エドワード・オブ・ウェストミンスター

エドワード・オブ・ウェストミンスター：薔薇戦争を生き、そして散った王太子

エドワード・オブ・ウェストミンスター (1453年10月13日-1471年5月4日) は、イングランド王ヘンリー6世と王妃マーガレット・オブ・アンジューの間に生まれた一人息子であり、王太子(プリンス・オブ・ウェールズ)でした。歴史上、戦死した唯一のプリンス・オブ・ウェールズとして知られています。彼の短い生涯は、イングランドを揺るがした薔薇戦争と深く結びついており、その運命は時代の激流に翻弄されました。

ウェストミンスター宮殿で生まれたエドワードは、洗礼の際にはサマセット公エドムンド・ボーフォートを代父に迎えました。しかし、当時ヘンリー6世は精神的に不安定な状態にあったため、息子の誕生を認識できなかったと伝えられています。このことから、マーガレットとサマセット公の不倫の産物という噂が流れたこともありましたが、確証はなく、ヘンリー6世自身もエドワードを自身の息子として疑うことはありませんでした。

1454年、ヘンリー6世が精神状態を回復すると、エドワードは正式に認知され、ウィンザー城でプリンス・オブ・ウェールズの称号を授けられました。しかし、この王太子の誕生は、ヨーク公リチャードにとって大きな脅威となりました。ヨーク公は王位継承権を主張しており、エドワードの存在は彼の野望を阻むものだったのです。この対立が、サマセット公との抗争を激化させ、1455年の第1次セント・オールバンズの戦いを引き起こし、薔薇戦争の始まりとなりました。

続く薔薇戦争の中で、エドワードは幼少期を激動の中で過ごしました。サマセット公が戦死し、ヨーク公が一時的に政権を掌握する一方、マーガレットはエドワードを守るため、ランカスター派を率いて抵抗を続けました。ブロア・ヒースの戦いなど、幾度となく繰り広げられた戦いで、幼いエドワードは常に危険に晒されていました。ヘンリー6世の精神不安定さも状況を複雑にしました。マーガレットが軍の指揮を執り、政治的な駆け引きを繰り広げる中で、エドワードは運命の波に翻弄される存在でした。

1460年、ノーサンプトンの戦いでヘンリー6世が捕虜となり、ヨーク公が王位継承権を認められると、マーガレットはエドワードを連れて戦場から脱出しました。その後、ウェイクフィールドの戦いでヨーク公が戦死するなど、激しい攻防が続きました。しかし、ヨーク公の息子エドワード4世の即位により、ランカスター派はタウトンの戦いで敗北を喫し、マーガレットとエドワードはスコットランドやウェールズを転々とし、最終的にはフランスに亡命しました。

イングランドでヨーク派が支配を確立する中、マーガレットはウォリック伯リチャード・ネヴィルと同盟を結び、1470年、エドワードはウォリック伯の娘アン・ネヴィルと結婚しました。ウォリック伯はエドワード4世を追放し、ヘンリー6世を復位させることに成功しますが、この状況も長くは続きませんでした。

1471年、マーガレットとエドワードはイングランドに戻りますが、ヘンリー6世は廃位され、ウォリック伯もバーネットの戦いで戦死。エドワード4世が王位を奪還していました。絶望的な状況の中、マーガレットとエドワードはテュークスベリーの戦いで最後の抵抗を試みましたが、ランカスター派は敗北し、マーガレットは捕虜となりました。エドワードは戦場で命を落としました。

エドワードの死に関する伝承では、グロスター公リチャード（後のリチャード3世）に捕らえられ、エドワード4世を侮辱したため、処刑されたと伝えられています。彼の遺体はテュークスベリー修道院に埋葬されました。未亡人となったアン・ネヴィルは、翌年グロスター公と再婚しました。ヘンリー6世は獄死、マーガレットはフランスへ送還され、ランカスター派は崩壊しました。エドワード・オブ・ウェストミンスターの短い生涯は、薔薇戦争という激動の時代の悲劇的な象徴として、歴史に刻まれています。

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