エミー・ヴェルヘイ

エミー・ヴェルヘイ（Emmy Verhey）は、1949年3月13日にアムステルダムで生まれたオランダのヴァイオリニストです。

生い立ちと修学

7歳の時に父からヴァイオリンの手ほどきを受け、早くからその才能は神童として認められました。8歳でオスカー・バックに師事し、その後、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団のコンサートマスターを務めたヘルマン・クレバースやテオ・オロフ、さらにヴォルフガング・シュナイダーハン、ベラ・デカニーといった著名なヴァイオリニストたちからも指導を受けました。

1966年には若くしてチャイコフスキー国際コンクールに挑戦。入賞は逃したものの、大会史上最年少でのファイナリストとなり、国際的に注目を集めました。翌1967年にはオスカー・バック・コンクールで優勝を果たし、その後にモスクワへ留学。約1年間にわたり、巨匠ダヴィッド・オイストラフのもとで研鑽を積みました。1971年にはアイントホーフェンで開催されたトロンプ国際音楽コンクールでも優勝しています。

ヴァイオリニストとしての活動

1970年代に入ると、エミー・ヴェルヘイは演奏家、録音アーティストとして精力的に活動を開始しました。ベルナルト・ハイティンク、リッカルド・シャイー、マリス・ヤンソンス、レナード・バーンスタイン、デイヴィッド・ジンマン、ジャン・フルネ、エドゥアルド・マルトゥレといった世界的な指揮者たちとの共演を重ねました。また、ヴァイオリニストとしてはダヴィッド・オイストラフとその息子イーゴリ、ユーディ・メニューイン、ピアニストのマリア・ジョアン・ピレシュ、ユーリ・エゴロフ、チェリストのヤーノシュ・シュタルケルなど、多くの著名な演奏家とも共演しています。これまでに、ヨーロッパ、アメリカ、イスラエル、そして日本を含むアジアなど、世界各地で演奏活動を展開しました。

教育者としても貢献しており、1983年から2002年までの長きにわたり、ユトレヒト音楽院で教鞭を執りました。1991年には、同音楽院の学生たちを中心に、バロックから現代音楽まで幅広い時代の作品に取り組む弦楽アンサンブル「カメラータ・アントニオ・ルチオ」の共同設立者の一人となりました。

使用楽器に関しては、1970年代後半に購入した1723年製のストラディヴァリウス「アール・スペンサー」を長く愛用していましたが、1990年代には1678年製のグァルネリを入手し、以後これを使用しました。

演奏のレパートリーは非常に幅広く、古典派から現代音楽に至るまで、多岐にわたる作品を取り上げていました。

録音活動も積極的に行い、バッハやモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全集、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全集といった大規模なプロジェクトに加え、メンデルスゾーン、ドヴォルザーク、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲、ブラームスの二重協奏曲など、数多くの主要な作品の録音を残しています。

エミー・ヴェルヘイは、2015年末をもって演奏活動から引退しました。長年にわたり、その高い技術と豊かな音楽性で聴衆を魅了し、また後進の指導にも情熱を注いだ、オランダを代表するヴァイオリニストの一人です。

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