エンブラエル レガシー 500

エンブラエル レガシー 500/450 (EMB-550/EMB-545)

エンブラエル レガシー500/450は、ブラジルの航空機メーカー、エンブラエルが開発した中型ビジネスジェットです。2008年4月に開発が開始され、平床で人が立てる高さのキャビンと、フライ・バイ・ワイヤ式の操縦系統を特徴としています。このシリーズは、長胴型のレガシー500（EMB-550）と短胴型のレガシー450（EMB-545）の2機種で構成されています。

開発の背景

2007年8月、エンブラエルはNBAA（全米ビジネス航空協会）総会で、フェノム300とレガシー600の間に位置づける2つのコンセプト機を公表しました。これらはそれぞれ、MSJ（中型機）とMLJ（中型軽量機）と呼ばれ、市場の約22%を占めるタイプでした。両機は平床で人が立てる高さのキャビンを共有しますが、MLJが4,074kmの航続距離を持つ一方で、MSJは8人乗りで5,186kmの航続距離を持つように152cm長く設計されました。

2008年4月、エンブラエルは7億5000万ドルを投資し、長胴型を2012年、短胴型を2013年に市場投入する計画を発表しました。これらの機体には、ハネウェルHTF7500Eターボファンエンジン、ロックウェル・コリンズ製のPro Line Fusionコックピット統合電子機器、パーカー・ハネフィン製のフライ・バイ・ワイヤ操縦系統が採用されました。

2008年5月、EBACE（ヨーロッパ・ビジネス航空博覧会）で、長胴型はレガシー500、短胴型はレガシー450と命名され、価格はそれぞれ1840万ドルと1525万ドルに設定されました。両機種はシステムを95%共通化しています。

2016年6月、フロリダ州メルボルンに組立ラインが開設されました。これは既存のフェノム100/300の製造ラインに加えられたもので、最終仕上げ施設や飛行準備施設も併設されました。このラインでは、年間96機のフェノムと72機のレガシーを組み立てることができます。フロリダで生産された最初のレガシー450は2016年12月に納入され、胴体はブラジルのボトゥカトゥ、翼はポルトガルのエヴォラで製造されました。

最初のレガシー500は2017年1月に最終組立が始まり、同年7月に初飛行しました。エンブラエルは、レガシー500/450の生産の大部分をフロリダに移管する計画ですが、具体的なスケジュールは未定です。

機体デザイン

レガシー500/450は、T字尾翼を持つ低翼機であり、与圧キャビンと後部に2基のターボファンエンジンを搭載しています。完全に格納可能な降着装置を備え、舗装された滑走路での運用に特化しています。グラスコックピットには4つの大型マルチファンクションディスプレイが搭載されています。操縦は、オートパイロット、自動推力調整、閉ループ制御、フライ・バイ・ワイヤ式操縦系統の監視機能を持つ飛行管理装置を介して行われます。

機体は、昼夜間、VFR（有視界飛行方式）、IFR（計器飛行方式）での認証を受けており、RVSM（短縮垂直間隔）、凍結気象状態での飛行、拡大洋上飛行、カテゴリー2 ILS（計器着陸装置）、標高4,200mまでの空港運用、スティープアプローチ（急角度での降下）も可能です。

エンブラエルは、EVS（エンハンスト・ビジョン・システム）を515,000ドルで提供しており、これにより目視基準を必要とする着陸決心高度を接地点の上空30mまで下げることができます。このシステムは、ロックウェル・コリンズのHGS-3500ヘッドアップディスプレイとEVS-3000赤外線カメラで構成されています。

レガシー500 (EMB-550)

レガシー500の開発は、フライ・バイ・ワイヤ式操縦系統のソフトウェア開発の遅延により、当初のスケジュールよりも遅れました。2011年12月23日、最初のプロトタイプが完成し、地上試験とシステム評価に用いられました。初飛行は2012年11月27日に行われ、2014年8月12日にブラジル民間航空局から型式証明を取得、同年の10月11日に最初の機体がブラジルの企業に納入されました。

レガシー500は、最大12人乗りで、乗客8人の場合は5,460km、乗客4人の場合は5,788kmの航続距離を持ちます。フライ・バイ・ワイヤ制御は安全性と快適性を向上させています。初期巡航高度13,100mへの上昇には22分かかり、後退角27度で長距離巡航時には807km/hの真対気速度を実現します。これはマッハ0.76～0.78に相当しますが、マッハ0.80で巡航すると航続距離は3%短くなります。

レガシー500は、セスナ サイテーション ソヴリン+やサイテーションXなどの中型機、ガルフストリームG280やボンバルディア チャレンジャー350のような高性能中型機と競合します。

レガシー450 (EMB-545)

レガシー450の初飛行は2013年12月28日に行われ、2015年8月11日にブラジルで、同年8月31日にアメリカで型式証明を取得しました。レガシー450は、レガシー500より122cm短く、飛行寿命は27,500時間です。セスナ サイテーション ラティチュードやサイテーション ソヴリンと競合します。2016年7月には、航続距離が5,378kmに延長され、乗客数は7人から9人に変更されました。

運用状況

納入された50機以上のレガシー500のうち、約70%がアメリカにあり、主にフォーチュン1000企業や富裕層が所有しています。メキシコのフライ・アクロスは4機のレガシー500を運航しており、フレックスジェットはレガシー450と500をそれぞれ5機ずつ購入予定で、最大の運用者となる見込みです。

レガシー500の平均的な飛行時間は2時間以下で、単独所有者は年間150～200時間、複数所有者は年間700時間以上飛行しています。最初の1時間の燃料消費は1,000～1,090kgで、その後は重量が減るにつれて680～820kgまで低下します。

ハネウェルHTF7500Eエンジンの1時間あたりのメンテナンスコストは642～658ドルです。機体コストは、利用が少ない場合は1時間あたり321ドルに加えて月額固定費4,300ドルです。バッテリーと飲料水サービスを除き、多くの部品が圧力容器の外に設置されているため修理が容易で、出発の信頼性は99%以上です。

スペック

スペックに関する詳細な情報は、参照元の資料をご確認ください。

参照

Embraer Legacy 500 - エンブラエル公式ウェブサイト
Embraer Legacy 450 - エンブラエル公式ウェブサイト
Aviation Week Pilot Report: Legacy 500 - YouTube
Photos : Embraer Legacy 500 - Flying Magazine
Flying the New Embraer Legacy 500 Business Jet - YouTube
FLIGHT TEST: Legacy 450 wired for success - Flight Global

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