オイバロス

オイバロス（古希: Οἴβαλος, Oibalos）は、ギリシア神話に登場するスパルタの王です。彼の系譜については複数の伝承が存在しており、混乱が見られますが、テュンダレオスの父であるという点においては多くの文献で一致しています。

オイバロスの系譜

オイバロスの出自については、主に以下の三つの説があります。

1. アポロドーロスによる説:
アポロドーロスによれば、オイバロスはアミュクラース王の子キュノルタスの子、ペリエーレースの息子とされています。彼は、水のニュムペーであるバテイアとの間に、テュンダレオース、ヒッポコオーン、イーカリオスという三人の息子をもうけました。

2. パウサニアースなどによる説:
パウサニアースなどの記述によると、オイバロスはアミュクラース王の息子であり、アルガロス、キュノルタス、ヒュアキントスと兄弟関係にあります。彼は、アイオロスの子ペリエーレースと死別したペルセウスの娘ゴルゴポネーと再婚し、テュンダレオースをもうけました。また、アレーネーとペイレーネーという二人の娘がいたともされています。

3. クレータのディクテュスによる説:
クレータのディクテュスは、オイバロスをアミュクラース王の子であるアルガロスの子としています。

これらの説の違いから、オイバロスの系譜は複雑に入り組んでおり、文献によって異なる解釈が存在することがわかります。

その他の伝承

ヒュギーヌスの記述:
ヒュギーヌスによると、ヒュアキントスはオイバロスの息子であったとされています。これは、パウサニアースの記述とは異なり、兄弟とする説と矛盾します。

これらの伝承から、オイバロスの系譜には多くのバリエーションが存在し、混乱が見られることがわかります。

オイバロスを祀る英雄廟

スパルタには、オイバロスを祀った英雄廟が存在していました。これは、彼がスパルタにおいて重要な人物であったことを示唆しています。神話における彼の具体的な業績はあまり語られていませんが、その系譜を通じてスパルタ王家の重要な祖先として認識されていたと考えられます。

まとめ

オイバロスは、ギリシア神話におけるスパルタ王であり、その系譜は複雑で複数の説が存在します。テュンダレオスの父である点は共通していますが、出自や兄弟関係には異説が多く、神話研究者にとっても解釈が難しい人物です。彼の英雄廟が存在したことから、スパルタにおいて重要な存在であったことが伺えます。オイバロスに関する記述は、ギリシア神話における系譜の複雑さと多様性を示す好例と言えるでしょう。

参考資料

アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
『ディクテュスとダーレスのトロイア戦争物語 トロイア叢書1』岡三郎訳、国文社（2001年）
パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎（1991年）
ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照夫訳、講談社学術文庫（2005年）
『ヘシオドス 全作品』中務哲郎訳、京都大学学術出版会（2013年）
* 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』岩波書店（1960年）

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