラームレザー・アンサーリー（2005～2008年）
マフムードレザー・サッジャーディー（2008～2013年）
メフディー・サナーエイ（2013年～）

結論

イランとロシアの関係は、歴史的に複雑な変動を経験してきましたが、近年は両国が互いに接近し、協力関係を深めていることがわかります。両国の関係は、今後も国際情勢を大きく左右する要素の一つとして、注目されるでしょう。

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