インドネシアの鉄道

インドネシアの鉄道は、主に国営企業であるクレタ・アピ・インドネシア（KAI）とその子会社によって運営されています。インフラは国有で、運営会社が線路使用料を支払う形態をとっています。鉄道行政は運輸省が所管しています。

歴史

インドネシアの鉄道の歴史は、オランダ植民地時代に遡ります。1864年、オランダ植民地政府の指導の下、「蘭印鉄道」がジャワ島で建設を開始しました。1867年にはスマランで最初の路線が開通し、その後、南へと路線を延伸しました。

当初は標準軌で建設されましたが、建設費が高額になることが判明し、以後は狭軌（1,067mm）に変更されました。1873年にはバタヴィア（ジャカルタ）とバイテンゾルフ（ボゴール）を結ぶ路線が狭軌で開業しました。採算性の低い区間には民間企業が参入しなかったため、1875年に「蘭印国鉄」が設立され、路線網の拡充に貢献しました。

1884年にはバンドンまで、1888年にはスラバヤからソロ、ジョグジャカルタへと路線が延長されました。1894年にはジャカルタとスラバヤ間が、蘭印鉄道と蘭印国鉄の乗り継ぎで結ばれました。その後、ソロとジョグジャカルタ間は3線化され、1929年には狭軌に改軌されました。ジャカルタとスラバヤ間は直通列車で13時間で結ばれました。

スマトラ島でも1876年にアチェ州で軍事目的の鉄道が開通し、1891年にはパダン市と鉱山を結ぶ鉄道が開業しました。1917年にはアチェ鉄道が開通しました。

スラウェシ島では、1898年から1901年にかけてマドゥーラ蒸気軌道会社によって路線が建設されましたが、1930年に廃線となりました。また、市内軌道としては、1869年にバタヴィアで馬車軌道が開通し、その後蒸気運転、路面電車となりましたが、1962年までに全廃されました。スラバヤの市内軌道は、1889年に蒸気機関車牽引で開通し、電化されましたが、1968年に廃止されました。

1941年の太平洋戦争により、日本軍がインドネシアを占領し、一部路線の整理や軌間の統一が行われました。

インドネシア独立後

1945年の独立宣言により、国内の鉄道は全て国有化されました。しかし、独立戦争やその後の混乱により鉄道は荒廃しました。1953年頃からディーゼル機関車の導入により無煙化が進められましたが、自動車の普及により利用客が減少しました。そのため、1960年代から世界銀行や各国の支援によって近代化が進められました。1994年には日本の支援でジャワ北線の軌道や橋梁の修復が完了しました。

1991年に国鉄は公社に移行し、1999年にはクレタ・アピ・インドネシアに改組されました。上下分離方式が採用され、インフラは政府が、車両と駅設備は鉄道会社が保有しています。現在、他交通機関との競争力強化が求められています。

ジャカルタで進められているMRT計画には、KAIは運営に関与せず、ジャカルタ特別州が鉄道運営会社を設立する予定です。

事業者

主な鉄道事業者は以下の通りです。

クレタ・アピ・インドネシア（KAI）：インドネシア全土の主要鉄道路線、LRTの運営
ケレタ・コミューター・インドネシア：KRLコミューターラインの運営
PT Railink：空港連絡鉄道の運営
PT Kereta Api Logistik：鉄道貨物輸送の運営
PT Kereta Cepat Indonesia–China：ジャカルタ・バンドン高速鉄道の運営
PT MRT Jakarta：ジャカルタ都市高速鉄道の運営
PT LRT Jakarta：ジャカルタLRTの運営
PT Angkasa Pura II：スカルノ・ハッタ空港スカイトレインの運営

運行概要

スマトラ島

スマトラ島には、北部（メダン）、中部（パダン）、南部（パレンバン）の3箇所にそれぞれ独立した鉄道が存在します。北スマトラはDivre I、西スマトラはDivre II、南スマトラはDivre IIIが管轄しています。スマトラ島の鉄道は全て非電化で、貨物輸送が中心です。

Divre I: メダンからランタウ・ブラハット、タンジュン・バライ、シアンタール方面への路線、空港連絡鉄道など
Divre II: パダンからサワルントへの路線、一部にラックレール区間あり
Divre III: パレンバンからルブックリンガウ、バンダルランプンへの路線、石炭輸送がメイン

また、南スマトラには、モレックと呼ばれる個人所有のトロッコが密林を走る路線もあります。

ジャワ島

ジャワ島には、KAIの9つの地域事業部が設置されています。主な路線は、メラク - ジャカルタ、ジャカルタ - スラバヤ、ジャカルタ - バンドン、スラバヤ - バニュワンギなどです。ジャワ島の鉄道輸送は旅客輸送が中心です。

旅客列車の等級は、Special、Eksekutif、Bisinis、Ekonomiの4つがあります。ジャカルタ周辺では、通勤電車（KRLコミューターライン）が運行しています。また、都市モノレールやジャカルタMRTの建設も進められています。

その他、製糖工場や森林鉄道などのナローゲージ路線も存在します。

ジャカルタ-スラバヤ間の在来線高速化計画

2017年、インドネシア政府はジャカルタとスラバヤを結ぶジャワ北幹線鉄道の高速化計画に日本を選びました。しかし、2023年に計画から日本が外され、中国が参加する見通しです。

鉄道路線建設計画と建設中路線

スラウェシ島: マカッサルとマナドを結ぶトランス・スラウェシ鉄道計画が進行中
スマトラ島: パレンバンのLRT建設が進められている
パプア島: 鉄道建設計画の事業可能性調査が行われている

日本からの支援

インドネシアの鉄道は、日本から多大な支援を受けています。近年まで最大の経済援助国は日本であり、円借款は3兆円に上ります。鉄道分野への支援も3000億円を超え、老朽施設の修復、車両納入、ジャカルタ首都圏の近代化などに貢献してきました。

車両面では、INKA社への技術支援や中古車両の譲渡が行われています。2013年からはJR東日本の205系電車が大量に譲渡され、現在も多くの日本の中古車両が活躍しています。

ジャワ島高速鉄道

2015年、ジャカルタ - バンドン間の高速鉄道建設で、日本は中国に敗れました。中国案は、インドネシア政府の財政負担を伴わないという提案が決め手となりました。

しかし、中国の高速鉄道計画には資金繰りや土地収用などの問題が指摘されています。

車両記号・番号

インドネシアの鉄道車両には、独自の記号と番号が割り当てられています。機関車は動輪数、形式、製造年、製造番号で構成され、旅客用車両はアルファベットと6桁の数字で表されます。貨車は車種、許容荷重、製造年、個体番号で構成されます。

脚注

注釈

参考文献

「ミニ特集日本の鉄道技術の東南アジアへの展開--日本の鉄道技術で交通問題を解決できるか(第1回・前編)インドネシア編」『土木学会誌』
“全国的な鉄道網整備に注力　インドネシア、経済活動活性化”. SankeiBiz.
（財）運輸政策研究機構インドネシアの運輸(PDF)
JARTSニュースジャカルタMRT建設計画（2004年1月1日）
古賀俊行著『インドネシア鉄道の旅　魅惑のトレイン・ワールド』2014年7月

関連項目

コミューターライン
ジャカルタMRT
インドネシア高速鉄道計画
インドネシアの鉄道の車両番号
日本から国外に譲渡された中古鉄道車両
インドネシア語の鉄道用語一覧
スマトラ横断鉄道

外部リンク

PT. Kereta Api
インドネシアの鉄道事情八千代エンジニヤリング国際事業本部

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